遠望 山村暮鳥
[やぶちゃん注:ここに底本では「ぜいたくの………」という標題の詩篇が入っている。ところがこれは「梢の巣にて」の「朝餉の食卓」の彌生書房版全詩集版の最終行を刊本詩集「梢の巣にて」の「さて、どうしたらよからふ」に取り換えただけの相同詩篇である。題名も結局、冒頭の詩句を引いただけであってここに再掲する価値を認めない。彌生書房版全詩集版もこの詩をカットしている。]
遠望
あれ、あれ
お家(うち)がみえる
障子が穴だらけだ
妻よ
子ども達よ
まあ、掌の上にのせて御覽
あんな家だが
それこそおもちやでも
みるやうにみえるよ
[やぶちゃん注:太字「おもちや」は原典では傍点「ヽ」。]