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2017/04/03

月(十篇)   山村暮鳥

 

 

 

ほつかりと

月がでた

丘の上をのつそりのつそり

だれだらう、あるいてゐるぞ

 

 

 

 おなじく

 

脚(あし)もとも

あたまのうへも

遠い

遠い

月の夜ふけな

 

 

 

 おなじく

 

一ところ明るいのは

ぼたんであらう

さうだ

ぼたんだ

星の月夜の

夜ふけだつたな

 

 

 

 おなじく

 

靄深いから

とほいような

ちかいような

月明りだ

なんの木の花だらう

 

[やぶちゃん注:二ヶ所の「ような」はママ。]

 

 

 

 おなじく

 

竹林の

ふかい夜霧だ

遠い野茨のにほひもする

どこかに

あるからだらう

月がよ

 

 

 

 おなじく

 

月の光にほけたのか

蟬が一つ

まあ、まあ

この松の梢は

花盛りのようだ

 

[やぶちゃん注:「ようだ」はママ。]

 

 

 

 おなじく

 

こしまき一つで

だきかかえられて

ごろんと

大(でつ)かい西瓜はうれしかろ

その手もとが

ことさらに

月で明るいよう

 

[やぶちゃん注:「だきかかえられて」はママ。彌生書房版全詩集版は最終行を「月で明るいやう」と〈訂〉している。私は微妙に留保する。]

 

 

 

 おなじく

 

月の夜をしよんぼりと

影のはうが

どうみても

ほんものである

 

 

 

 おなじく

 

漁師三人

三體佛

海にむかつてたつてゐる

なにか

はなしてゐるようだが

あんまりほのかな月なので

ききとれない

 

[やぶちゃん注:「ようだが」はママ。]

 

 

 

 おなじく

 

くれがたの庭掃除

それがすむのをまつてゐたのか

すぐうしろに

月は音もなく

のつそりとでてゐた

 

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