蜀黍畑がある 山村暮鳥
蜀黍畑がある
蜀黍畑がある
ここにもある
かしこにもある
丘の上にある
谿間にある
海岸にある
あたらしい開墾地にある
どこにでもある
蜀黍畑がある
もう穗になつたもろこしは頻りに耳を澄してゐる
何をきいたか
草木をわたる秋風と
渡鳥の翼の音と
くだける波と
がた馬車のラツパと
それに私の溜息
……其他
蜀黍畑がある
そしてもろこしはみんな穗首を低く垂れてゐる
その穗首からは
黃金色の大粒な日光のしづく
ぽたりぽたりと
地に滴つてゐる
ぽたりぽたりと………
[やぶちゃん注:二ヶ所の太字「もろこし」は原典では傍点「ヽ」。彌生書房版全詩集版では最終行のリーダは存在しない。]

