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2017/04/04

或る時(五篇)   山村暮鳥

 

   或る時

 

一輪の朝顏よ

ここに

生きた瞬間がある

生くることのたふとさがある

 

  *

 

さいてゐる

花をみよ

かうしてはゐられぬと思へ

 

  *

 

花をみること

それもまた

一つの仕事である

 

それの大きな仕事であることが

         解つたら

花をみて

その一生とするもよからう

 

  *

 

花はおそろしい

ほんとうにおそろしい

なんといふ眞劍さであらう

だが、またそれは

あまりの自(おのづか)らさである

 

[やぶちゃん注:彌生書房版全詩集版では標題は「おなじく」で、いわば、前の「朝顏」の続き(或いはソリッドな組詩篇)として存在している。]

 

 

 

   おなじく

 

一りんの

朝顏に

かすかな呼吸(いき)のやうな風……

しみじみと

靜に生きようとおもふ

 

 

 

   おなじく

 

朝でもいい

まひるでもいい

ばらばら

通り雨である

 

竹林は隣屋敷だけれど

まづしい心の

     純(きよら)かさよ

 

[やぶちゃん注:彌生書房版全詩集版では標題が「ある時」となっていて、前の詩篇との連続性が絶たれたものとして存在しているまた、彌生書房版全詩集版では「竹林」に「ちくりん」のルビがある。

 

 

 

   おなじく

 

ぱら ぱら

ぱら ぱら

わたしのかほへも

それが三ツ粒

通り雨だ

竹籔の雀が

大騷ぎをやつてゐる

 

 

 

   おなじく

 

あたまのうへは

とつても澄んだ蒼空である

まあ、御覽

そのあをぞらが

蜻蛉を

一ぴきながしてゐる

 

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