ある時 山村暮鳥
ある時
家のまはりを
ぐるぐると
めぐつても
めぐつても
いい月である
單獨(ひとり)ではない
影も
ステツキなんかもつたりして
おなじく
ああ、もつたいなし
もつたいなし
この掌(て)はどちらにあはせたものか
いま日がはいる
うしろには
月がでてゐる
おなじく
芭蕉よ
あんまり幽かな
月の夜だから
松といふ松は
ほんとに花のようであつた
ひとりもののあんたは
それを旅で
わたしは
それを妻と子とみた
[やぶちゃん注:「ようで」はママ。]
おなじく
大きな沼だ
そのまんなかに
舟が一つ
魚を釣つてゐるのか
それとも月をながめてゐるのか
おなじく
まんまろく
まんまろく
どうやら西瓜ほどの大きさである
だが子どもは呍(い)つた
(お月さんは
お美味(いし)さうでもないのね)
[やぶちゃん注:彌生書房版全詩集版ではカットされている。詩集「雲」の以下と同じとみたのであろうが、微妙に違う。
*
おなじく
まんまろく
まんまろく
どうやら西瓜ほどの大きさである
だが子どもは呍(い)つた
お月さんは
美味(うま)さうでもねえなあ
*
私は無論、カットを支持しない。]

