山村暮鳥詩集「月夜の牡丹」始動 / 序詩 / 李の花
詩集「月夜の牡丹」
[やぶちゃん注:以下、山村暮鳥の詩集「月夜の牡丹」を電子化する。底本は大正一五(一九二六)紅玉堂書店刊のそれを国立国会図書館デジタルコレクションの画像で視認する。
但し、時間を節約するために菊池眞一氏の「J-TEXT」のこちらのテクストを加工データ(但し、漢字新字体。底本は私が活字本として所持する彌生書房版全詩集の第六版)として使用させて戴いた。ここに謝意を表する。
なお、本詩集でも詩集「雲」と同様に「おなじく」とする詩篇については、ソリッドな群として認識し、纏めて公開することとした。]
詩 集
月夜の牡丹
山村暮鳥
[やぶちゃん注:扉。原典は右から左へ記載。]
装幀 小川芋錢氏
[やぶちゃん注:先の標題扉の次の次(左頁)。中央やや下。以下、目次があるが、略す。但し、謂い添えておくと、ここで全体は大きな部分パート(「序詩」(一篇)と「卷末の詩」(一篇)を含むと全八パート)に仕分けられてあることが判る。まず、
「序詩」
で、次に
第一番目の総標題「李の花」
があって、「李の花」から「或る時」詩群で終わる全十六篇。次に、
第二番目の総標題「月夜の牡丹」
があって、「蟻」から「或る時」の「おなじく」で終わる全二十六篇。次に、
第三番目の総標題「或る時」
があって、「ある時」(表記は「目次」のママ)から「或る時」の「おなじく」(「おなじく」二篇)で終わる全二十八篇。次に、
第四番目の総標題「月の匂ひ」
があって、「ある時」から「晝」で終わる全二十八篇。次が、
第五番目の総標題「名刺」
があって、「名刺」から「ある時」の「おなじく」(「おなじく」三篇)で終わる全二十九篇。次が最終の、
第六番目の総標題「日向の林檎」
で「ある時」から「おなじく」で終わる全二十六篇である。この後に、
「卷末の詩」
が配された後、編者である花岡謙二の「詩集の後に」が載るという構成となっている。これはしかし、恐らくは花岡の意志がかなり反映された編集なのではないかと推測され、以前の詩集でも花岡の編集には疑義が多かったことから、今回も彌生書房版全詩集版との校合を欠かさないこととした。例えば、以上の部分パート総標題も彌生書房版全詩集版では全く反映されていないことから、山村暮鳥自身の区分けではないとも考えられるが、なるべく詩集の場合は原型をオリジナルに電子化することをこれまでの本「山村暮鳥全詩」のコンセプトとした以上、私は総標題の柱を入れおくこととした。]
序詩
とろとろと
とろけるやうに
ねほけよ
ぽつかりと
うまれでたやうに
めさめよ
李の花
李(すもゝ)の花(はな)
ぽつぽつと
また
李(すもゝ)の花(はな)が
さきだしました
それだのに
なんとしたこと
どうしてかうもさみしいものか
春(はる)だといふのに
自分で自分を
それだから
あやしてでもゐるほかないの
おう、李(すもゝ)の花(はな)よ
[やぶちゃん注:彌生書房版全詩集版は以上の本文ルビを一切、附していない。あるのは標題の「李(すもも)」一箇所だけである。確かにこれらのルビは五月蠅いと言えば、五月蠅いとは言える。かくもテツテ的に再現していないということは確信犯で、或いは残存原稿があって、そこには標題の「すもも」しかルビが振られていなかった可能性も考えねばなるまい。]

