譚海 卷之二 相州大山瀑布の事
相州大山瀑布の事
○相模國酒匂(さかは)の川上を、半里斗りのぼりて大山を望(のぞむ)時は、遙に嶮岨より落(おつ)る瀑布あり。木(こ)の間に隱れてたしかに見わからね共(ども)、甚(はなはだ)大(おほき)なる瀧なり、那智の瀧に亞(つ)ぐほどのもの也。子安(こやす)より登る路に有(ある)大瀧とは別のもの也、蝮蝎(うはばみ)おほき所にして至りがたし、只(ただ)冬月春初の際行(ゆき)てみる也。さかはより二里餘有(あり)と云(いひ)、大山のうしろにつきたる瀧也。
[やぶちゃん注:「相州大山瀑布」現在の大山阿夫利(あふり)神社の背後にある二重滝のことであろう。落差は十六メートル。「那智の瀧」は落差百三十三メートルにも達するものであり、ここのそれに次ぐという謂いはトンデモない誇大広告である。津村、神社から金でも貰ったか?
「子安」旧子安村。現在の大山阿夫利神社の参拝道の手前に当たる伊勢原市子易。
「子安より登る路に有大瀧」参道を登る最初に現われる「愛宕滝(あたごたき)」のことか。現行のそれは五メートルほどしかなく、「大瀧」では毛頭、ない。]