陸稻畠を……… 山村暮鳥
陸稻畠を………
陸稻(おかぼ)畠をはしる電線
電線はほそくながながと
はてもなく
その下のひろびろとした山腹の開墾地
陸稻は金色にうれて重重しい穗首をたれた
秋の入日のこのしづかさ
二すぢ三すぢほそぼそと走り
ほそぼそと刹那刹那に
電線は世界のはての大戰亂を感じてゐるのか
その電線の上にとまつた
ひがん蜻蛉の列のしづかさ
[やぶちゃん注:標題下のリーダは彌生書房版全詩集版では六点。
「世界のはての大戰亂」詩集末尾の百田宗治の「編纂後記」によれば、ここまでの本文五篇は大正六(一九一七)年作としているから、一九一四(大正三)年に勃発し、一九一八年に終わった世界大第一次世界大戦のことと考えてよいであろう。
「ひがん蜻蛉」トンボ目トンボ科アカネ亜科アカネ属アキアカネ
Sympetrum
frequens の別名。秋の彼岸に合わせるかのように山から下りてくる本種を祖霊の姿に見立てた呼称であろう。]

