野良道(四篇) 山村暮鳥
野良道
こちらむけ
娘達
野良道はいいなあ
花かんざしもいいなあ
麥の穗がでそろつた
ひよいと
ふりむかれたら
まぶしいだらう
大(でつ)かい蕗つ葉をかぶつて
なんともいへずいいなあ
おなじく
野良道で
農婦と農婦とゆきあつて
たちばなししてゐる
どつちもまけずに凸凹な顏をし
でつかい荷物を
ひとりのは南京袋
もひとりののはあかんぼ
そのうへ
天氣がすばらしくいいので
二人ともこのうへもなく幸福そうだ
げらげらわらつたりしてゐる
[やぶちゃん注:「幸福そうだ」の「そうだ」はママ。]
おなじく
そこらに
みそさざいのような
口笛をふくものが
かくれてゐるよ
なあんだ
あんな遠くの桑畑に
なんだか、ちらり
見えたりかくれたりしてゐるんだ
[やぶちゃん注:「ような」はママ。
「みそさざい」スズメ目ミソサザイ科ミソサザイ属ミソサザイ Troglodytes troglodytes。漢字表記は「鷦鷯」。ウィキの「ミソサザイ」によれば、『日本では留鳥として、大隅諸島以北に周年生息している。亜高山帯〜高山帯で繁殖するとされているが、亜高山帯には属さない宮崎県の御池野鳥の森では繁殖期にも観察されており、繁殖していると思われる』。『繁殖期の一部の個体は、秋〜春先にかけては低山帯や平地に降りて越冬する(漂鳥)』。全長は約十一センチメートル、翼開長は約十六センチメートルで、体重は七~十三グラムで小さく、和名の「サザイ」も『古くは「小さい鳥」を指す「さざき」が転じた』ものともされる。また、『溝(谷側)の些細の鳥が訛ってミソサザイと呼ばれるようになったとする説がある』。『全身は茶褐色で、体の上面と翼に黒褐色の横斑が、体の下面には黒色と白色の波状横斑がある。雌雄同色である』。『体つきは丸みを帯びており、尾は短い。よく短い尾羽を上に立てた姿勢をとる』。『日本の野鳥の中でも、キクイタダキ』( スズメ目キクイタダキ科キクイタダキ属キクイタダキ(菊戴・鶎)Regulus
regulus)『と共に最小種のひとつ』である。『常に短い尾羽を立てて、上下左右に小刻みに震わせている。属名、種小名troglodytesは「岩の割れ目に住むもの」を意味する』。『茂った薄暗い森林の中に生息し、特に渓流の近辺に多』く見られ、『単独か番いで生活し、群れを形成することはない。繁殖期以外は単独で生活する』。早春の二月頃から『囀り始める習性があり、平地や里山などでも』二『月頃にその美しい囀りを耳にすることができる。小さな体の割には声が大きく、高音の大変に良く響く声で「チリリリリ」とさえずる』。また、『地鳴きで「チャッチャッ」とも鳴く』。『同じような地鳴きをするものにウグイス』(スズメ目ウグイス科ウグイス属ウグイス Horornis diphone)『がいるが、ウグイスの地鳴きと比べて明らかに金属的な鋭い声で「ジジッ」と聞こえる』。『ミソサザイの地鳴きを聞いたことがある人なら、聞き間違えることはないほどの相違点がある。秋〜早春、場所によっては両種が同じ環境で生活しているため、初めて聞く人にとって、両種の特定には注意が必要である』。『食性は動物食で、昆虫、クモ類を食べる』。繁殖期は五~八月で、四~六個の卵を産む。抱卵日数は十四~十五日、十六~十七日で雛は巣立つ。一夫多妻制で『オスは営巣のみを行い、抱卵、育雛はメスが行う』。『ミソサザイは、森の中のがけ地や大木の根元などにコケ類や獣毛等を使って壷型の巣を作るが』、『他の鳥と異なり、オスは自分の縄張りの中の』二『個以上の巣を作り、移動しながらさえずってメスを誘う』。但し、『オスが作るのは巣の外側のみで実際の繁殖に使用されるものは、作られた巣の内の』一『個のみであり、巣の内側はオスとつがいになったメスが完成させる』。『また、巣自体にも特徴があり、通常の壷巣は出入口が』一『つのみであるが、ミソサザイの巣は、入口と出口の双方がそれぞれ反対側に設計されている。抱卵・育雛中の親鳥が外敵から襲われると、中にいる親鳥は入り口とは反対側の出口から脱出するといわれている』。『日本では古くから知られている鳥で、古事記・日本書紀にも登場する』。『なお、古くは「ササキ」であったが時代が下り「サザキ」または「ササギ」「ミソササギ」等と言った。冬の季語とされている』。『江戸時代の俳人小林一茶が「みそさざい ちっというても 日の暮るる」の句を詠んでいる』。『西欧各国の民間伝承においてはしばしば「鳥の王」とされ』、『各国語における呼称も君主や王の意を含んだ単語が用いられる。グリム童話の『みそさざいと熊』で「鳥の王さま」と呼ばれていた』。『また、ヨーロッパコマドリ』(スズメ目ヒタキ科(或いはツグミ科)ヨーロッパコマドリ属ヨーロッパコマドリ Erithacus rubecula:本邦には本来は棲息しない)『と対になって現れることも多い。かつては、ヨーロッパコマドリがオス、ミソサザイがメスだと考えられており、「神の雄鳥」「神の雌鳥」として伝承中では夫婦とされていた。また、イギリスではヨーロッパコマドリが新年の魂を、ミソサザイが旧年の魂を宿しているとして、クリスマスや』翌十二月二十六日の聖ステファノ(St. Stephen's Day:キリスト教における聖名祝日の一つで、最初の殉教者聖ステファノを記念するもの)の日に『「ミソサザイ狩り」が行われていた』。また伝承としては、『森の王に立候補したミソサザイが、森の王者イノシシの耳の中に飛び込んで、見事にイノシシを倒したものの、だれも小さなミソサザイを森の王とは認めなかったという寓話が有名である』。『また、ミソサザイはアイヌの伝承の中にも登場する。人間を食い殺すクマを退治するために、ツルやワシも尻込みする中でミソサザイが先陣を切ってクマの耳に飛び込んで攻撃をし、その姿に励まされた他の鳥たちも後に続く。最終的にはサマイクル神も参戦して荒クマを倒すという内容のもので、この伝承の中では小さいけれども立派な働きをしたと、サマイクルによってミソサザイが讃えられている』とある。]
おなじく
ぽつかりと童子は
ほんとに花でもさいたやうだ
ねむてえだづら
雲雀(ひばり)が四方八方で
十六十七
十六十七
といつてさえづつてゐる
野良道である
なにゆつてるだあ
としよりもにつこりとして
たんぽぽなんか
こつそりとみてゐる
[やぶちゃん注:「さえづつて」はママ。]

