時計 山村暮鳥
時計
ちろちろと
ランプはうすぐらく
そしてはかないおもひにもえてゐる
ちろちろと
さびしいランプだ
なんといふしづかなばんだらう
ゆきにでもなつたかしら
なんといふしづつかさだらう
ちいツくたあツく
ちいツくたあツく
ねぢのゆるんだはしらどけいのセコンドをきいてゐると
とろとろとねむくなる
とろとろと
いまにもとろけさうなめではあるが
とけいのおもての
アラビヤすうじと
二ほんのはりとはまだみえる
だが、はりはいつうごくのだらう
ひつそりとただひとつところをさしてゐるにすぎない
ランプはうすぐらく
ちろちろと
そしてはかないおもひにもえてゐる
ちようどわたしのやうだ
ちいツく たあツく
ちいツく たあツく
かうしてきそくただしく
ひとときのやすみもなく
ねんがらねんぢう
それこそよるひるうごきどほしでは
いくらきかいだつて
どんなにかつかれるだらう
それよりも
どんなにあきあきするだらう
そういへばほんとにけだるいセコンドのおとだ
ああ、とけいだつてかわいさうだ
ちよつとてをのばして
とめて
ゆつくりやすませてやらうか
[やぶちゃん注:「ちようどわたしのやうだ」、「かわいさうだ」はママ。
「ねんがらねんぢう」彌生書房版全詩集版では「ねんがねんぢう」。
「それこそよるひるうごきどほしでは」彌生書房版全詩集版では次の「いくらきかいだつて」と一行になっている。
彌生書房版全詩集版。時計音の「ツ」は総てが明らかに拗音「ッ」表記となっている。
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時計
ちろちろと
ランプはうすぐらく
そしてはかないおもひにもえてゐる
ちろちろと
さびしいランプだ
なんといふしづかなばんだらう
ゆきにでもなつたかしら
なんといふしづつかさだらう
ちいッくたあッく
ちいッくたあッく
ねぢのゆるんだはしらどけいのセコンドをきいてゐると
とろとろとねむくなる
とろとろと
いまにもとろけさうなめではあるが
とけいのおもての
アラビヤすうじと
二ほんのはりとはまだみえる
だが、はりはいつうごくのだらう
ひつそりとただひとつところをさしてゐるにすぎない
ランプはうすぐらく
ちろちろと
そしてはかないおもひにもえてゐる
ちやうどわたしのやうだ
ちいッく たあッく
ちいッく たあッく
かうしてきそくただしく
ひとときのやすみもなく
ねんがねんぢう
それこそよるひるうごきどほしではいくらきかいだつて
どんなにかつかれるだらう
それよりも
どんなにあきあきするだらう
そういへばほんとにけだるいセコンドのおとだ
ああ、とけいだつてかはいさうだ
ちよつとてをのばして
とめて
ゆつくりやすませてやらうか
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