身自らにおくるの詩 山村暮鳥
身自らにおくるの詩
くるしみぬいたとうぬぼれてはならない
くるしみきれぬと絶望してはならない
絶えず苦しめ
そしてほほゑめ
くるしみは波のやうなものではないのか
磯岩をかむその浪浪
うみ草を洗ふ浪浪
うかぶ船
むれとぶかもめ
浪浪のうねりをみないか
生きたその美しさをみないか
くるしみの上にあれ
[やぶちゃん注:標題「身自らにおくるの詩」の「身自ら」はママで「自身」の錯字ではないようだ(彌生書房版全詩集版も同)。強調形として「みみづから」と訓じておく。この響きは詩篇内容とも相性がよいように私には思われるからでもある。これを以って底本の「2」パート(未発表・未完作品)は終わっている。]