改版「風は草木にささやいた」異同検証 「Ⅶ」パート
Ⅶ
[やぶちゃん注:「自分はさみしく考へてゐる」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「蝗」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「愛の力」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「人間の神」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「秋のよろこびの詩」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「草の葉つぱの詩」は異同なし。]
或る風景
みろ
大暴風の蹶ちらした世界を
此のさつぱりした慘酷(むごた)らしさを
骸骨のやうになつた木のてつぺんにとまつて
きりきり百舌鳥(もず)がさけんでゐる
けろりとした小春日和
けろりとはれた此の蒼空よ
此のひろびろとした蒼空をあふいで耻ぢろ
大暴風が汝等のあたまの上を過ぐる時
汝等は何をしてゐた
その大暴風が汝等に呼びさまさうとしたのは何か
汝等はしらない
汝等の中にふかく睡つてゐるものを
そして汝等はおそれおののき兩手で耳をおさへてゐた
なんといふみぐるしさだ
人間であることをわすれてあつたか
人間であるからに恥ぢよと
けろりとはれ
あたらしく痛痛しいほどさつぱりとした蒼空
その下で汝等はもうあらしも何も打ちわすれて
ごろごろと地上に落ちて轉つてゐる果實(きのみ)
泥だらけの靑い果實をひろつてゐる
[やぶちゃん注:太字「あらし」は原典では傍点「ヽ」。初版「或る風景」の注で例外的に述べているが、ご覧の通り、初版の最終行「おお此の蒼空!」がカットされている。私はアオリのコーダを欠いたこの改版版をよしとしない気持ちは今も変わらない。]
[やぶちゃん注:「雪ふり蟲」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「冬近く」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「蟋蟀」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「或る日の詩」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「或る日の詩」(前篇とは同名異篇)は異同なし。]
[やぶちゃん注:「記憶の樹木」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「山」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「道」は異同なし。]
初冬の詩
そろそろ都會がうつくしくなる
人間の目が險しくなる
初冬
お前の手は熱く
やがで火のやうになるのだ
[やぶちゃん注:「初冬の詩」は、初版二行目の冒頭の「そして」がカットされ、四行目の冒頭の「いまに」がカットされ、最終行冒頭の「まるで」が「やがて」に変更されいる。この短い一篇の詩篇中でこれだけ改稿するというのは、山村暮鳥の、かなりの覚悟を持った確信犯と見なければならぬ。これについては私も、改版の方がモンタージュがくっきりとしてよくなっていると感ずる。]
[やぶちゃん注:「路上所見」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「友におくる」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「惡い風」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「雪の詩」は十二行目の「子ども等はうれしさに獅子のやうだ」の「獅子」が「けもの」となり、傍点「ヽ」が附されてある。]
« 「想山著聞奇集 卷の參」 「七足の蛸、死人を掘取事」 | トップページ | 佐藤春夫 未定稿『病める薔薇 或は「田園の憂鬱」』(天佑社初版版)(その8) »