佐藤春夫 未定稿『病める薔薇 或は「田園の憂鬱」』(天佑社初版版)(その10)
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雨は、一日小降りになつたかと思へば、その次の日には前よりももう一層ひどく降る。さて、その次の日にはまた小降りになる。併し、その次の次の日にはまた降りしきる‥‥けれども、間歇的な雨は何日まででも降る……。幾日でも、幾日でも降る。彼の心身を腐らせやうとして降る‥‥世界そのものを腐らせやうとして降る……
[やぶちゃん注:底本はこれで終わっているが、定本ではここ以下に続いて(行空けは無し)二字下げ分かち書きの、
何もかも腐れ……、
腐るなら腐れ……、
勝手に腐れ……、
腐れ腐れ……、
お前の頭が……、
まつさきに腐れ……、
…………………………、
…………………………、
…………………………、
…………………………、
…………………………、
…………………………、
という韻文めいた特異な十二行が続いた上、やはり行空け無しで三文からなる独立段落の散文部分が、その後附されて、終わっている。]
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