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2017/05/23

ジョナサン・スイフト原作 原民喜譯 「ガリヴァー旅行記」(やぶちゃん自筆原稿復元版) 飛ぶ島(ラピュタ)(2) 「變てこな人たち」(Ⅱ)

 

二章

 

 私が〔鎖の〕その島へ下りると、すぐ大勢の人人にとりかこま〔か〕れました。見ると、一番前に立つてゐるのが〔、〕どうも上流の人人のやうでした。彼等は私を眺めて、ひどく驚いてゐる樣子でしたが、私の方も、すつかり驚いてしまつたのです。なにしろ、その恰好も、服裝も、容貌(かほ)も、こんな奇妙な人間〔を私は私は〕まだ見たことがなかつたからです。

[やぶちゃん注:章見出しは現行版には存在せず、前の段落との間も空けられていない。

 彼等の頭はみんな、左か右か、どちらかへ傾いてゐます。眼は片方は内側へ〔向き〕、もう一方は眞上を向いてゐるのです。上衣の模樣は太陽、月、星などの模樣に、提琴、橫笛、竪琴、喇叭、六弦琴、そのほか、いろんな珍しい樂器の模樣を交ぜてゐます。ところ私はあ〕ちこちに〔それから、〕召使の服裝をした男〔たちは、〕短い棒の先に〔、〕膀胱をふくらませたものをつけて〔、〕持ちあるいてゐます。そんな男たちも〔、〕だいぶゐました。〔これはあとで知つたのですが〕この膀胱の中には〔、〕乾ゐた豆と礫〔、〕が少しばかり入つてゐます。

[やぶちゃん注:現行版では楽器の箇所にそれぞれに、『提琴(フィドル)。橫笛(フリュート)、竪琴(ハープ)、喇叭(トランペット)、六弦琴(ギター)』(拗音は推定)と振られてある

「提琴」(ていきん)はヴァイオリンのこと。「ヴァイオリン」はイタリア語派生で、現行版のルビ「フィドル」(fiddle)でこちらは英語。

「膀胱をふくらませたもの」多くの他の訳者でも和訳はそのまま「膀胱」であるが(確かに原典も“a blown bladder”としかないのだが)、豚の膀胱である。

「礫」現行版は「小石」。ここもこれで「こいし」と読んでおく。]

 ところで、彼等は〔、〕この膀胱で、傍に立つてゐる男の口や耳をたたきます。(私は〔まだ〕その時はこれはなんのことかさつぱりわからなかつたのですが、)〔これは〕この國の人間は〔、〕いつも何か深い考へごとに熱中してゐるので、〔何か〕外からつついてやらねば、物も言へないし、他人の話を聞くこともできない〔から〕です。そこで〔、〕お金持は、たたき役を一人、召使として傭つておき、外へ出るときには必ずつれて行きます。〔ですから〕召使の仕事といふのは〔、〕この膀胱で主人やお客の耳や口を靜かに〔、〕かはるがはる〔、〕たたくことなのです。〔また、〕このたたき役は主人につきが外出につきそつて步き、時時、その眼を輕くたたいてやります。といふのは〔、〕主人は考へごとに夢中になつてゐますから、どうかすると〔うつかりして〕崖から落つこちたり、溝に轉げ〔はま〕つたりしさう〔するか〕もしれないからです。

[やぶちゃん注:太字は現行では傍点「ヽ」。現行版では総てが「叩き」「叩く」などと漢字になっていて、傍点は存在しない。]

 ところで、私はこの國の人々に案内されて、階段を上り、島の上の宮〔殿〕へ〔連れて〕行かれました。〔たのですが、〕その時、私は〔、〕みんなが何をしてゐるのか、さつぱりわかりませんでした。階段を上つて行く途中でも〔、〕彼等はぽかんと〔考へごとに熱中し、〕〔ぼんやり〕してしまふのです。その度に〔、〕たたき役が〔、〕彼等をつついて〔、〕氣をはつきりさせ〔てやり〕ました。

 私たちは宮殿に入つて、謁見〔國王〕の間に通されました。見ると國王陛下の左右には〔、〕高位の人たちがずらりと並んでゐます。王の前にはテーブルが一つあつて、その上には〔、〕地球儀や〔、〕その他〔、〕種々さ樣々の数學の器械が一杯並べてあります。なにしろ〔、〕今〔、〕〔私たち〕大勢の人がどかどか〔と〕入つ〔〕たので〔、〕騷がしかつたはずですが、陛下は〔、〕一向〔、〕私たち〔が來たこと〕に氣がつかれません。陛下は〔今、〕ある問題を一心に考へてをられる最中なのでした〔す〕。私たちは〔、〕陛下がその問題をお解きになるまで〔、〕〔一時間ぐらゐ〕待つてゐなければなりません。〔ました。〕陛下の兩側には、たたき棒を持つた侍童が〔、〕一人づつついてゐます。陛下の考へごとが終ると、一人は〔、〕口もとを〔、〕一人は〔、〕右の耳を、それぞれ〔、〕輕く叩きました。

[やぶちゃん注:現行版では「陛下の兩側には、たたき棒を持つた侍童が、一人ずつついています。陛下の考えごとが終ると、一人は口許を、一人は右の耳を、それぞれ軽く叩きました。」と整序された部分が、改行されて独立段落を形成している。]

 すると〔、〕陛下は〔、〕まるで急に目〔が〕覺めた人のやうに、ハツとなつて、私たちの方を振向かれました。それで〔、〕やつと〔、〕私の來たことを氣づかれたやうです。王が何か一言二言いはれたかと思ふと、たたき棒を持つた若者が〔、〕私の傍へやつて來て、靜かに私の耳をたたきはじめました。私は手眞似で、そんなものはいらないといふことを傳へてやりました。

 陛下は頻りに何か私に質問されてゐるらしいのでした。で、私の方もいろいんな國〔の言葉〕で答へてみました。けれども向の言ふこともわからなければ、こちらの言ふことも〔まるで〕通じません。

 それから〔、〕私は陛下の命令で〔、〕宮殿の一室に案内され、召使が二人私につきそひました。やがて〔、〕食事が運ばれてきました。〔すると〕〔そして〔、〕〕四人の貴族たちが〔、〕私と一緒に食事〔テー〕ブルに着きました。食事は三皿二度に運ばれました。正三角形に切つた羊の肉を、菱型食事中、私はいろんな品物を指して〔、〕何といふ名〔前〕なのか聞いてみました。すると貴族たちは、たたき役の助けをかりて、喜んで答へてくれました。私は間もなく、パンでも飮物でも、欲しいものは何でも云へるやうになりました。

 食事がすむと〔、〕貴族たちは歸りました。そして今度は、陛下の命令で來たといふ男が、たたき役をつれて入つて來ました。〔彼は〕ペン、インキ、紙、それに〔、〕三四册の書物を持つて來て、言葉を教へに來たのだと手眞似で云ひます。私たちは〔、〕四時間一緒に勉強しました。私はたくさんの言葉を縱に書き、それを並べて〔に〕譯を書いて行きました。短い文章も少し覺えました。

 それには先づ先生が召使の一人に、「何々を持つて來い」、「あつちを向け」、「お辭儀」、「坐れ」、「立て」といふふうに命令をします。すると私はその文章を書きつけるのでした。それから今度は書物〔本〕を開いて、日や月や星や、その他〔、〕いろんな平面図、立體図の名を教へてくれました。〔先生〕はまた〔、〕樂器の名前と説明を音樂の言葉を〔、〕いろいろ教へてくれました。こんな風にして二三日すると、私は大たい彼等の言〔葉〕がどんなもの〔である〕かわかつてきました〔たので〕す。〔こ〕この島〕は飛行島「ラピュタ」といつて、〔います。〕〔私はそれを〕飛ぶ島、浮島などと譯しておきました。

 

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