北越奇談 巻之二 俗説十有七奇 (パート9 其十 「逆竹」)
其十 「逆竹(さかさたけ)」。新潟の上鳥屋(かみとや)ノ村にあり。是、鸞(らん)上人の旧説にして、今なを竹篁(ちくこう)幽遠(ゆうゑん)たり。昔は逆生(ぎやくせい)の竹もありしと云へり。今は絶てなし、と。七奇にはあらず。
[やぶちゃん注:先に注した総てが親鸞聖人絡みの動植物奇瑞七不思議の一つ。ウィキの「越後七不思議」によれば、『新潟市中央区鳥屋野』附近(ここ(グーグル・マップ・データ))に植生する『国指定の天然記念物』とされている(大正一一(一九二二)年指定。指定名称は「鳥屋野逆(とやのさかさ)ダケの藪」)『枝が下向きに生える』ハチク(単子葉植物綱イネ目イネ科タケ亜科マダケ属クロチク変種ハチク Phyllostachys nigra var. henonis)の変異(奇形)種。『親鸞が竹杖を逆さに土に挿したものに根が生えたと伝える』。『竹の枝垂れは他にほとんど例がなく、極めて珍しい奇形であることから』天然記念物指定となったものである。『竹が枝垂れる原因については、長期間にわたって狭い範囲に密生して生育することによる影響や、豪雪による積雪量の多い期間が長いことによる中空の竹枝の耐久性などの因果関係が議論されてきたが、未だに確定的なものはない』『近隣に所在するゆかりの寺である』浄土真宗西方寺(先のリンクの先の地図の原「西方寺跡」の西南西約三百メートルにある)『には、標本』(引用元に画像有り)『が保存されている』とある。実地に行き、天園記念物の生体のそれを確認されたい方は「ジオテクサービス株式会社」公式サイト内の「■鳥屋野の逆さ竹」が現地の詳細地図や生態の附図など、異様に詳しい。これ、読んでいると、私も気儘な身なら行ってみたく思うほどマニアック!
「竹篁」「篁」は「たかむら」で「竹叢」、竹藪のことであるから、竹が群がって生えている竹林のこと。
「幽遠」奥深い雰囲気を持っていること。ここは親鸞の奇瑞ということを多少は好意的に意識して語ったものであろう。前にも指摘した通り、崑崙は本章の中で親鸞絡みの七不思議の中の「三度栗」と「逆さ竹」と「八房(やつふさ)の梅」を採用しており、特に最後の「八房の梅」は自筆の絵も添えている。弘法大師や日蓮に対する超辛口の口舌に比すと、親鸞に対してはそうした棘は感じさせない。崑崙は或いは私のように、浄土真宗は信仰しないものの、親鸞個人に対しては親しみを感じていたのかも知れぬ。]
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