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2017/09/23

老媼茶話 酉陽雜俎曰(樹怪)

 

      酉陽雜俎曰

 

[やぶちゃん注:「曰」はママ。「に曰(いは)く」であるが、標題とするなら、初めから総てに附すべきであるが、この前の三条にはない。この後にも三条に附されてある。この注は以下、略す。]

 

 洛陽の臨湍(リンセン)寺の僧知通、常に法花經を誦し、座禪行道(ぎやうだう)す。好(このみ)て閑靜の地をもとむ。人跡至らさる處、年をへて、おこたらす。

 或夜、人有(あり)、庵室をめくりて、知通を呼ふ。知通、答(こたへ)て、

「我をよふは何ものそ。入來ていふべし。」

 怪物の長六尺あまりありて、面色、靑く、目を見はり、口、大にして、耳際(みみぎは)まて裂(さけ)たるか、僧の前に立(たち)て合掌す。

 知通かいわく、

「なんし、さふきや。この火につひて、身をあたゝめよ。」

といふ。

 ばけもの、座につゐて火に向ひ、一言を、ましえず。

 妖物、火に醉(ゑひ)て口をひらき、目をふさぎ、爐によりて、ふして、鼾(いびき)をかく。

 知通、則(すなはち)、香匙(ケウシ)を以て灰火(アツハイ)をあけて、口の内埋(うづ)み入(いれ)たり。

 妖物、大にさけひ起て、はしり出(いづ)るに、つまつき、倒れたる聲、あり。

 知通、そのつまつきたる處へ行てみるに、木の皮、壱片を得たり。

 是を取(とり)て、山にのほり、尋ぬるに、大なる桐の木有り。

 其木のもと、くほみて、あらたにそげたる跡あり。木の皮を附(つけ)て見るに、合(あひ)て違(たが)ひなし。

 木のこしに、きず、あり。落入たる事、六、七寸。蓋し、妖物(ばけもの)の口にして灰火(アツハイ)、其うちにあり。久しく奕(エキ)々螢(ケイ)々たり。

 知通、火を以て燒倒(やきたふ)すに、妖物なかりし、となり。

 

[やぶちゃん注:これは既に私の『柴田宵曲 續妖異博物館 「樹怪」』に出、その注で原典も紹介したのでそちらを参照されたい。なお、三坂は主人公「智通」を「知通」に誤まり、寺の名を「臨湍寺」と誤り(「臨湍」(別本では「臨瀨」)は地名であって寺の名は示されていない)、「香匙」の読みを「ケウシ」と誤っている。後者は正しくは、呉音なら「カウジ(コウジ)」、漢音なら「キヤウジ(キョウジ)」でなくてはならないなお、これも岡本綺堂が「中国怪奇小説集」の中で「怪物の口」の題で訳している。「青空文庫」のこちらで読める。

「さふきや」「寒きや」。「寒いか?」。

「つひて」「就て」。寄って。

「ましえず」「申(ま)し得ず」。

「香匙(ケウシ)」仏事に於いて香(こう)を火にくべるために掬う匙(さじ)。

「灰火(アツハイ)」暖房用の炉の中の消え残っている埋もれ火を含んだ灰炭(はいずみ)。

「奕(エキ)々螢(ケイ)々」(エキエキケイケイ)は光り輝くさま。]

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