和漢三才圖會卷第五十三 蟲部 竹蝨(やぶじらみ)
やぶじらみ 竹佛子
天厭子
竹蝨
【俗云 藪蝨】
チヨ スヱツ
本綱生竹及草木上初生如粉點久能動百千成簇形大
如蝨蒼灰色或云濕熱氣化或云蟲卵所化
*
やぶじらみ 竹佛子
天厭子
竹蝨
【俗に「藪蝨」と云ふ。】
チヨ スヱツ
「本綱」、竹及び草木の上に生ず。初生、粉を點ずるかごとく、久しくして能く動き、百千、簇〔(むれ)〕を成す。形ち、大きく、蝨〔(しらみ)〕のごとく、蒼灰色。或いは云ふ、濕熱の氣化、或いは云ふ、蟲の卵の化する所なり。
[やぶちゃん注:極めて小さいこと、爆発的な繁殖力を有することから見て、節足動物門鋏角亜門クモ綱ダニ目ケダニ亜目ハダニ上科
Prostigmata 或いはその下位のハダニ科
Tetranychidae に属する種と思われる(ハダニ上科には他にヒメハダニ科
Tenuipalpidae とケナガハダニ科
Tuckerellidae がある)。ただ、こうした植物摂餌性のハダニ類は多くが摂餌対象植物を特化しており、挿絵が竹の葉に附着したそれを描いており、本文もまず「竹」とするのが気になり、調べて見たところ、ハダニ科ナミハダニ亜科ナミハダニ族 Tetranychini にスゴモリハダニ属 Stigmaeopsisがあり、そこにササ・タケ類を食害する「タケスゴモリハダニ」なる種を見出せた(但し、学術論文を縦覧すると、分類学上、ここに属させて Stigmaeopsis celarius とする記載と、新属としてタケスゴモリハダニ属タケスゴモリハダニ Schizotetranychus celarius とする二様の記載が見出せた)。さらに「日本応用動物昆虫学会」の運営する「むしコラ」の斉藤裕氏の「福建省タケ害虫問題の顛末」を読むと、学名は不明ながら、高級竹材である孟宗竹を枯死させる到る種としてナンキンスゴモリハダニ・イトマキハダニ(これは恐らくは現在、「イトマキヒラタハダニ」に改称されたナミハダニ亜科ヒロハダニ族ヒラハダニ属イトマキヒラタハダニ Aponychus corpuzae)及びタケトリハダニ、さらにハダニ類に近縁のフシダニの名が挙げられてある。ただ、やや気になるのは「蒼灰色」とある体色であるが、ウィキの「ハダニ科」には、『ハダニ類の体色には黄色、黄緑、赤、橙など様々な色のものがある。また、食物の摂取状態や季節によっても色が変わり、見た目が全く異なることがある』とあるから、青みを帯びた灰色もアリか。]
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