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2017/09/20

和漢三才圖會卷第五十三 蟲部 蚋子(ぶと)


Buyu

ぶと  蜹【同】 蟆子

    【俗云布止】

蚋子

 

ナ ツウ

 

本綱蚋子小蚊也又小而黒者爲蟆子微不可見與塵相

浮上下者爲浮塵子皆巣巴蛇之鱗中能透衣入人肌膚

囓成瘡也惟搗楸葉傅之則出

按蟆子夏月在山谷中似蚊而小脚亦短黒色晝多出

 螫人腫痛最烈和名抄以蜹訓太仁者非【太仁者壁蝨也見卵生下】

 

 

ぶと  蜹【同。】 蟆子〔(まくし)〕

    【俗に「布止〔(ぶと)〕」と云ふ。】

蚋子

 

ナ ツウ

 

「本綱」、蚋子は小さき蚊なり。又、小さくして黒き者を「蟆子(まくし)」と爲す。微にして見るべからず。塵と相ひ浮きて上下する者を「浮塵子〔(ふじんし)〕」と爲す。皆、巴蛇〔(はだ)〕の鱗〔(うろこ)の〕中に巣〔(すく)ふ〕。能く衣を透(とほ)して人の肌膚〔(はだへ)〕に入りて囓(か)み、瘡を成すなり。惟だ、楸葉〔(ひさきば)〕を搗(つ)き、之れを傅〔(つ)く〕れば、則ち、出づ。

按ずるに、蟆子(ぶと)、夏月、山谷の中に在り。蚊に似て、小さく、脚、亦、短く、黒色。晝、多く出でて人を螫す。腫れ痛むこと、最も烈(はげ)し。「和名抄」に「蜹」を以つて「太仁〔(だに)〕」と訓ずるは非なり【太仁は「壁蝨〔(へきしつ)〕」なり。卵生下に見ゆ。】

 

[やぶちゃん注:吸血性の双翅(ハエ)目長角(糸角/カ)亜目カ下目ユスリカ上科ブユ科 Simuliidaeの昆虫の総称ウィキの「より引く。『関東ではブヨ、関西ではブトとも呼ばれる』。『成虫は、イエバエの』四分の一ほどの小ささ(約三~五ミリメートル)で『透明な羽を持ち、体は黒っぽく丸まったような形をしているものが多い。天敵はトンボなど。日本では約』六十『種ほどが生息しており、主に見られるアシマダラブユ』(ブユ科ブユ亜科ブユ族アシマダラブユ属Simulium亜属アシマダラブユ Simulium japonicum)『は全国各地に、キアシオオブユ』(オオブユ族 ProsimuliumProsimulium yezoense)『は北海道、本州、九州に分布する』。『春に羽化した成虫は交尾後、水中や水際に卵塊を産み付ける。卵は約』十『日で孵化し、幼虫は渓流の岩の表面や水草に吸着し』、三~四『週間で口から糸を吐きそのまま水中で蛹になり、約』一『週間ほどで羽化する。成虫になると基本的に積雪時を除き一年中活動するが、特に春から夏』(三月~九月)『にかけて活発に活動する。夏場は気温の低い朝夕に発生し、昼間はあまり活動しない。』但し、『曇りや雨など湿気が高く日射や気温が低い時は時間に関係なく発生する。また、黒や紺などの暗い色の衣服や雨合羽には寄ってくるが、黄色やオレンジなどの明るい色の衣服や雨合羽には比較的寄ってこない』。『上記のようにブユの幼虫は渓流で生活しているため、成虫は渓流の近くや山中、そうした自然環境に近いキャンプ場などで多く見られる。また、幼虫は清冽な水質の指標昆虫となるほど水質汚染に弱いため、住宅地などではほとんど見られない』。『カやアブと同じくメスだけが吸血するが、それらと違い』、『吸血の際は皮膚を噛み切』って『吸血するので、多少の痛みを伴い、中心に赤い出血点や流血、水ぶくれが現れる。その際に唾液腺から毒素を注入するため、吸血直後はそれ程かゆみは感じなくても、翌日以降に(アレルギー等、体質に大きく関係するが)患部が通常の』二~三『倍ほどに赤く膨れ上がり激しい痒みや疼痛、発熱の症状が』一~二『週間程現れる(ブユ刺咬症、ブユ刺症)。体質や咬まれた部位により腫れが』一ヶ月以上『ひかないこともままあり、慢性痒疹の状態になってしまうと』、『完治まで数年に及ぶことすらある。多く吸血されるなどした場合はリンパ管炎やリンパ節炎を併発したり』、『呼吸困難などで重篤状態に陥ることもある』(私はワンダーフォーゲル部の引率で丹沢で刺されたことがある。三ヶ月近く痕が消えず、女生徒の中には無数に手足を刺されて長く痛々しい姿であったのを思い出す)。『予防に関しては、一般的なカ用の虫除けスプレー等は効果が薄いので、ブユ専用のものを使うことが有効である(ハッカ油の水溶液でもよい)。また長袖や長ズボン、手甲や脚絆などを身につけ、素肌を露出させないことも重要である。吸血された場合は傷口から毒を抜いてステロイド系の薬(ステロイド外用薬)を塗る。また、掻くと腫れが一向に引かなくなり(結節性痒疹)、治ったあともシミとして残るので、決して傷口を触らないこと』が肝要である、とある。

「微にして見るべからず」あまりに微小であるために視認することが出来ない。

「浮塵子〔(ふじんし)〕」本邦ではこの熟語は普通、カメムシ目ヨコバイ亜目 Homoptera の属するウンカ類(群)に当てる。ウィキの「ウンカによれば、『カメムシ目ヨコバイ亜目の一部のグループで、アブラムシ、キジラミ、カイガラムシ、セミ以外の、成虫の体長が5mm程のものである。そのような範疇の昆虫のいわば典型の一つがウンカであるため、この仲間にはウンカの名を持つ分類群が非常に多い。なお、「ウンカ」という標準和名を持つ生物はいない』とし、『遠く東南アジア方面から気流に乗って毎年飛来する。時に、大発生して米の収穫に大打撃を与えるだけでなく、ウイルスなどの伝播の媒体ともなる。江戸時代に起きた享保の大飢饉や天保の大飢饉の原因とされ、稲作文化圏では忌避される』。『ウンカ類を餌とする小型のトンボ類は益虫とされている』。半翅目同翅亜目頸吻群(Auchenorrhyncha)ハゴロモ上科ウンカ科 Sogatella 属セジロウンカSogatella furcifera・ウンカ科 Nilaparvata 属トビイロウンカ Nilaparvata lugens・ウンカ科 Laodelphax 属ヒメトビウンカ Laodelphax striatellus『などがイネの害虫である。これらはいずれも良く跳びはね、また良く飛ぶ虫である。しかし翅多型をあらわし、定着時には羽根の短いいわゆる短翅型がでる。これは繁殖力が強く、その周辺一帯で大発生を起こすため、水田には丸く穴が空いたように枯れた区画を生じる。これを俗に「坪がれ」と呼ぶ』。『また、アブラムシ同様に排泄物がすす病を引き起こすことが多い』。これら三種のうちで、『ヒメトビウンカは寒さに強いため』、『日本の冬を越すことが可能で、他のイネ科植物にも寄生できる。なおかつ』、『イネ縞葉枯病、イネ黒すじ萎縮病などのウイルス病を媒介するので一番』、『問題となる』、。『対策としては、ネオニコチノイドなどの殺虫剤や、油を使って窒息死させる物理的駆除が行われる。江戸時代には、鯨油を水田に張り』(一アールにつき、二、三滴というごく少量)、『ウンカを叩き落して駆除する手法が筑前地方から広まっていった』とある。あまり知られているとは思われないので附言しておくと、ウンカやヨコバイ類(頸吻群セミ型下目ツノゼミ上科ヨコバイ科Cicadellidae)は、しばしば、人を刺す。無論、彼らは植物吸汁性であって、その習性を、人の皮膚上でたまたま起こすに過ぎず、吸血しないものの、口針を挿入した際に唾液が人体に注入され、これにより体質によっては大変な痒みを生じ、黒い痣となって一年以上も完治しないことがある(最後の部分は(株)今村化学工業白蟻研究所公式サイト内の記載に拠った)。従って、この「蚋子」の項にウンカが入っていても、何ら問題がないのである。

「巴蛇〔(はだ)〕」伝説上の大蛇。「黒蛇(こくだ)」「黒蟒(こくぼう)」とも称する。ウィキの「(はだ)によれば、『『山海経』海内南経によると、大きなゾウを飲み込み』、三『年をかけてそれを消化したという。巴蛇が消化をしおえた後に出て来る骨は「心腹之疾」』『の薬になるとも記されている。また、『山海経』海内経の南方にある朱巻の国という場所の記述には「有黒蛇 青首 食象」とあり、同じよう大蛇が各地に存在すると信じられていた。『山海経』の注には「蛇(ぜんだ)吞鹿、鹿已爛、自絞於樹腹中、骨皆穿鱗甲、間出、此其類也」とあってゾウの話は蛇(大蛇)がシカなどを飲み込むような事を示したものであろうと書いている』『『聞奇録』には、山で煙のような気がたちのぼったのを見た男があれは何かとたずねたら「あれはヘビがゾウを呑んでるのだ」と答えられたという話が載っている』。『ゾウ(象)を食べるというのはウサギ(兔)という漢字との誤りから生じたのではないかとの説もある』。とあって、最後には『『本草綱目』では蚋子(蚊の小さいもの)は巴蛇の鱗の中に巣をつくる、と記している』とここに挙がる一節も出されてある。

「楸葉〔(ひさきば)〕」「楸」(「ひさぎ」とも)はキントラノオ目トウダイグサ科エノキグサ亜科エノキグサ連アカメガシワ属アカメガシワ Mallotus japonicus のこと。その葉は「野梧桐葉(やごどうよう)」として「日本薬局方」に記載の生薬で、漢方サイトによれば、葉を搗き砕いて貼ると、種々の腫物・乳腺炎・痔・湿疹・頭瘡・あせも・かぶれ・痒み止めに効果があるとある。

「則ち、出づ」という表現から見ると、刺した蚋が傷口から侵入して中にそのまま巣食っていると考えたものか。

「太仁〔(だに)〕」節足動物門鋏角亜門クモ綱ダニ目 Acari に属するダニ類。但し、次注参照

「壁蝨〔(へきしつ)〕」なり。卵生下に見ゆ」先行する壁蝨を参照されたい。そこで私は鋏角亜門クモ綱ダニ目マダニ亜目マダニ科 Ixodidaeのマダニ類を考証の射程に入れつつも、この「壁蝨」を、最終的には、吸血性寄生昆虫である、所謂、ナンキンムシ、半翅(カメムシ)目異翅亜目トコジラミ下目トコジラミ科トコジラミ属トコジラミ Cimex lectularius に比定した。]

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