老媼茶話 三才圖繪【人物十二】(大食国の人頭果)
三才圖繪【人物十二】
大食こくは海の西南一千里にあり。山谷のあひたに、うへき、有。枝上(しじやう)に、花、生(しやう)して、人の首のことし。ものいふ事、なし。人、物をとふことあれは、只、笑ふのみなり。しきりにはらへは、則(すなはち)、凋(シホミ)み落(おつ)る、といへり。
[やぶちゃん注:「三才圖繪」「三才圖會」が正しい。明の王圻(おうき)と彼の次男王思義によって編纂された、絵を主体とした全百六巻からなる膨大な類書(百科事典)。一六〇七年に完成し、一六〇九年に出版された。「三才」は「天・地・人」で「万物」の意。世界の様々な事物を天文・地理・人物・時令・宮室・器用・身体・衣服・人事・儀制・珍宝・文史・鳥獣・草木の十四部門に分けて各項図入りで説明している。当該項は「巻二十六」の「人物十二」にある「大食國」。国立国会図書館デジタルコレクションの画像を視認して活字化しておく。
*
大食國在海西南一千里居出谷間有樹枝上花生如人首不解語人借問惟笑而巳頻笑輒凋落大食國之總名有國千餘其屬有麻離拔曰達吉慈尼路骨勿斯離餘未及知
*
本書は挿絵がないのが淋しい。また、この「三才図会」の人頭果は私の幼少の頃からのお気に入りなので、ここは一つ、国立国会図書館デジタルコレクションの挿絵と本文の画像をトリミングして示すこととする。
「一千里」明代の一里は五百五十九・八メートルであるから、五百五十九キロ八百メートル。
「うへき」「植木」。
、有。枝上(しじやう)に、花、生(しやう)して、人の首のことし。ものいふ事、なし。「しきりにはらへは」「頻りに笑へば」。笑い過ぎると。]