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2017/09/01

北越奇談 巻之五 怪談 其九(霊の訪れ その三)

 

    其九(く)

 

Hebi

 

[やぶちゃん注:北斎画。キャプションは「小女の夢 蛇と化して 衆人を驚かす」。「小女」は「こむすめ」と読んでおく。「夢」の「」は「魂」の異体字で「むこん」。因みに、野島出版版のカバーはこれを着彩したものを使用している。この野島出版社(新潟県三条市)版(私の所持するものは平成二(一九九〇)年発行の第五版)は新書サイズで九百五十円(税込)で、当時(結婚三ヶ月後で、買ったのは、今はない鎌倉小町通りの本屋の地方出版物の棚の隅であったことを妙に覚えている)、いい買い物をしたと歓喜雀躍したものだったが、ネットで調べてみると、どうも今は手に入らぬらしい。実に惜しい気がする。

 

 地藏堂、何某の娘、久しく病(やみ)て不ㇾ起(たゝず)。

 近隣・友の娘どち、春の事始めとて、大勢、相招(あひまねき)て、料理など振舞(ふるまひ)けるに、かの娘も其使(つかひ)を得て、頻りに行(ゆか)んことを欲(ほつす)れども、

「病中なれば。」

とて、父母(ふぼ)、これを許さず。

 かの娘、泣(なき)て不ㇾ止(やまず)。終(つゐ)に眠れり。

 扨、振舞の家には大勢の女、老若(らうにやく)うち交(まじり)て、或は謠ひ、或は踊(おどり)、琴よ、三味線(さみせん)よ、と笑ひさゞめきけるに、忽(たちまち)、家(いへ)、

「ひし。」

と鳴渡(なりわた)りて、二階の上より、大一尺周(まは)りほどならん、黄(き)なる蛇の、頭(かしら)、長く、さし出(いだ)せり。

 女共、大に驚き、

ッ。」

叫び、立騷(たちさはぐ)にぞ、人々、

「何事なるや。」

と騷動するに、其蛇、已に去(さつ)て見へず。

「是(これ)、如何なる怪事ならん。」

と、其夜の興は止(やみ)にけり。

 扨、彼(か)の病(やめ)る娘、翌朝(よくちやう)、人に談(かたつ)て云(いはく)、

「我、昨夜、夢に振舞の家に行きて見れば、あまり、座敷の賑(にぎやか)なる音せし故、竊(ひそか)にさし覗きたれば、皆の衆が立騷ぎ給へる故、終(つゐ)、面白き夢の覺(さめ)たり。」

と物語れり。

 

[やぶちゃん注:「地藏堂」複数回既出で既注。現在の新潟県燕市中央地蔵堂である(ここ(グーグル・マップ・データ))。

「春の事始め」古く東国で陰暦二月八日に農事等の最初の雑事を始めることを祝って行なった「御事始(おことはじ)め」のことであろう。]

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