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« 北越奇談 巻之六 人物 其七(孝子春松) | トップページ | 明恵上人夢記 55 »

2017/09/11

夢野久作 日記内詩歌集成(Ⅶ) 昭和五(一九三〇)年三月・四月

 

[やぶちゃん注:昭和五年二月の日記には詩歌はない。]

 

 三月三日 月曜 

 

◇地理學者に知られてゐない國がある。

  そこ王樣は木乃伊だといふ。

 

 

 

 三月十一日 火曜 

 

◎格言を日記にいくつ書き止めて

  けふなまけたる罪をつぐなふ

 

 

 

 三月十六日 日曜 

 

◇手や足は消耗品と聞くからに

  いよいよ赤し製鐡所の空

 

[やぶちゃん注:「いよいよ」の後半は底本では踊り字「〱」。]

 

◇世界は平たい。世界の涯はホンタウに

  泥海ですよと燕等は云ふ。

 

 

 

 三月十九日 水曜 

 

◇自殺した女の死骸に云つて遣る

  お前の虛榮に俺は敗けたと

 

 

 

 三月二十日 木曜 

 

◇デパートの倉庫の鍵を俺は持つてゐる

  賣子女の貞操の鍵を

 

◇彼女を殺した短劒を埋めて

  その上に彼女の好きな花を埋めておく

 

 

 

 三月二十八日 金曜 

 

◇心中をする馬鹿せぬ馬鹿出來ぬ馬鹿

  なんかと云( )氣取る大馬鹿

 

[やぶちゃん注:丸括弧空欄は底本のママ。これは判読不能字ではなく、実際に日記にこのように記されてある。「へば」「ふと」「ひて」などを考えあぐんだ空欄か。]

 

 

 

 四月三日 木曜 

 

◇慈善鍋に十戔玉を投げ込んで

  すこし行つてから冷笑をする

 

◇小父さんの顏によく似た樫の樹の

  瘤が小雨に眼をつぶつてゐる

 

 

 四月五日 土曜 

 

人間の顏によく似た木の瘤が

 ある夜ひそかに眼をあけてみる

 

[やぶちゃん注:四月三日のそれを改稿したもの。この対象素材は気に入っていたことが判る。]

 

 

 

 四月九日 水曜 

 

◇酒を飮んで氷の海を沖の方へ

  どこまでも行くと氣持ちよく死ぬ

 

[やぶちゃん注:これはもう言わずもがな、私の偏愛する夢野久作の小説「氷の涯」(リンク先は私のオリジナル全電子化注のPDF縦書版。本ブログ・カテゴリ「夢野久作」でも分割公開(二〇一五年六月二十七日から七月六日までの二十二回)してある)のエンディング・イメージである。しかし、同作の公開は昭和八(一九三三)年二月刊の『新靑年』であるから、実におよそ三年前には本作の構想があったものと考えて良かろう。

 

 

 

 四月十日 木曜 

 
 
◇教會入口をヂツと見てゐると

  ダンダン惡魔の顏に似てくる

 

[やぶちゃん注:「ダンダン」の後半は底本では踊り字「〱」。]

 

 

 

 四月十四日 月曜 

 

◇ポンペイのまだ掘り出されぬ十字路に

  惡魔の像が舌出してゐる

 

 

 

 四月十九日 土曜 

 

春の夜のそこはかとなき隈々に

 黑きもの動くわが心かも

 

 

 

 四月二十日 日曜 

 

にんげんの牡と牝とが政権を

 爭ふといふ世も末なれや

 

[やぶちゃん注:これは恐らく、この七日後の昭和五(一九三〇)年四月二十七日に市川房枝らが尽力して開催された「第一回全日本婦選大会」(当時は未だ婦人参政権はなかった)や、同年、婦人参政権(公民権)付与の法案が衆議院で可決されるも、貴族院の反対で実現に至らなかった事実を受けた感懐であろう。]

 

 

 

 四月二十五日 金曜 

 

◇米國には惡魔の塔があるといふ

  冨士山しか無き日の本あはれ

 

[やぶちゃん注:「冨」の字は底本の用字。

「惡魔の塔」スティーヴン・スピルバーグ(Steven Allan Spielberg 一九四六年~)の映画「未知との遭遇」(Close Encounters of the Third Kind:「第三種接近遭遇」。一九七七年公開。本邦公開は翌年)で異星人の宇宙船が降下する場所として知られる、ワイオミング州北東部に存在する岩山、通称「デビルスタワー」(Devils Tower)のことであろう。ウィキの「デビルズタワー」によれば、『地下のマグマが冷えて固まり、長年の侵食によって地表に現れた岩頸と呼ばれる地形で』標高は千五百五十八メートルであるが、麓からの比高は三百八十六メートル程度である。頂上は九十一×五十五メートルの広さがあるという。『アラパホ族など先住民族が主に熊信仰の対象として様々な呼び名を付けていた。アメリカ先住民族の口承によると、デビルスタワーの縦筋はグリズリーベア』(Grizzly bear:食肉目イヌ亜目クマ下目クマ小目クマ上科クマ科クマ亜科クマ属ヒグマ亜種ハイイログマ Ursus arctos horribilis)『によって付けられたものという。この地を探検した米国軍人の通訳が初め「悪神のタワー」と誤訳したことで、後にデビルスタワーと呼ばれるようになった。近年、名称変更の動きがあったが、政府は観光客減少による地域経済への影響から変更に反対した』という(アメリカ・インディアンの聖地をかく名付けるアメリカ人は如何にも「野蛮」であると私は思う。今も元の意味に近い「ベア・ロッジ・ビュート」(Bear Lodge Butte:「ビュート」は米国西部の平原に孤立する周囲の切り立った丘」を指す語)や「グリズリー・ベア・ロッジ」(Grizzly bear lodge)と呼ぶ人もあるというではないか(英語版ウィキや後のリンク先等を参照))。ここはアメリカで最初に国定記念物に指定されたスポットでもある。サイト「スピリチュアブレス」の「悪魔の塔と呼ばれる聖地! デビルズタワーを満喫するポイント5選」がよく書かれてあり、写真も美しい。]

 

◇うゝつなきうつゝとなりて眼に殘る

  息づまり行く吾が兒の泣き聲

 

 

 

 四月二十六日 土曜 

 

眼を閉ぢて寢返りすれば

 あの寶石が闇にズラリと並ぶ

 

 

 

 四月二十八日 月曜 

 

◇吾が居ねば兒等と一所に草摘みて

  夕餉を作る吾妻いとしも

 

◇遠ざかる舟の行く手を見守りて

  吾れとしもなくぬる吾が心

 

[やぶちゃん注:後者の下の句は用語法が上手くない。]

 

 

 

 四月二十九日 火曜 

 

◇豆腐菩薩豆で四角でやわらかに

  白くおはせどアクで固まる

 

[やぶちゃん注:「やわらかに」はママ(次歌も同じ)。底本では「ま」が右に転倒しているが、誤植と見て特異的に訂した。]

 

◇豆腐菩薩豆で四角でやわらかに

  年寄りの齒をすくひたまふや

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