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2017/11/24

和漢三才圖會第四十一 水禽類 鳧(かも)〔カモ類〕


Kamo

かも   野鴨 野鶩

【音】【和名

      加毛】

フウ

本綱鳧狀似鴨而小雜青白色背上有文短喙長尾卑脚

紅掌水鳥之謹愿者肥而耐寒數百爲羣晨夜蔽天而飛

聲如風雨所至稻梁一空其肉甘凉九月以後立春以前

卽食之益病人綠頭者爲上尾尖者爲次不可合胡桃木

耳豆豉同食

 新古今吉野なるなつみの川の河よとに

    かもそ鳴なる山陰にして  湯原王

△按鳧種類太多矣頭頸深紅喉下白胸紫有黑點腹毛

 灰白帶淡紫色有黑小斑背灰色有黑斑翅蒼黑翮正

 黑翮上小羽深綠交白蒼觜短啄紅掌卑脚者眞鳬也

 其雌者淡黄赤色交蒼黑毛而作斑翅翮蒼黑色蒼觜

 短啄紅掌卑脚也諸鳬畿内之産爲上九州之産次之

――――――――――――――――――――――

輕鳧 全體黑色頸後帶青有光眼上有淡白條觜黑而

 啄端淡赤腹淡赤白色而有黑縱紋一條脚掌俱赤其

 味亦佳

尾長鳧【一名佐木加毛】 頭頸淡紫色眼邊至腹白色背灰色帶

 碧而黑毛脇有淡赤白條觜黑而兩邊青白色尾二枚

 長二三寸許脚掌共黑其味亦佳

羽白鳬 全體黑而兩脇白頭上有黑長毛如冠翅羽灰

 白色觜碧脚黑其味稍佳本草所謂冠鳬是乎

大明鳬 似羽白鳬而大灰色翅微白頭赤嘴脚共黑

赤頭鳬 俗稱緋鳥頭赤額有淡赤條背碧色帶赤兩脇

 白至腰觜碧脚蒼其味稍好

葦鳧 頭背深灰色腹淡白翅間交青羽脚黃赤

蘆鳧 頭灰色帶赤眼上有小黑條小白條項上亦有胸

 間赤黑腹灰白背灰碧有白條赤黑條黑毛翅交青羽

 觜脚俱黑其味最佳次眞鳧

口鳧 頭頸青黑頸有白環紋背上至尾一條黑色翅有

 緑羽赤羽相雜兩脇赤腰白觜黑脚赤能出没于水數

 百成群相從𢌞泳轉泛故又名車鳧其味與羽白赤頭同

黑鳧 狀類鳬而大其頭觜背共黑胸腹淡黑而鼻有瘤

 脚脛赤蹊翮本白末黑雌者全體灰色鼻瘤小羽脚色

 與雄同肉味有臭氣不佳

かも   野鴨〔(やあふ)〕 野鶩〔(やぼく)〕

【音、[やぶちゃん注:欠字。]】

     【和名、「加毛」。】

フウ

「本綱」、鳧〔(かも)〕は狀、鴨(あひる)に似て、小さく、雜青白色。背の上、文〔(もん)〕有り。短き喙〔(はし)〕、長き尾、卑(ひき)ゝ脚、紅き掌〔(しやう)〕。水鳥の謹愿〔(きんぐゑん)〕なる者〔なり〕。肥えて寒さに耐ふ。數百、羣れを爲し、晨夜〔(しんや)〕には、天を蔽ひて飛ぶ聲、風雨のごとし。至る所の稻梁〔(たうりやう)〕、一〔(いつ)〕に空〔(むな)〕し。其の肉、甘、凉。九月以後、立春以前、卽ち、之れを食〔へば〕、病人に益あり。綠頭(あをくび)の者、上と爲し、尾の尖れる者を次と爲す。胡桃(くるみ)・木耳(くらげ)・豆豉(なつたう)に合はして同食すべからず。

 「新古今」

   吉野なるなつみの川の河よどに

    かもぞ鳴くなる山陰にして  湯原王

△按ずるに、鳧の種類、太〔(はなは)〕だ多し。頭・頸、深紅、喉の下、白く、胸、紫にして、黑き點、有り。腹の毛、灰白、淡紫色を帶び、黑き小斑、有り。背、灰色、黑斑有り。翅、蒼黑、翮〔(はねもと)〕、正黑。翮〔(はねもと)〕の上の小羽、深綠、白を交へ、蒼き觜〔(はし)〕、短き啄〔(はし)〕、紅き掌、卑〔(ひき)〕き脚なり者、「眞鳬(まがも)」なり。其の雌なる者、淡黄赤色、蒼黑の毛を交へ、斑〔(まだら)〕を作〔(な)〕す。翅翮〔(うかく)〕、蒼黑色、蒼き觜、短き啄、紅き掌、卑き脚なり。諸々の鳬〔(かも)〕、畿内の産、上と爲し、九州の産、之れに次ぐ。

――――――――――――――――――――――

輕鳧(かるがも) 全體、黑色、頸の後、青を帶び、光り、有り。眼の上、淡白の條、有り。觜、黑くして、啄の端、淡く赤く、腹、淡赤白色にして、黑き縱(たて)の紋、一條(すぢ)有り。脚・掌、俱に赤し。味、亦、佳なり。

尾長鳧〔(おながかも)〕【一名、「佐木加毛〔(さぎかも)〕」。】 頭・頸、淡紫色、眼の邊り〔より〕腹に至るまで、白色。背、灰色、碧を帶びて黑毛、脇に淡赤白の條、有り。觜、黑くして、兩邊、青白色。尾、二枚、長さ、二、三寸許り。脚掌、共に黑し。其の味、亦、佳し。

羽白鳬(はじろがも) 全體、黑くして、兩脇、白し。頭の上に黑き長毛有りて、冠〔(かんむり)〕のごとし。翅羽〔(はね)〕、灰白色。觜、碧りに、脚、黑く、其の味、稍〔(やや)〕佳なり。「本草」に所謂〔(いはゆる)〕、「冠鳬〔(くわんふ)〕」は是れか。

大明鳬(〔だい〕みやう〔がも〕) 羽、「白鳬〔(しろがも)〕」に似て、大きく、灰色。翅、微〔(かす)かに〕白く、頭、赤し。嘴・脚、共に黑し。

赤頭鳬(あかがしら〔がも〕) 俗に「緋鳥(ひどり)」と稱す。頭、赤く、額に淡赤の條〔(すぢ)〕、有り。背、碧色、赤を帶ぶ。兩脇、白くして、腰に至る。觜、碧。脚、蒼。其の味、稍〔(やや)〕好し。

葦鳧(よしがも) 頭・背、深灰色。腹、淡白。翅の間、青き羽を交ぢふ。脚、黃赤。

蘆鳧(あし〔がも〕) 頭、灰色、赤を帶ぶ。眼の上に小さき黑き條〔(すぢ)〕有り。小さき白き條、項の上にも亦、有り。胸の間、赤黑。腹、灰白。背、灰碧〔に〕、白き條、赤黑き條、黑毛、有り。翅、青羽を交ぢへ、觜・脚、俱に黑し。其の味、最も佳〔にして〕、「眞鳧〔(まがも)〕」に次ぐ。

口鳧〔(くちがも)〕 頭・頸、青黑。頸に白き環紋、有り。背の上、尾に至るまで、一條〔(ひとすぢ)〕の黑色の翅〔(はね)ありて〕、緑羽・赤羽、有り、相ひ雜〔(まぢ)〕はり、兩脇、赤く、腰、白し。觜、黑く、脚、赤し。能く水に出没し、數百、群れを成すなり。相ひ從ひて𢌞〔(めぐ)〕り泳ぎ、轉〔(ころ)〕び、泛〔(うか)〕ぶ。故に又、「車鳧〔(くるまがも)〕」と名づく。其の味、「羽白」・「赤頭」に同じ。

黑鳧〔(くろがも)〕 狀、鳬〔(あひる)〕に類して、大きく、其の頭・觜・背、共に黑く、胸・腹、淡黑にして、鼻に瘤(こぶ)有り。脚・脛〔(はぎ)〕、赤き蹊[やぶちゃん注:恐らくは「距」の誤りで、「蹴爪(けづめ)」のことと思われる。この推定注は東洋文庫の割注に拠った。]。翮本〔(はねもと)〕、白く、末、黑し。雌は、全體、灰色、鼻の瘤(こぶ)、小さく、羽・脚の色は雄と同じ。肉の味、臭(くさ)き氣〔(かざ)〕有りて佳ならず。

[やぶちゃん注:既注であるが、独立項なので繰り返す。「鴨(かも)」である。但し、本邦に於ける「かも・カモ」自体は鳥類の分類学上の纏まった群ではない鳥綱 Aves カモ目 Anseriformesカモ科 Anatidae の鳥類のうち、雁(これも通称総称で、カモ目カモ科ガン亜科 Anserinaeのマガモ属 Anas よりも大型で、カモ科 Anserinae 亜科に属するハクチョウ類よりも小さいものを指す)に比べて体が小さく、首があまり長くなく、冬羽(繁殖羽)はで色彩が異なるものを指すが、カルガモ(マガモ属カルガモ Anas zonorhyncha)のように雌雄で殆んど差がないものもいるので決定的な弁別属性とは言えない。また、「本草綱目」も良安も、「鴨」の意で「鳧」「鳬」の字を混用しているのであるが、本書では特に注さない限り、「鳧」も「鳬」も「鴨」の異体字であり、総て上記の広義な「鴨・かも・カモ」を指している。しかし乍ら、何より困るのは、この字を「かも」と和訓せず、「けり」と読んだ場合は、現行の和名では、全く異なる種である、チドリ目 Charadriiformes チドリ亜目 Charadrii チドリ科 Charadriidae タゲリ(田鳧・田計里)属 Vanellusケリ Vanellus cinereus を指すので非常に注意が必要である。荒俣宏「世界博物大図鑑」の第四巻「鳥類」(一九八七年平凡社刊)の「カモ」の項に和名の「かも」の語源について、『古来より伝わる方言らしいが』、『その語源は不明』とされながらも、但し、『一説によれば』、『古くはカモドリと呼ばれ』、『浮かぶ鳥の意とする』とあり、また、別の古い呼称である「アイサ」は「万葉集」に「秋沙」と出、これは『秋は訳にあらわれる』鳥である『ことを称したものである』とある。しかしこれでは先の注の繰り返しに終わってしまうので、本文に出る「眞鳬(まがも)」、現在のカモ科のタイプ種である鳥綱カモ目カモ科カモ亜科 Anas 属マガモ Anas platyrhynchos を掲げておこう。以下、ウィキの「マガモ」より引く。『北半球の冷帯から温帯に広く分布し、北方で繁殖するものは冬季は南方への渡りを』行い、『越冬する』。『日本では、亜種マガモが冬鳥として北海道から南西諸島まで全国的に渡来する。北海道と本州中部の山地では少数が繁殖する。 本州中部以南で、本種が繁殖したとの記録がたまに見受けられるが、これはアヒル・アイガモが繁殖した可能性が高い。アヒル・アイガモとマガモは生物学的には同じ種であり、識別のしがたい場合もある』。体長は五〇~六五センチメートル、翼開長は七五センチメートルから一メートルに達する。『繁殖期のオスは黄色のくちばし、緑色の頭、白い首輪、灰白色と黒褐色の胴体とあざやかな体色をしている。メスはくちばしが橙と黒で、ほぼ全身が黒褐色の地に黄褐色のふちどりがある羽毛におおわれる。非繁殖期のオスはメスとよく似た羽色(エクリプス)』(eclipse:鳥類学用語。カモ類のは派手な体色をするものが多いが、繁殖期を過ぎた後に一時的にのような地味な羽色になる個体があり、その状態をかく呼ぶ(エクリプス羽:eclipse plumage)。言わずもがなであるが、この語は「日食・月食」などの「食」を意味する単語である)『になるが、くちばしの黄色が残るので区別できる。幼鳥は、くちばしに褐色みがある』。『非繁殖期は、湖沼、河川、海岸に生息する。群れを形成して生活する。越冬中の』十月末から十二月にかけて『つがいを形成し、春には雄雌が連れ立って繁殖地へ渡る。繁殖期は湖沼、池、湿地の周辺の草地などに生息する』。『食性は植物食が主の雑食』で、『水草の葉や茎、植物の種子、貝などを食べる。水面を泳ぐのは上手だが』完全に潜ることは出来ず、『水中に首を突っ込んだり』、『逆立ちしたりしてえさをとる様子がよく見られる』。『繁殖形態は卵生。繁殖期は』四~八月『で、水辺に近い草地の地上に座って首で引き寄せられる範囲の草をあつめ』、『浅い皿状の巣を作り』、一~十三個(平均十一個)を産む。卵は白色。『他のカモ類と同様、抱卵・育雛はメスのみで行う。卵は抱卵開始から』二十八~二十九日『で孵化し、雛は』四十二~六十日『で飛べるようになる』。『食用として古来から狩猟がおこなわれてきた』種で、『日本においては、鳥獣保護法により狩猟鳥に指定されている種の多くがカモ科であるが、各種カモ肉の中でも本種の肉は質、量ともに最高位とされる。本種の肉には』幾つかの他の種にある『臭みがなく、その点も評価されるポイントになっている』。『狩猟対象としての本種は、オスの特徴である緑色の頭部にちなんだアオクビという呼び方をされることが多い』。また、『古来より』、『人の手で家禽としても飼いならされてきた。アヒルの先祖はこのマガモであり、アヒルとマガモのかけあわせがアイガモ』(マガモ品種アイガモ Anas platyrhynchos var.domesticus)『である。もともと人になつきやすく、都市部の池などではよく餌付けされる。また、建物や街路樹の木のうろに営巣する例もあるという』。『近年になって、アイガモ農法などでアイガモが野飼いされるようになり、それに伴ってアイガモとも本種とも見分けのつかない個体が出現するようになった。そういった兆候を捉えて、アイガモやアヒルと野生の本種の間で遺伝子汚染がかなり進んでいるといった懸念をする研究者もいる』とある。因みに、カモ科Anatidaeはガンカモ科とも言い、五亜科五十八属百七十二種もいる。ウィキの「カモ科によれば、リュウキュウガモ亜科 Dendrocygninae(二属九種)・ゴマフガモ亜科 Stictonettinae(一属一種・ゴマフガモ Stictonetta naevosa。本邦には棲息しない)・ツメバガン亜科 Plectropterinae 一属一種:ツメバガン Plectropterus gambensis。本邦には棲息しない)・ガン亜科 Anserinae(十四属三十七種)・カモ亜科 Anatinae(三十八属百二十二種)に分かれるとある。

「野鶩〔(やぼく)〕」「鶩」は前項のアヒル(鳥綱 Aves カモ目 Anseriformes カモ科 Anatidae カモ亜科 Anatinae マガモ属 Anas マガモ Anas platyrhynchos 品種アヒルAnas platyrhynchos var.domesticus)を指す。

「雜青白色」青色と白色が入り混じったような色。

「喙〔(はし)〕」良安は自分の記載でもクチバシを「觜」「嘴」「喙」「咮」、或いは、誤用として「喙」の(つくりの)上部を落してしまった「啄」(何となく判るので訂正注をしていない)という複数の漢字を以って「はし」或いは「くちばし」の意で使用している。「本草綱目」では或いは限定的な別な意味を与えているの可能性もないわけではないかも知れぬが、少なくとも良安の記載では、これらを総て「くちばし」の意として同義で使っていると読むしかない。「クチバシ全体」とか「クチバシの端の部分」とかの意味を与えて差別化して解読しようとも試みたが、どうもそうした厳密な使い分けを彼はしていないことが本項の記載からも窺えるのである。

「掌」部位名として盛んに出てくるが、無論、後肢の甲の部分を指している。

「水鳥の謹愿〔(きんぐゑん)〕なる者〔なり〕」「謹愿」の「愿」も「つつしむ」で畳語。「慎み深いこと」。東洋文庫訳は『謹しみ深く誠実な水鳥である』

「晨夜〔(しんや)〕」朝と夜。

「聲」音。

「稻梁〔(たうりやう)〕」稲と粟( イネ目イネ科エノコログサ属アワ Setaria italica)。

「一〔(いつ)〕に空〔(むな)〕し」一瞬にして皆食い尽くしてしまう。大袈裟で、穀類の害鳥ではないけれども、主なカモ類は事実、好んで穀物を食べる。

「豆豉(なつたう)」ルビは「納豆」。以下に見るように製造法や納豆の紀元ではあるから、この良安の斬新なルビは誤ってはいないとは言える。現行では中華料理食材としての「トウチ」(正確な中国語のカタカナ音写は「トウシ」「ズシ」「ヅシ」)で読め、それで正しく対象を理解出来る人が多くなった。黒大豆に塩を加えて発酵させた上で水分を減じた食品・香味料である。ウィキの「豆豉」によれば、『作り方としては、黒大豆を水で戻してから、蒸し、塩、麹と酵母の混ざったものを加え、発酵させた後、露天で水分を減らして仕上げる』。『現代の日本の浜納豆』『や大徳寺納豆などの寺納豆によく似ており、これらは中国の豆豉が奈良時代に日本に伝わったものとされている』『産地によって、麹カビの作用が強いものと、酵母菌の作用が強いものなどの違いがあり、風味も異なる』。『塩辛く風味が強いが、アミノ酸などのうまみ成分を多く含み、まろやかなコクとふくよかな香りもあわせ持つため、料理の味に奥行きを持たせることができる。刻んだものを回鍋肉や魚介類の炒め物などに用い、また、素材と合わせて蒸し、味と香りを付けるのにも用いられる。広東料理、四川料理、湖南料理などの調味料として多用される』とある。

「吉野なるなつみの川の河よどにかもぞ鳴くなる山陰にして」「新古今和歌集」「巻第六 冬歌」の中の「題知らず」の前書を持つ湯原王(生没年不詳:奈良時代の皇族で歌人。天智天皇の孫で志貴皇子の子。無官位であったらしく、政治面での足跡は残っていない一方、「万葉集」には天平年間初期(七三〇年頃以降)に詠まれたと推定される和歌が十九首も採録されており、万葉後期の代表的な歌人の一人)の一首(六五四番歌)。整序(「万葉集」の「巻第三」の「雑歌」(三七五番歌)の原歌に概ね基づいて補正)をして示すと、

 吉野なる夏實(なつみ)の河(かは)の川淀(かはよど)に鴨(かも)ぞ鳴くなる山影にして

最後の「山影」は諸本は「山陰」とするが、どうもこの「陰」の字を私は好まぬ。「山蔭」としたいがそれでは諸本に反するので、「万葉集」の原文のそれを用いるという裏技で示した。「夏實の河」は吉野宮滝の上流の地名で、奈良県吉野町菜摘。ここ(グーグル・マップ・データ)。湯原王は鴨を見てはいない。向うの山蔭に淀みがあってそこで鳴いているのを聴いている(「なる」は伝聞推定の助動詞)のである。

「卑〔(ひき)〕き」「低き」に同じい。短い。

「翅翮〔(うかく)〕」既出既注。鳥の翼全体のことを指しているようである。

「輕鳧(かるがも)」マガモ属カルガモ Anas zonorhynchaウィキの「カルガモ」によれば、旧分類・旧呼称では本邦のそれは亜種カルガモ Anas poecilorhyncha zonorhyncha とされた(二〇一二年九月に日本鳥学会から発行された「日本鳥類目録改訂第七版」より種小名はzonorhyncha に変更された)。同亜種は日本・ロシア東部・中華人民共和国・朝鮮民主主義人民共和国・大韓民国に分布し、『日本では主に本州以南に周年生息(留鳥)する』。『和名は「軽の池」(奈良県橿原市大軽周辺とする説もあり)で夏季も含めて見られたカモであったことに由来すると考えられている』。翼長はで二五・四~二七・六センチメートル、はそれよりやや小型。『次列風切の光沢は青紫色で、次列風切や三列風切羽縁の白色部が小型で不明瞭』。『少なくとも』、『亜種カルガモはオスの腹部の羽衣が濃褐色で、羽毛外縁(羽縁)の淡色部が小型になり』、『胸部との差異が明瞭』で、『尾羽基部を被う羽毛(上尾筒、下尾筒)が光沢のある黒』を呈する。『メスは胸部と腹部の羽衣の差異が不明瞭で、上尾筒や下尾筒が黒褐色で羽縁が淡色だったり』、『淡色の斑紋が入る』とある。メディアが一列に並んで引っ越しをするカルガモ親子を盛んに採り上げて、可愛いイメージばかりが先行しているが、古来、『イネなどを食害する害鳥とみなされ』てきた。『本種は雑食性の性質が強く、植物質のエサ以外にタニシなども好んで食べ肉に臭みが出るので』、『日本ではマガモのように賞味される機会は少ないものの、マガモより食味が極端に落ちるようなことはなく、植物食の傾向が強い時期の肉は、マガモと並んでうまいとされる』。『日本のカルガモはアヒルとの種間雑種が存在しているとされる』。『アヒルの原種はマガモで』、三『代も野生で放置されると』、『飛翔するほどになるが、日本のカルガモもアヒルと交雑することで、元々は狩猟の対象であり、ヒトを恐れていたはずのカルガモも前述のようなヒトを恐れない行動をとるようになっていったと考えられ、都市部のカルガモの多くがアヒルとの雑種であり、遺伝子汚染が進行している。照明の多い都市部では夜間に飛翔する個体もある』。『外形に関する遺伝形質はカルガモの方が強いため、見た目はカルガモでも』、『性格はアヒルに近いものが現れたと分析され』ているともある。

「尾長鳧〔(おながかも)〕」マガモ属オナガガモ Anas acutaウィキの「オナガガモ」から引く。『ユーラシア大陸の北部と北アメリカ北部の寒帯から亜寒帯にかけての地域で繁殖し、冬季はユーラシアおよび北アメリカの温帯から熱帯地域やアフリカ北部に渡り越冬する。カモ類の中ではマガモ、コガモ』(マガモ属コガモ Anas crecca)、『ハシビロガモ』(マガモ属ハシビロガモ Anas clypeata)『に並んで分布域が広い。アジア極東部で繁殖するものは、同じ個体が年によって日本などのアジア地域や北アメリカと異なった地域で越冬することが、足環を使った標識調査で確認されている』。『日本では全国に冬鳥として多数』、『渡来する』。全長はで六一~七五センチメートル、で五一~五七センチメートル、翼開長は八〇~九五センチメートル。『マガモよりもわずかに大きい。他のカモより比較的首と尾羽が長くスマートな体型をしている。オスの方が大きいのは、もともとオスの方が大きいのに加え、尾羽の中央』の二枚が十センチメートル『ほども細長く伸びることによる』。『オス成鳥は頭部が黒褐色、首から胸、腹まで白色で、その境界では白い帯が首の側面から後頭部に切れこむ。体は黒い横しま模様が細かく走る。背中に蓑のような黒い肩羽があり、翼と尾も黒いが、腰に黄白色の太い帯が入る。また、くちばしは中央が黒くて側面が青灰色をしている。メスは頭部は褐色、その他の部分は黒褐色に淡褐色の縁取りがある羽毛に覆われ、全体的に黒褐色と淡褐色のまだら模様に見える。くちばしは全体が黒い』。『なお』、『非繁殖期のオスはメスによく似たエクリプスに変化するが、くちばし側面の青灰色が残るので区別できる』。『その他』、『メスが雄化した個体や、他のカモ類との雑種(同属のマガモ・コガモ』『などとの)もまれに記録される』。『越冬地では湖沼、河川、海岸などに生息する。群れを形成する。日本では、各地のハクチョウ渡来地において、ハクチョウ類の周囲に多数群がっているのが観察される』。『食性は雑食性で、植物の種子や水草、貝類などを食べる。昼間は休息をとり、夜間に餌場に移動して採餌するが、餌付けされている地域では日中も活動する。ハクチョウ渡来地ではハクチョウの餌付けの際に殺到する様が見られる。また、北アメリカでは多数飛来するオナガガモに作物を食害されないように、ムギなど穀物の一部をわざと収穫せずに畑に残し、オナガガモに食べさせている』。『繁殖期は』五月から七月『で、抱卵・育雛はメスが行う』。『オスはコガモのような高い鳴き声の他「ピル、ピル」などいくつかの違った声で鳴く。メスの鳴き声はマガモのように「ガーガー」である』。良安は「其の味、亦、佳し」と言っているが、『マガモ同様、肉が食用として賞味されるが、その味はマガモに較べて水っぽく、劣っているとされる』とある。

「佐木加毛〔(さぎかも)〕」「鷺鴨」。金沢美術工芸大学の公式サイト内のこちらの「梅嶺百鳥畫譜續篇」の図よって「尾長鴨」の別称であることが判る。左の図の添書きに『長尾鳬』(「長」は略字体)とあって、その下に割注で、やや見えにくいが、『サギガモ』と記されていあるからである。

「羽白鳬(はじろがも)」代表的な潜水採餌行動を採り、翼に白色帯が出ることからこう呼称されるカモ科ハジロ属 Aythya のハジロガモ類のこと、海湾河口・大きな湖沼に棲息する。潜水に適応して足が有意に体の後方に附いている。スズガモAythya marila(本邦では冬鳥として(亜種スズガモとも)が海岸に多数渡来し、日本に渡りする海性のカモ類では、最も渡来数が多い種とされる。東京湾や愛知県名古屋市港区と海部郡飛島村に跨る藤前干潟などでは毎冬、大群が見られる。北海道東部では夏でも観察されている)・キンクロハジロ Aythya fuligula(本邦では冬季に九州以北に越冬のために飛来し、北海道では少数が繁殖する)・ホシハジロAythya ferina(本邦では冬季に越冬のため飛来し、北海道では少数が繁殖する)など、多様な種が含まれるが、ここで良安は「頭の上に黑き長毛有りて、冠〔(かんむり)〕のごとし」と言っているのは明らかにキンクロハジロ Aythya fuligula を指している。同種に繁殖期のは後頭の羽毛が著しく伸長して特に「冠羽」と呼ばれ、英名でも“Tufted duck”tufted:総(ふさ)のある)であるからである。グーグル画像検索「Aythya fuligulaの画像を見られたい。

「大明鳬(〔だい〕みやう〔がも〕)」この解説中の「白鳬〔(しろがも)〕」を前の「羽白鳬」のことと読み換えて、ハジロ属と考えるなら、一部に疑問はあるが、「頭、赤し」というところで、私は前に掲げたホシハジロAythya ferina ではあるまいかと考えたグーグル画像検索「Aythya ferinaを見られたい。同種のは繁殖期には頭部から頸部の羽衣がかなり鮮やかな赤褐色を呈するからである。

「赤頭鳬(あかがしら〔がも〕)「緋鳥(ひどり)」この二種の名で呼ばれているのは、マガモ属ヒドリガモ(緋鳥鴨)Anas penelope である。ウィキの「ヒドリガモによれば、『日本で最も普通に見られるカモ類で』、『淡水型カモの一種で』あるが、『他の淡水型カモよりも海上に出る傾向がある』。『ユーラシア大陸』北部『の寒帯地域やアイスランドで繁殖し、冬季はヨーロッパ、アフリカ北部、インド北部、中国南部、朝鮮半島、日本などに渡り越冬する』。『日本では冬鳥として全国に渡』ってくるが、『北海道では厳冬期には少なく、春と秋によく見られる』。全長はで約五十三センチメートル、で約四十三センチメートル、翼開長は六十八から八十四センチメートルで、『オスの成鳥は額から頭頂がクリーム色』を呈し、『顔から頸が茶褐色、胸は薄い茶色である』。『体の上面は灰色で』、『黒い細かい斑が密にある。下尾筒は黒い。メスは全体に褐色、他のカモ類と比較して赤褐色みが強く、腹は白い』。『オスのエクリプスはメスと似ているが、雨覆羽』(あまおおいばね:翼の前面を数列に並んで覆っている羽毛。単に「雨覆」とも言う。風切羽の基部を覆い、前方からの空気の流れを滑らかにする役割がある。後列のものは大きく、「大雨覆」と呼んで区別するほか、上面のものを「上雨覆」、下面のものを「下雨覆」、前面を「前縁雨覆」などとも呼称する)『が白く全体に赤みが強い』。『くちばしはやや短めで』、『雌雄とも青灰色で先端が黒い』。『体の下面は白い。次列風切羽には白黒緑の模様がある』。『脚は灰黒色』。『頭部の形状は』『他のカモ類と異なり』、『台形に近い形状であること』を特徴とする、とある。良安はやはり「其の味、稍〔(やや)〕好し」と言っているが、『日本では鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律により、狩猟鳥として狩猟鳥獣対象の一種に指定されて』おり、『肉が食用に賞味されるが』、『臭みがあるのであまり好まれない。また』、『マガモなどと比較して小さく、得られる肉量が少ないことも手伝って狩猟される機会は少ない』。『養殖場の海苔』『や、栽培している大麦を食害することがあるため』、『害鳥として嫌われることがある』ともある。

「葦鳧(よしがも)」マガモ属ヨシガモ Anas falcata。日本へは冬季に越冬のために渡りをし、北海道では少数が繁殖する。繁殖期のは額から後頭・眼先・頬の羽衣が赤紫を呈し、眼から後頭の羽衣は緑色となる。詳しくはウィキの「ヨシガモを参照されたい。

「蘆鳧(あし〔がも〕)」この名称は広義の鴨と同義でも用いられるが(カモ類がアシの生えている所に群生するから)、私はこれは「あしがも」ではなくて「あじがも」なのではないか? とすれば、色彩上、やや不審はあるものの、マガモ属トモエガモ Anas formosa のことではないか? と推理したウィキの「トモエガモによれば、日本へは越冬のために渡りをし、『体上面の羽衣は褐色』で、『嘴の色彩は黒い』。『オスの繁殖羽は頭部に黒、緑、黄色、白の巴状の斑紋が入り』、『和名の由来になっている』。種小名formosaは「美しい」の意』でもある。『オスの非繁殖羽(エクリプス)は全身の羽衣が褐色で、眼から頬にかけ不明瞭な黒い筋模様が入る』。『メスは全身の羽衣が褐色で』、『黒褐色の斑紋が入』り、『嘴基部に』は『白い斑紋が入』って『喉が白い』とある。何より、良安が「其の味、最も佳〔にして〕」と言っているように、本種は『食用とされることもあった。またカモ類の中では最も美味であるとされる。そのため』、『古くはアジガモ(味鴨)や単にアジと呼称されることもあった』。『アジガモが転じて鴨が多く越冬する滋賀県塩津あたりのことを指す枕詞「あじかま」が出来た』とあるから、この「あじがも」の呼称は存外、古いことが知れるのである(太字下線やぶちゃん)。

「口鳧〔(くちがも)〕」マガモ属ハシビロガモ Anas clypeata の異名。本邦へは冬季に越冬のために渡りをし、北海道で少数が繁殖する。詳細はウィキの「ハシビロガモを読まれたいが、『嘴は幅広く、和名の由来になって』おり、辞書類にもクチガモは同種の異名として載っている。『英名shovelerもシャベル型の嘴に由来する』。『後肢は橙色』で、『オスは雨覆が青灰色』であるが、『繁殖期のオスは頭部が光沢のある暗緑色』となり、『胸部や腹部側面の羽衣、尾羽は白い』。『体側面から腹部の羽衣は赤褐色で』、『尾羽基部を被う羽毛(上尾筒、下尾筒)は黒』く『嘴は黒い』。『メスは雨覆が灰色で』、『非繁殖期のオス(エクリプス)やメスは全身の羽衣が褐色で、黒褐色の斑紋が入る』。『嘴は褐色で、外縁が橙色』を呈し、『嘴には黒い斑点が入る』。『繁殖地では開けた草原に生息し、越冬地では河川、湖沼、池などに生息』し、『越冬地では数羽から十数羽の群れを形成するが、数十羽の群れを形成することもある』。『食性は植物食傾向の強い雑食で、種子、プランクトン、昆虫、軟体動物、魚類などを食べ』、『属内では動物食傾向が強く、カイアシ類、ワムシなどの動物食を食べる比率が』三十%を超えることもあるとする。『水面に嘴をつけて』、『水ごと』、『食物を吸い込み、嘴で食物だけを濾し取り』、『水だけを吐き出して』摂餌するとある辺り(下線やぶちゃん)、良安の謂う、「能く水に出没し、數百、群れを成すなり。相ひ從ひて𢌞〔(めぐ)〕り泳ぎ、轉〔(ころ)〕び、泛〔(うか)〕ぶ。故に又、「車鳧〔(くるまがも)〕」と名づく」というのとよく一致するように思われるが、如何?

「黑鳧〔(くろがも)〕」カモ科クロガモ属クロガモ Melanitta nigraマガモ属でないので注意! ウィキの「クロガモによれば、本邦へは南下して渡ってきて、『越冬する。北海道では幼鳥が観察されたことがあり、繁殖している可能性もある』。全長四十四~五十四センチメートル、翼開長は七十九~九十センチメートルで、体重は六百グラムから一・四キログラムで、『種小名nigraは「黒い」の意で、和名と同義』である。『嘴の色彩は黒』く、『後肢の色彩は黒や黒褐色』で、『オスの成鳥は全身の羽衣が黒い』が、『メスや幼鳥は全身の羽衣が黒褐色』を呈し、『メスには頬や喉に汚白色や淡灰色の明色斑が入』り、『オスの幼鳥は上嘴に黄色部があ』って、オスの『上嘴基部は黄色く隆起する』とある。]

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