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2017/11/02

和漢三才圖會第四十一 水禽類 鸛(こう)〔コウノトリ〕


Kounotori

こふ     皂君 負金

しりくろ   黑尻

       【和名於

        保止利】

クワン

 

本綱鸛身如鶴但頭無丹項無烏帶長頸赤喙色灰白翅

尾俱黑不善唳止以喙相擊而鳴多巣于高木或在樓殿

嗤吻上作窠其飛也奮於層霄旋遶如陣仰天號鳴必主

有雨其抱卵以影

禽經云鸛生三子一爲鶴巽極成震陰變陽也震爲鶴巽

爲鸛也【或云人探巣取鸛子六十里旱又能羣飛激散雨也其巣中以泥爲池含水滿中養魚蛇以哺子蓋

此説皆不然微鳥豈能以私忿使天壤赤旱耶】三才圖會云鸛毎遇石知其下有

蛇卽於石前如術士禹歩其石阞然而轉鸛俯鳴則陰仰

鳴則晴善群飛薄霄

△按鸛翅端羽黑中羽表淡白有光似霜布地故俗呼曰

 霜降造箭羽目邊及觜根赤色其嘴太長六七寸黑色

 本草所謂喙赤者未詳脚赤爪指似鶴尾純白舌短小

 其鳴也非聲擊喙也

肉【甘溫】 硬羶臭不佳主治婦人帶下及諸血塊【一云食之入沐

湯浴頭令髮盡脱更不生也蓋今試之必不然】

 

 

こふ     皂君〔(さうくん)〕

       負金〔→負釡〔(ふふ)〕〕

しりくろ   黑尻〔(こくかう)〕

       【和名、「於保止利〔(おほとり〕」。】

クワン

 

「本綱」、鸛〔(こふ)〕は、身、鶴のごとく、但し、頭に、丹、無し。項(うなじ)に烏(くろ)き帶、無し。長き頸、赤き喙、色、灰白。翅・尾、俱に黑く、善く〔は〕唳(な)かず。止(た)だ、喙を以つて相ひ擊ちて鳴く。多く、高木に巣くふ。或いは樓殿に在り。嗤吻(しふん)の上に窠を作る。其の飛や、層-霄(おほぞら)に奮(ふる)い、旋遶〔(せんぜう)〕し、陣のごとし。天を仰ぎて號鳴〔せば〕、必ず、雨、有ることを主〔(つかさど)〕る。其れ、卵を抱〔くに〕、影を以つてす。

「禽經〔(きんけい)〕」に云はく、『鸛、三子を生む。一つは鶴と爲る。巽〔(そん)〕、極まるに震と成る。陰、陽に變ずるなり。震、鶴と爲り、巽、鸛と爲るなり。』〔と〕【或いは云ふ、『人、巣を探し、鸛の子を取れば、六十里、旱(ひでり)す。又、能く羣飛して散雨を激〔(はげ)しうする〕なり。其の巣の中、泥を以つて池と爲し、水を含まば、中に滿つ。魚・蛇を養ひて、以つて子に哺〔(ほ)〕す。』〔と。〕蓋し、此の説、皆、然らず。微鳥〔(びてう)〕、豈に能く私〔(わたくし)〕の忿〔(ふん)〕を以つて天壤〔(てんじやう)〕を赤旱〔(せきかん)〕ならしむや。】「三才圖會」に云はく、『鸛、石に遇ふ毎〔(たび)〕に其の下に、蛇、有るを知りて、卽ち、石の前に於いて術士のごとく、禹歩〔(うほ)〕す。其の石、阞然〔(ろくぜん)〕として轉(ころ)げ、鸛、俯(うつふ)いて鳴くときは、則ち、陰(くも)る。仰〔(あふ)ぎ〕て鳴くときは、則ち、晴る。善く薄霄〔(はくしやう)〕に群飛す。

△按ずるに、鸛の翅〔(つば)〕さ、端の羽、黑く、中の羽の表、淡白にして、光、有り。霜の地に布(し)くに似たり。故に俗、呼んで、「霜降〔(しもふり)〕」と曰ふ。箭〔(や)〕の羽に造る。目の邊〔り〕及び觜の根、赤色。其の嘴、太く、長さ、六、七寸、黑色なり。「本草」に所謂、『喙赤』とは、未だ詳らかならず。脚、赤く、爪・指、鶴に似、尾、純白、舌、短く小〔さし〕。其の鳴くこと、聲に非ず、喙を擊つなり。

肉【甘、溫。】 硬(こは)く、羶-臭(なまぐさ)く、佳ならず。婦人の帶下(こしけ)及び諸血塊を治することを主る【一つに云ふ、『之れを食ひ、沐湯〔(もくたう)〕に入り、頭を浴〔(あら)〕へば、髮、盡〔(たちま)〕ち脱け、更に生えざるなり』〔と〕。蓋し、今、之れを試〔みるに〕、必しも然らず。】

 

[やぶちゃん注:コウノトリ目 Ciconiiformes コウノトリ科 Ciconiidae コウノトリ属 Ciconia コウノトリ Ciconia boyciana ウィキの「コウノトリ」によれば、『分布域は東アジアに限られる。また、総数も推定』二千から三千『羽と少なく、絶滅の危機にある。中国東北部(満州)地域やアムール・ウスリー地方で繁殖し、中国南部で越冬する。渡りの途中に少数が日本を通過することもある』。全長約百十~百十五センチメートル、翼開長百六十~二百センチメートル、体重四~六キログラム『にもなる非常に大型の水鳥である。羽色は白と金属光沢のある黒、クチバシは黒味がかった濃い褐色。脚は赤く、目の周囲にも赤いアイリングがある』。鳴管が未発達であるため、『成鳥になると鳴かなくなる。代わりに「クラッタリング」』clattering:嘴を叩き合わせるように、激しく開閉して音を出す行動で、ディスプレイや仲間との合図に用いられる)『と呼ばれる行為が見受けられる。くちばしを叩き合わせるように激しく開閉して音を出す行動で、ディスプレイや仲間との合図に用いられる』とあるから、実は良安が「其の鳴くこと、聲に非ず、喙を擊つなり」と言っているのは誤りではないことが判る。『主にザリガニなどの甲殻類やカエル、魚類を捕食する。ネズミなどの小型哺乳類を捕食することもある』。『主に樹上に雌雄で造巣』し、一腹で三~五個の卵を産み、抱卵期間は三十日から三十四日、『抱卵、育雛』(いくすう)『は雌雄共同で行う。雛は』約五十八日から六十四日『で巣立ちする』。時珍は鶴に似ていると言っている通り、『コウノトリを遠くから見るとツルとも似ているため、度々ツルと混同されることもある。しかし、形態、鳴き声、捕食行動により区別が容易である。具体的には、現在の日本で観察されるツルは道東の留鳥であるタンチョウ』(ツル目ツル科ツル属タンチョウ Grus japonensis)『と、冬鳥として山口県や鹿児島県出水市に渡来し、その他兵庫県にもいるマナヅル』(ツル属マナヅル Grus vipio)『およびナベヅル』(ツル属ナベヅル Grus monacha)『である。これらのうち、タンチョウは頭部が赤く、首が黒く、脚が黒い。ナベヅルは頭部が赤く、胴体や羽の大部分が黒色から灰色であり、脚が黒い。そしてマナヅルは胴体や羽の大部分が黒色から灰色である。これらに対し』、『コウノトリは、首と胴体が白色であり、脚は赤いため、形態により区別は容易である。なお、コウノトリは、風切羽が黒いために、翼をたたんでいるとまるで胴体の後ろが黒いかのように見える。また鳴き声でも区別することができる。ツルは大きな声で鳴くことができるが』、先に述べた通り、『成鳥のコウノトリは鳴くことはできず、クラッタリングというくちばしを打ち付ける行為のみができる』点でも大きく異なる。また、『飼育下での餌の捕食行動にも違いがあ』り、『魚類(アジやドジョウなど)を与えた場合、ツル類はくちばしで細かくついばんでのみこむのに対し、コウノトリは丸のみにする』点でも識別出来る、とある。

 

「負金〔→負釡〔(ふふ)〕〕」「本草綱目」原典で補正注した。

「於保止利〔(おほとり〕」「倭名類聚抄」に、

   *

鸛(ヲホトリ) 本草云鸛【音舘和名於保止利】水鳥似鵠而巣樹者也

   *

とある。

「唳(な)かず」「鳴かず」。

「喙を以つて相ひ擊ちて鳴く」冒頭注を参照。

「嗤吻(しふん)」東洋文庫訳では『嗤』の右にママ注記をし、『(蚩)』を正しい字とし、この「蚩吻」で『鴟尾』(しび)と割注する。この「しび」は確かに「蚩吻(しふん)」とも称し、「しふん」は「鴟吻」「鵄吻」などとも書く。鴟尾ならば確かに腑に落ちる。「ブリタニカ国際大百科事典」によれば、鴟尾は屋根の大棟の両端を飾るもので、形が古代の靴に似ていることから「沓形(くつがた)」とも称する。中国起源であるが、本邦でも飛鳥時代の遺品に既にその存在が知られている。以後、奈良・平安時代を通じて、宮殿・寺院などに盛んに飾られた。瓦製のものが多いが、石製品も存在する。「鴟」自体については明らかでないが、伝説上の怪魚の一種で、海水を吹き、雨を降らす魔力を持つ存在とも伝えられ、建物の火災を防ぐ呪術的意味が付加されたものと推定されている。後世の鯱(しゃち) はこれが変化したものである。

「層-霄(おほぞら)」大空。

「旋遶〔(せんぜう)〕」旋回して廻り飛ぶこと。

「陣」円陣(を成すこと)。

「卵を抱〔くに〕、影を以つてす」抱卵する際には、直接は抱かずに、自身の影で以って卵を暖める。

「禽經」春秋時代の師曠(しこ)の撰になるとされる鳥獣事典であるが、偽書と推定されている。全七巻。

「巽〔(そん)〕、極まるに震と成る。陰、陽に變ずるなり。震、鶴と爲り、巽、鸛と爲るなり」東洋文庫注には『易、八卦(け)の言葉。巽は二陽一陰で卦の主体は陰にある。震は一陽がはじめて二陰の下に生じた形。地が震うのをあらわす』とあるが、「易経」に冥い私には、まるっきし、判らぬ。

「六十里」この部分の叙述が何時の時代であるか判らぬが、仮に偽書ながら、「禽経」の伝承上の春秋時代とするなら、一里は四百五メートルであるから、二十四キロ三百メートルとなる。

「散雨を激〔(はげ)しうする〕」激しく雨を散らす。豪雨を降らせる。

「其の巣の中、泥を以つて池と爲し、水を含まば、中に滿つ」東洋文庫訳では『そして巣の中が泥水となり水が満ちるとそこに』として以下に繋げている(但し、訓読は明らかに切れている)。この原文は明らかに、前の群飛によって、自ら豪雨を呼び寄せて、その雨水を以って、というニュアンスである。

「哺〔(ほ)〕す」餌として与える。

「微鳥〔(びてう)〕」がたいがデカいとは言え、たかが鳥の分際で。

「豈に能く私〔(わたくし)〕の忿〔(ふん)〕を以つて天壤〔(てんじやう)〕を赤旱〔(せきかん)〕ならしむや」反語。「忿」は「怒(いか/おこ)る・憤る」の意。「天壤」は天地。「赤旱〔(せきかん)〕」個人的には「しやくかん(しゃっかん)」と読みたくなる。火の燃え盛るような強烈な日照りの謂いであろう。前者の、子を獲られて、その私的な怒りから、天地を広範囲に旱りさせるということを「あり得ない」として否定しているのである。

「三才圖會」明の類書(百科事典)。王圻(おうき)の著。全百六巻。一六〇七年に成立した。「三才」とは天・地・人のことであり、天文・地理・人物・時令・宮室・器用・身体・衣服・人事・儀制・珍宝・文史・鳥獣・草木の十四部門に分けた事物を、豊富に図を取り入れて説明したもの。後に王圻の子の思義が続編を刊行した。寺島尚順良安の本「和漢三才図会」は本書に日本の事柄を腑やして加えた書。

「石」東洋文庫訳ではこの「石」の前に『(巨)』を補填している。「三才図会」ではそうなっているのであろう(国立国会図書館デジタルコレクションの画像で調べることは出来るが、面倒なので、東洋文庫訳を信ずることとする)。

「術士」道教の道士。

「禹歩〔(うほ)〕」古代中国の夏の禹王が治水のために天下を廻り、足が不自由になって片足を引きずって歩くようになったという伝説から生まれたとされる呪法で、貴人が外出する際、道士やそれを受けた本邦の陰陽師が行う邪気を払う術である。呪文を唱えつつ、一見、千鳥足のように歩くという(この禹歩を含む儀式全体を「反閇(へんばい)」とも称する)。禹歩の一種と思われるものに「歩五星法」(「五星図」に描かれた五星を踏んでいく呪法)があり、また、星座の形を描いて歩く呪法に「北斗七星」を描く「歩罡(ほこう)」(「罡」「北斗七星」のこと)という道家に採り入れられた重要な歩法呪術が存在する。

「阞然〔(ろくぜん)〕として」東洋文庫割注に『地脈に沿って』とある。陰陽五行説に基づく、後の風水のような、地下の自然の気の脈・経絡のようなものを指すのであろう。

「鸛、俯(うつふ)いて鳴くときは、則ち、陰(くも)る。仰〔(あふ)ぎ〕て鳴くときは、則ち、晴る」鸛は気象を自在に操る霊鳥とされたことが判る。

「薄霄〔(はくしやう)〕」高い空。或いは、単に「空」の意。東洋文庫訳ではこの二字に『そらたかく』とルビする。いいね。

「布(し)く」「敷く」。

「未だ詳らかならず」「(本邦の鸛の嘴は黒いのに、)意味がよく判らぬ」ということ。或いは、時珍が「鸛」と同定していた種はコウノトリではないのかも知れない可能性がここで俄然、浮上してくるとは言える。

「羶-臭(なまぐさ)く」「生臭く」。「羶」(音「セン」)は「生臭い」の意。

「帶下(こしけ)」女性生殖器からの血液以外の分泌物。普通、通常の分泌を越えて不快感を起こす程度に増量した状態を指す。

「諸血塊」体内に発生したよろしくない血の滞留結果(塊りを結んだもの)物。

「沐湯〔(もくたう)〕」「湯沐」(とうもく)なら、「湯を浴びて、髪を洗うこと」或いは広義の「湯浴(ゆあ)み」「沐」(モク:呉音)自体が「頭から水や湯をかぶる」の意であるが、ここは以下で「に入り」と続くから、後者。

「今、之れを試〔みるに〕、必しも然らず」良安先生の実証実験、凄い! 事実そうなって、誰かさんから「この禿げーーッツ!」て罵倒されたら、どうします?]

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