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2017/12/02

ジョナサン・スイフト原作 原民喜譯 「ガリヴァー旅行記」(やぶちゃん自筆原稿復元版) フウイヌム 馬の主人 (その1) 

 

フウイヌム 馬の主人

 

[やぶちゃん注:実際には柱の「フウイヌム」の真下には「馬の主人」の左に、より大きな同色字で「六十三枚」という原稿枚数が記されてある。現行版は「第四、馬の国(フウイヌム)」である。]

 

 私は家にもどると五ケ月間は、妻や子供たちと一緒にたのしく暮してゐました。が、また〔再度〕航海に出ることになりました。〔こんどは〕私に「アドヴエンチヤ号」の船長になつてくれといふので、すぐ〔私は〕承知しました。それは三百五十トンの丈夫な〔商〕船でした。

[やぶちゃん注:現行版では最後の一文はカットされている。]

 一七一〇年九月七日に私の船はプリマスを出帆しました。航海がつづくうちは、〔ところが、〔熱〕い海を渡つてゐる〔ゆく〕うちに〕私の船員熱病にかかつて、船員〔たち〕が〔熱病にかかつて〕〔たくさん〕死んでしまひました。それで、私はある島へ寄つて、新しく〔代りの〕船員を傭ひ入れました。

 ところが、今度傭ひ入れた船員たちはみんな海賊だつたのです。この悪漢どもは、他の船員たちを〔仲間に〕引き入れ、みんなして船を橫どりして、船長の私〔を〕とぢこめてしまはうと〔、〕〔こつそり〕計畫し〔てゐ〕たのです。

 ある朝のことでした。いきなり彼等は、なだれをうつて、私の船室に飛込んで來ると、私の手足を縛りあげて、騷ぐと海へ投り込むぞと脅しつけます。私は「もう〔かうなつては、お前たちの〕言ふ通りになる」と降參しました。

 そこで、彼等は〔私の→私の〕手足の綱を解いてくれました、〔それでもまだ〕片足だけは鎖でベツドにしばりつけて、しかも戸口には彈丸をこめた鐵砲をもつて、ちやんと番兵が立つてゐました。逃げ出したら、射殺してしまへと言はれてゐるのでした。食物だけは上から持つて來てくれますが、〔もう私は船長ではなく〕今ではこの船は〔今は〕海賊のものでした。〔した。〕〔船はどこをどう進んでゐるのか、私にはまるでわかりませんでした。〕

[やぶちゃん注:現行版では一部がカットされている

   *

 そこで、彼等は私の手足の綱を解いてくれました。それでも、まだ片足だけは鎖でベッドにしばりつけて、しかも、戸口には弾丸をこめた鉄砲を持って、ちゃんと番兵が立っていました。食物だけは上から持って来てくれましたが、もう私は船長ではなく、今ではこの船は海賊のものでした。船はどこをどう進んでいるのか、私にはまるでわかりませんでした。

   *]

 ある日、〔一七〕一一年五月九日、一人の男が私の船室へやつて來て、「船長の命令により、お前を上陸させる」と云ひ、私を〔〕つれ出しました。〔それから〕船員そ■→彼等〕たちは無理矢理に私をボートに乘せてしまひました。一リーグーばかり漕いで行くと、私を淺瀨に下しました。

[やぶちゃん注:「一リーグー」はママ。既注であるが、「一リーグ」は「三マイル」で「約四・八二八キロメートル」。但し、海上では「一リーグ」を「三海里(nautical mile:ノーティカル・マイル:現在の国際海里では一八五二メートルに規定)」として使うこともある。]

 「一たいここは何處の國なのか、それだけは教へて下さい」

 と私は賴みました。が、彼等もそこが何處なのか全然知らないのでした。そして、彼等は私一人殘して、私は一人殘され

「滿潮が出るといけない〔にさらはれるといけないから早く行け〕。」と言ひながら、彼等はすぐボートを漕いで行きました。〕

 〔かうして〕私はたつた一人でとり殘されました。仕方なしに步いて行くと間もなく〔陸〕につきました。そこでしばらく堤に腰を下して休みながら、どうしたらいい〔も〕のか考へました。少し元氣をとりもどしたので、また奧の方へ步きだしました。私は誰か蠻人にでも出會つたら、早速、腕環やガラス環などをやつて、命だけは助けてもらはうと思つてゐました。

 あたりを見渡すと、並木がいくすじもあつて、草が茫々と生え、ところどころに燕麥の畑があります。私はもしか蠻人に不意打に〔後〕毒矢でも射かけられたら大変だと思つたので、あたりに充分眼をくばりながら〔叢の中を〕步きました。やがて、道らしいところに出ましたが〔てみると〕、人の足跡や牛の足跡がありましたがありましたが、これにそれから〔それから澤山の〕馬の足跡が澤山ついてゐました。

[やぶちゃん注:現行版では「燕麥」は『からす麦』(太字は傍点「ヽ」)となっている。「燕麥」は:           単子葉植物綱イネ目イネ科カラスムギ属エンバク Avena sativa は、野生種であるカラスムギ属カラスムギ Avena fatua の栽培種であるから、訳語としては問題がない。というより寧ろ、原文は“oats”となっており、しかも畑であるのだから、現行の「カラスムギ」ではなく、原稿の「燕麥(エンバク)」でよいと言える。

「不意打に〔後〕毒矢でも」はママ。現行版では「後」はない。或いは「後ろから」と補填しようとしたものの、不要として除去したものかも知れぬが、原稿には抹消線はない。]

 ふと、私は畑のなかに、なにか五六匹の動物がゐるのを見つけました。気がつくとよくみると→気がつくと〕、樹の上にも一二匹登つてゐるのです。〔が、〕の形が 〕それは何とも奇妙にいやらしい〔奇妙な恰好〔恰好〕なので、私は→ち〕よつと驚き ました。、もつ驚き、 繁みに隠れ て〕〔ギヨ→驚きました。もつとよく見てやらうと思つて 私 草→私は叢の方へ身を隠し〔屈め〕〔しばらく〕様子をうかがつてみました。→ゐました。〕〕

[やぶちゃん注:錯綜が甚だしいものの、現行版は、

   *

 ふと、私は畑の中に、何か五六匹の動物がいるのを見つけました。気がつくと、木の上にも一二匹いるのです。それはなんともいえない、いやらしい恰好なので、私はちょっと驚きました。そこで、私は叢(くさむら)の方へ身をかゞめて、しばらく様子をうかゞっていました。

   *

で、ほぼこの通りになっている。]

 そのうちに、彼等の二三匹が私の近くへやつて來たので、〔私は〕はつきり〔その〕姿を見ることができました。〔その猿のやうな動物は、〕頭と胸に濃い毛がモジヤモジヤ生えてゐます〔ます〕。〔顏には〕山羊のやうな髯を〔も〕はやしてゐます。〔それから〕背中から脚の方〔も〕毛が生えてゐますが、そのほかのところは毛がないので、黃褐色の皮膚〔肌〕だけになつてゐます。が見えてゐるのです。→がむきだしになつてゐます。〕そして〔れに〕この動物は尻尾をも〔持〕つてゐません。〔それから〕前足にも後足にも、長い丈夫な爪が生えてゐて、爪の先は鈎形に尖つてゐます。

 彼等は高い樹にも、まるで栗鼠のやうに身輕によぢ上ります。それから時時、輕く跳んだり、はねたりす〔し〕ます。

 雌は雄ほど大きくないのでしたが〔が〕〔頭〕に〔は〕長い眞直な毛がはえてゐます。乳房は前足の間らブラリと下つてゐて、步く時など地面に屆こともあります。雌も雄も〔雌も雄も〕その〔その〕毛〔〕色は褐色、赤、黑、黃 樣々でした。 など、いろいろありました。

[やぶちゃん注:以上の一段落分は、原稿自体、大きな×で削除されており、現行版にも存在しない。ここも幻のパートである。

 私も隨分旅行はしましたが、これまで、これ〔まだ、これほど〕不快な、厭らしい動物は見たことがありません。見てゐても〔ると〕何だか胸がムカムカするのです。〔してきました。〕

 私は叢から立上つて、路を步いて行きました。この路を行けば、いづれどこかインド人の小屋へでも來るかと思つてゐましたつてゐたのです。→たのですたので〕。だが、しばらく行くと私は、さつきの動物が眞正面から〔、〕こちらへ向つて、やつて來るのに出くはしました。この醜い動物は、私の姿を見ると急に 樣樣に顏を〔樣樣に〕歪め〔てゐ〕ました。と思ふと、今度はまるではじめての物を見るやうに、目を見張りました〔す〕。そして、いきなり近づいて來ると、何のつもりか、片方の前足を振上げました。

 だが、私は短劍を拔くと、一つなぐりつけてやりました。が、〔実は〕刃の方では打たなかつたのです。といふのは、この家畜が 殺され〔を怪我さすと〕〔私がこの家畜を傷つけたというふことが〔といふことが〕〔後で〕〔住民たちに〕分ると住民たちが彼にそれを怒りだすのがしはすまいかと→すのが〕心配だつたからです。

[やぶちゃん注:この一段落、再現に非常に苦労した。抹消移動を繰り返すうちに、住民たちの怒りの部分(そもそもここは主人公の推理でしかない)が消されてゆく様子が判る。現行版では、

   *

 私は短剣を抜くと、一つなぐりつけてやりました。が、実は刃の方では打たなかったのです。というのは、私がこの家畜を傷つけたということが、あとで住民たちにわかると、うるさいからです。

   *

となっている。]

 相手は私になぐりつけられて、相手は思わず尻込みしましたが、同時に途方もない唸り声をあげました。すると、たちまち隣りの畑から、四十匹ばかりの仲間が、物凄い顏をしてほえつづけながら集つて〔來〕ました。私は、一本の木の幹にかけつけ、〔よると、→より、〕幹を楯で背を守りながら、背中の方を幹にくつつけて、〕〔幹を後楯にして、〕短劍を振廻しながら彼等を防いでゐ〔ぎ〕ました。

 だが〔すると〕、彼等のうちの数匹が〔二三匹の奴等が、〕ヒラリとヒラリと樹の上に躍り上ると、上から〔そこから〕私の頭の上に、ヂヤーヂヤーと汚いものをやりだしました〔す〕。私は幹にピツタリ身をよせて、何とかうまく除けてゐましたが、あたり一めんに落ちて來る汚いもののため、〔まるで〕息〔が〕塞がりさでした。

 〔こんな風に〕私が困つてゐる最中、〔私は〕ふとふと→急に〕彼等は〔彼等 さつと〕〔が〕〔ちりぢりになつて〕逃げ出しま〔て行きました。→のを見ま〕した。そこで〔どうしてあんなに驚いて逃げ出したのか、不思議に思ひながら、〕私も木から〔身を〕離れ、もとの道を步きだしました。

 その時、ふと左〔の方〕を見ると、馬が一匹、畑の中をゆつくり步いて來るのです。これ〕〔を見つけたので、あの〔さつき〕動物どもは〔この馬の姿を見たので早速〕て逃げうせ〔出し〕たのでせうした。→せう。〕

 馬は私を見ると、はじめ一寸おどろいた樣子でしたが、すぐ落ち着いた顏つきにかへつて〔、〕いかにも不思議さうに私の顏を眺めだしました。それから私のまはりを五六回ぐるぐる廻つて、私の手や足を注意、しきりに見てゐます。

 私が步きだそうとすると、馬は私の前に立塞がつて來ました。〔しかし、馬は〕おとなしい顏つきで、ちよつともあばれだす手荒なことをしさうには見えやうな気配はないのです。ありません。ないのでした。なかつたのです。ありません。〕〔手荒なことをしさうな樣子は見えなかつたのです。〕しばらく私たちは、お互に〔相手を〕じつと見合つてゐました。たうとう私は思ひきつて片手を伸しました。そして〔この〕馬を馴らすつもりで、口笛を吹きながら〔、〕頸のあたりを撫でてやりました。

 ところが、この馬は、私がこ〔にそ〕んなことをするのを厭がるやうに、〔はしてもらひたくないといふやうな顏つきで、〕頸を振り、眉をしかめ、靜かに右の前足を上げて〔、〕私の手を拂ひのけました。それから、馬は二三度いななきましたが、何だかそれは独り言でも云つてゐるのではないかと思へるやうな、変つた〔、〕いななき方でした。

[やぶちゃん注:この段落の最後の空いているマスに、大きく薄い字で「嘶」の字が書かれてある。]

 すると、そこへもう一→匹〕、馬がやつて來ました。この馬は何かひどく禮儀〔偉さ〕うな樣子で、前の馬に話しかけました。それから、二匹とも〔、〕靜かに右脚の蹄を打合せると、代る代る五六度いななきました。が、そのいななき方は、〔これは〕どうも、はつきり、 言葉に 〔普通の馬の聲〔とは変つてゐるやうでした。〕〔ではないようです。〕〕

 それから、二匹〔彼等〕は〔、〕私から五六步離れたところを、二匹が並んで行つたりきたりします。それは丁度、人間が何か大切な相談をしてゐ〔すると〕きの樣子とよく似てゐます。そして、彼等はときど〔き〕私の方を振向いて、〔私が逃げ出しはしないかと〕見張つてゐるやうでした。

 私は動物がこんな〔に〕賢い樣子をしてゐるのを見て、大へん驚きました。馬でさへこんなに賢いさうなのなら、この國の人間はどんなに賢いのかわな■〔らな〕いと思ひました。たぶん〔ここには〕世界中で一番賢い人たちが住んでゐるのでせう。さう思ふと、私は早く家か村でも見つけて、誰かこの國の人間にあ〔つてみ〕たくなつたので〔りまし〕た。それで、私は馬の■たち〕、〔馬と別れて〕勝手に步いて行かうとしました。

[やぶちゃん注:以下、切れ目があるわけではないが、以下では抹消が激しく、今までの手法では原稿の再現が困難なので、少し時間を戴きたく、ここで切らせて貰うこととする。

 

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