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2017/12/26

原民喜作品集「焰」(恣意的正字化版) 雀

 

 

 

 醉ぱらつて雀を憶ひ出した二人は新宿まで出掛けた。屋臺店の皿に赤裸のままの奴がころがつてゐて、若い娘が庖丁で骨を叩いてゐた。一人は一羽の頭を嚙つたばかりでもう食はなかつた。一人は一串と、頭の缺けたもう一串を平げた。

 頭を食つたばかりの男は、その後食ひ足らなかつたことを殘念がつて改めて食ひに行つた。「あの時は醉ぱらつてゐて、赤身のままの奴を見たので、つい變な氣持がしたのだ。」と、その男は云つてゐた。

 

 食べものの話が出た時、一人が鼠はおいしいと頻りに云ふので、鼠が食へるかねと相手が問ひ返すと、いや雀の間違ひだと笑つた。

 ある女が信仰の話から輪𢌞思想まで説き出すと、二人の男は遽かにはしやぎ出した。

「死んだら君は雀になり給へ。」

「いや、願はくば君と一串にされて燒かれたいものだね。」

 

 あいつも死んだら他の奴と一串にさされるのか――身體の調子が少し惡くて、新宿では雀を憐まなかつた方の男が、窓から外を見てゐると、檜葉の樹に雀がゐた。

 

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