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2017/12/25

原民喜作品集「焰」(恣意的正字化版) 移動



 移動

 

 庭のすぐ向ふが墓場だつたので、開放れた六疊の間をぐるぐる𢌞つてゐると、墓地でダンスしてゐるやうだつた。彼はその中年の肥つた女優にリードされながら、墓の上に煙る柳の梢が眼に觸れた。

 ある夜その女優の樂屋を訪れると、女ばかりが肌ぬぎになつて鏡臺に對つてゐる生ぐさい光景に少し壓倒されてゐると、ドロドロドロと太鼓が鳴つた。

 

 彼はある女と媾曳(あひびき)するのに墓地を選んだ。秋のことで蟋蟀(こほろぎ)が啼いて氣が滅入つた。こんな場所で逢ふのはもう厭、とその女は來る度に始めさう云つた。不思議なことだが別れる時には、また今度はここで逢ひませうと約束するのだつた。

 ある女は別の男と心中してしまつた。彼は好んで監獄のほとりを一人でとぼとぼ散步した。高い嚴(いかめ)しい壁に添つて步くと、生きてゐることが意識されると云ふのだらうか、彼は自分の意識に舌を出して笑つた。立派な囚人用の自動車がよくそこを通つた。

 

 氣がついてみると、彼の下宿のすぐ側は火葬場であつた。風の烈しい日には骨を燒く臭ひが感じられるやうだつた。しかしそれがどうしたと云ふのだらう。

 しかし、彼は移動したくなつた。監獄か魔窟の附近へ住みたいと思つた。

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