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2017/12/13

夢野久作 日記内詩歌集成(Ⅹ) 昭和一〇(一九三五)年(全) / 夢野久作 日記内詩歌集成~完遂

 

昭和一〇(一九三五)年

 

[やぶちゃん注:昭和六(一九三一)年から昭和九(一九三四)年の日記は底本にはない。]

 

 一月八日 火曜 

 

仰ぎて門を出づれば天の川

霜白く旭黃色し廣野原

 

[やぶちゃん注:この一月に十年余の推敲を経た畢生の奇作「ドクラ・マグラ」が出版され、この一月二十六日に「ドクラ・マグラ」出版記念会が大阪ビル・レインボーグリルで開かれており、日記にもその様子が如何にも喜びに満ちた様子で記されてある。]

 

 

 

 一月三十一日 木曜 

 

向ひかくれグツチヨ星やござらんか

星こそ御座れ

何人御座る

三人御座る

そりやチツクリヨカロが何々喰はすか
小豆飯に鯛の魚(イオ)

秋摺八升鯖八さし

イカイ入るたる大喰ひ

つるんだる引つぱんろ

 

[やぶちゃん注:新今様風の意味不明の歌。「秋摺」とは秋摺米であるが、これはよく判らぬ。収穫直後に精米した米のことか。籾で貯蔵したものを玄米としたものを「今摺米」と称するらしく、秋摺米は炊くと硬めに出来るらしいことぐらいしか判らなかった。「向ひかくれ」「グツチヨ星」「イカイ入るたる」「つるんだる引つぱんろ」はお手上げ。福岡方言か? 識者の御教授を乞うものである。]

 

 

 

 三月十一日 月曜 

 

春寒く夜靜かなり汽車の音

 

 

 

 五月十一日 土曜 

 

小雨降りて蛙高鳴き薄日照りて

 松蟬の聲波打つ谷々

 

[やぶちゃん注:「松蟬」半翅(カメムシ)目頚吻亜目セミ型下目セミ上科セミ科セミ亜科ホソヒグラシ族ハルゼミ属ハルゼミ(春蟬)Terpnosia vacua の異名。松林に棲息し、林から出ることは少ない。「松蟬」は俳句で晩春や初夏の季語として好んで用いられる。

 なお、この七日前の五月四日には郷里の福岡市中洲にある中華園で、有志による「ドグラ・マグラ」出版記念会が開かれ、日記には『集まる人々四十人皆久作をコキ下す』と記している。]

 

 

 

 七月十八日 木曜 

 

畑打つ女の飛白日に匂ひ遠山脉に雨雲迫る

新しき橋架け終へてかへり行く山男等にカナカナなく

何處迄も草つゝきなる堤果に松一本あり雷雲迫る

桐の花校庭に搖ぎ耀くを寫生してみる七月の末

ひつそりの草深き野を急き行く遠山脉をに雨雲迫れば

 

[やぶちゃん注:「カナカナ」の後半は底本では踊り字「〱」。「草つゝきなる」「急き行く」はママ。「遠山脉」は「とほやまなみ」と訓じたい。なお、この前日、父杉山茂丸が脳溢血で倒れ、重体となり、急遽、福岡香椎より上京、以上の短歌はその車中での詠吟で、歌を並べた後、『など和歌いくつも出來てねむられず。此の心理狀態われながら不思議なり。歌をやむれば又限りなく心配なり。愚かなる事のみ思ふ故又歌を作り心を靜めてゆく』と記している。東京にはこの日の夜に着き、意識不明の父と対面した。翌日の日記に『七月十九日午前十時十五分意識不明のまゝ父上絶命し給ふ』とある。]

 

 

 

 十月二十九日 火曜 

 

疲れて尻を撫づれば皺タルミ指に觸る吾老いたり。

 

[やぶちゃん注:句点はママ。日記本文より一字下げで、これはただの感懐ではなく、短歌である。これを以って昭和十年の日記内の詩歌は終わっており、これ以降の日記は底本にはなく、遺族も所持していないようである。

 夢野久作は、この翌年昭和一一(一九三六)年三月十一日、『渋谷区南平台町の自宅で、父の負債処理を任せていたアサヒビール重役の林博を出迎え、報告書を受け取った後、「今日は良い日で」と言いかけて笑った時、脳溢血を起こして昏倒し、そのまま死亡した』。未だ満四十七歳であった。(引用はウィキの「夢野久作に拠る)。

 以上を以って、二〇一五年七月二十八日に開始したオリジナルな孤独なタイピングによった「夢野久作 日記内詩歌集成」を、二年半で無事、終了することが出来た。数少ない方々ではあったが、奇特な読者からの本プロジェクトへのエールには、心から深く感謝するものである。]

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