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2018/01/22

芥川龍之介 手帳8 (19) 《8-22》

《8-22》

Typhus, Malaria ノ細菌ハ antitoxin ヲ造リ 自ラ死滅ス

[やぶちゃん注:「Typhus」高熱や発疹を伴う細菌感染症の一種であるチフス(漢字表記:窒扶斯)。広義或いは古い定義では、サルモネラ菌(真正細菌プロテオバクテリア門(Proteobacteria)ガンマプロテオバクテリア綱(Gammaproteobacteria)エンテロバクター目(Enterobacteriaceae)腸内細菌科サルモネラ属 Salmonella)の一種であるチフス菌 Salmonella enterica serovar Typhi:「serovar」は「血清型」の意)の感染によって発症する「腸チフス」・同属のパラチフス菌 Salmonella enterica serovar Paratyphi A)の感染によって発症する「パラチフス」・発疹チフスリケッチア(プロテオバクテリア門アルファプロテオバクテリア綱(Alphaproteobacteria)リケッチア目(Rickettsiales)リケッチア科リケッチア属 Rickettsia  Rickettsia prowazekii)の感染によって発症する「発疹チフス」の三種の症状に対して言う(言われた)。狭義には腸チフスとパラチフスの二種に起因するチフス性疾患を指すことが多く、単に「腸チフス」のみを指すこともある(以上はウィキの「チフス」他に拠る)。

Malaria」アルベオラータ 亜界(Alveolata)アピコンプレクサ 門( Apicomplexa)胞子虫綱コクシジウム目マラリア原虫 Plasmodium spp. によって引き起こされる疾患名。熱帯から亜熱帯に広く分布する原虫感染症で高熱や頭痛・吐き気などの症状を呈し、悪性の場合は脳マラリアによる意識障害や腎不全などを起こして死亡する。マラリアは当て漢字で「麻剌利亜」と書き、「悪い空気」という意味の古いイタリア語である“mal aria”を語源とするらしい(ドイツ語:Malaria・英語:malaria)の病原体。本邦に於いて平清盛の死因として知られる「瘧(おこり)」とは、概ねこのマラリアを指していると考えてよい。以下、参照したウィキの「マラリア」より引用する。蚊の一種群であるハマダラカ(羽斑蚊・翅斑蚊。双翅(ハエ)目長角(「糸角」或いは「カ」)カ下目カ上科カ科ハマダラカ亜科 Anophelini 族ハマダラカ属 Anopheles。ハマダラカで最も知られている種は、マラリア原虫の中でも最も悪性である熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)を媒介するガンビエハマダラカ Anopheles gambiae)『によって媒介され』、近年、『微細構造および分子系統解析からアルベオラータ』に分類されるようになったが、ここには既に本文にも登場してきた渦鞭毛藻類が含まれており、『近年マラリア原虫からも葉緑体の痕跡が発見された。そのため、その全てが寄生生物であるアピコンプレクサ類も祖先は渦鞭毛藻類と同じ光合成生物であったと考えられている。ヒトの病原体となるものはながらく熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、卵形マラリア原虫(P. ovale)の』四『種類であったが、近年』、『サルマラリア原虫(P. knowlesi)が』五『種目として大きな注目を集めている。サルマラリアは顕微鏡検査では P. vivaxと区別が難しいため従来ほとんど報告例はなかったが、近年の検査技術の発達によりPCR』(ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)。DNAを増幅させる検査法)『で確実な判断ができるようになったため、多数症例が報告されるようになった。マレーシア』の『サラワク州では今日のマラリア症例の』七十%が『サルマラリアによるものであることも報告されている』。『タイでも報告例がでて』おり、『熱帯熱マラリア原虫によるマラリアは症状が重いことで知られるが、サルマラリアは』二十四『時間以下の周期で急激に原虫が増加し、他のマラリアとことなり』、『ほぼすべての赤血球に侵入するため』、『症状は重篤になることが多く』、『これらの発見から当該地域でのマラリア』・『コントロールは新たな手法による対応を迫られている』。『マラリア原虫は脊椎動物で無性生殖を、昆虫で有性生殖を行う。したがって、ヒトは終宿主ではなく』、『中間宿主である。ハマダラカで有性生殖を行なって増殖した原虫は、スポロゾイト』(sporozoite:種虫)『(胞子が殻の中で分裂して外に出たもの)として唾液腺に集まる性質を持つ。このため、この蚊に吸血される際に蚊の唾液と一緒に大量の原虫が体内に送り込まれることになる。血液中に入ると』四十五『分程度で肝細胞に取り付く。肝細胞中で』一~三『週間かけて成熟増殖し、分裂小体(メロゾイト)』(merozoite:娘虫体)『が数千個になった段階で肝細胞を破壊し』、『赤血球に侵入する。赤血球内で』八個から三十二個に『分裂すると』、『赤血球を破壊して血液中に出る。分裂小体は新たな赤血球に侵入し』、『このサイクルを繰り返す』。『マラリアを発症すると』、四十『度近くの激しい高熱に襲われるが、比較的短時間で熱は下がる。しかし、三日熱マラリアの場合』は四十八『時間おきに、四日熱マラリアの場合』では七十二『時間おきに、繰り返し』、『激しい高熱に襲われることになる(これが三日熱、四日熱と呼ばれる所以である)。卵形マラリアは三日熱マラリアとほぼ同じで』五十『時間おきに発熱する。熱帯熱マラリアの場合には周期性は薄い』。『熱帯熱マラリア以外で見られる周期性は』、『原虫が赤血球内で発育する時間が関係しており、たとえば三日熱マラリアでは』四十八『時間ごとに原虫が血中に出る』際に、『赤血球を破壊するため、それと同時に発熱が起こる。熱帯熱マラリアに周期性がないのは』、『赤血球内での発育の同調性が良くないためである』。『いずれの場合も、一旦熱が下がることから油断しやすいが、すぐに治療を始めないと』、『どんどん重篤な状態に陥ってしまう。一般的には、』三『度目の高熱を発症した時には大変危険な状態にあるといわれている』。『放置した場合、熱帯熱マラリア以外は慢性化する。慢性化すると』、『発熱の間隔が延び、血中の原虫は減少する』。『三日熱マラリアと卵形マラリアは一部の原虫が肝細胞内で休眠型となり、長期間潜伏する事がある。この原虫は何らかの原因で分裂を再開し、再発の原因となる。四日熱マラリア原虫の成熟体は、血液中に数か月~数年間潜伏し発症させることがある』。『マラリア原虫へのワクチンはないが、抗マラリア剤はいくつかある。マラリアの治療薬としてはキニーネ』(オランダ語: kinine:英語:quinine(キニン):キク亜綱アカネ目アカネ科キナノキ属アカキナノキ Cinchona pubescens の樹皮に含まれるアルカロイド)『が知られている。他にはクロロキン』(chloroquine:マラリア治療及び予防用に合成された薬剤)・メフロキン(Mefloquine:キニーネに類似の化学構造を持つ、合成された抗マラリア剤)・ファンシダール(Fansidar:抗原虫薬の商品名で二種の薬剤の合剤。本来の適応はマラリアだけであるが、近年ではエイズのトキソプラズマ脳症の治療や再発予防に使用される)・プリマキン(Primaquine:抗マラリア剤として合成されたもの)『等がある』が、『いずれも』非常に『強い副作用』(致死的なものもある)『が現れることがあり』、処方には非常に『注意が必要』である。『クロロキンは他の薬剤よりは副作用が少ないため、予防薬や治療の際最初に試す薬として使われることが多いが、クロロキンに耐性を示す原虫も存在する。通常は熱帯熱マラリア以外ではクロロキンとプリマキンを投与し、熱帯熱マラリアでは感染したと思われる地域での耐性マラリア多寡に基づいて治療を決定する。近年では、漢方薬を由来としたチンハオス系薬剤(アルテミシニン)』(Artemisinin:抗マラリア活性を有するセスキテルペンラクトン(sesquiterpene lactone:イソプレン(isoprene:二重結合を二つ持つ炭化水素)三つからなるセスキテルペノイド(Sesquiterpenoid)で、ラクトン環を含むことからの名称)の一つ)『が副作用、薬剤耐性が少ないとされ、マラリア治療の第一選択薬として広く使用されるようになった。これによりこれまで制圧が困難であった地域でも大きな成果をあげている一方、アジア、アフリカの一部ではすでに薬剤耐性が報告されるようになってきた』。二〇一〇『年以後、アルテミシニンはグローバルファンド』(The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria:「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」の略称)『の援助によって東南アジアのマラリア治療薬としてインドネシアの国境付近のような僻地であっても』、『処方されるようになってきている』。『近年は殺虫剤に耐性を持つハマダラカや、薬剤に耐性のあるマラリア原虫が現れていることが問題になっている。また地球温暖化による亜熱帯域の拡大とともにマラリアの分布域が広がることも指摘されている。流行地で生まれ育ち、度々マラリアに罹患し』、『免疫を獲得した』人の場合は、『発熱などの症状がほとんど診られないこともあるが、免疫が無ければ発症する』とある。……長々と引用したのには私の個人的な理由がある。私は同い年の友人永野広務君をマラリアで失っているからである。海外に行く機会の多い、そして近年、ハマダラカの生息が東京でも確認されている昨今、マラリアは決して対岸の火事ではないことを心に刻んでおく必要があるからである。]

antitoxin」アンチトキシン。「抗毒素」「反毒素」「抗毒薬」の意。血液中で毒素を中和する物質の総称。]

 

○梅花寨(奉天の先10里以上) 燒飯の煮エテル鍋 松 楢 山あり 愛シンカクラの出でし所 墓アリ(山麓)

[やぶちゃん注:「梅花寨」「ばいかさい」(現代仮名遣)と読んでおくが、不詳。同名の地名は調べたところ、現代中国に複数あるが、孰れも、この「奉天の先」十「里以上」には相当しなかった。奉天は現在の遼寧省瀋陽(市)であるが、そこから四十キロ以上東となると、ぎりぎりで瀋陽市内か、東方向なら遼寧省撫順市内、旧満州鉄道のルートなら同省本渓市になる。読めないながらに、後の清朝の愛新覚羅(この姓を名乗ったのは第三代皇帝順治帝(アイシンギョロ・フリン:愛新覚羅福臨:この姓は満洲(中国東北部)に存在した建州女真族(満洲民族)の姓氏で、始祖ヌルハチの祖先が最初に定住したのは現在の黒竜江省依蘭県一帯)の出身地で調べてみると、どうやら、遼寧省撫順市新賓満族自治県(グーグル・マップ・データ)の中らしいように思われる但し、ここは現在の瀋陽市の東の端から、同地区の北の西端でも五十キロメートルを越える。「以上」と言っているから、誤差範囲とは言えるが、梅花寨がそこに見つからなければ、私の推理は水の泡であるただ、非常に気になるのは、このメモ、実際に芥川龍之介がそこに行き、「燒飯」が「鍋」の中で「煮えている」料理を見、「松」「楢」の樹林帯があり、「山」が「あり」、案内者或いは案内書によってそこが「愛新覚羅」族の出身地であることを知り、その「山麓」に愛新覚羅族の先祖(?)の「墓」があるのを見たメモのようにも思えてくる点である(次に俳句まで出る!)。実は芥川龍之介の中国特派の旅は、北京以降がブラック・ボックスで(奉天を経由した)よく判っていない謎の部分なのである。

 

○梨の花カクラが門の古びかな

[やぶちゃん注:ここだけに出る芥川龍之介の句である。]

○神は自殺する能はず

[やぶちゃん注:大正一三(一九二四)年七月号『文藝春秋』巻頭に「社交」「瑣事」とともに全四章で初出する「侏儒の言葉」(リンク先は私のオリジナル合成完全版)の「神」二章の最初のものや(リンク先は私のブログ個別詳注版)、遺稿「或阿呆の一生」(自死から凡そ二ヶ月後の昭和二(一九二七)年十月一日発行の雑誌『改造』に発表。リンク先は私の古い電子テクスト)の中の「四十二 神々の笑ひ聲」(自分の「侏儒の言葉」の回想の形で)と一致する。

   *

 

       

 

 あらゆる神の屬性中、最も神の爲に同情するのは神には自殺の出來ないことである。

 

       

 

 我我は神を罵殺する無數の理由を發見してゐる。が、不幸にも日本人は罵殺するのに價ひするほど、全能の神を信じてゐない。

 

   *

 

     四十二 神々の笑ひ聲

 

 三十五歳の彼は春の日の當つた松林の中を歩いてゐた。二三年前に彼自身の書いた「神々は不幸にも我々のやうに自殺出來ない」と云ふ言葉を思ひ出しながら。………

 

   *]

 

○暴行ハ相手を論破するより容易なり
 

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