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2018/01/23

芥川龍之介 手帳8 (21) 《8-24/8-25》

《8-24》

どうして車へのつたんだい のりたいから welt-anschauung 一變ス

[やぶちゃん注:「welt-anschauung」通常は、Weltanschauung で、綴りで判る通り、もともとはドイツ語。「世界観」の意。発音は「ヴェルタァーンシャァゥウン(グ)」。本語の最初の用例はイマヌエル・カントト(Immanuel Kant 一七二四年~一八〇四年)の「判断力批判」(Kritik der Urteilskraft 一七九〇年)の中で使用した用語 “De-Weltanschauung”の訳語(英:worldview/仏:Weltanschauung)であったされる。]

 

○得戀の爲自殺す

Drama の中に琵琶劇を使ふ

[やぶちゃん注:「琵琶劇」琵琶弾奏(複数奏者)を添えた近代の新歌舞伎と思われる。例えば、大正一五(一九二六)年八月に日本軍事教育会主催になる琵琶劇「噫常陸丸」(ああ、ひたちまる)が京都で公演されている。琵琶弾奏は泰山流宗家木村泰山一門。これは日露戦争に於いて、明治三七(一九〇四)年六月十五日、玄界灘を西航中の陸軍徴傭運送船三隻がロシア帝国海軍ウラジオストク巡洋艦隊所属の三隻の装甲巡洋艦によって相次いで攻撃され、降伏拒否などにより、撃沈破された「常陸丸事件」を舞台に再現するものであったらしい(国立劇場近代歌舞伎年表編纂室編集「近代歌舞伎年表京都篇」に拠る)。]

 

Jealous man の告白 hotel にゐる hotel へ他の旅客が來る Hotel の人が歡迎する それに jealousy をもつ

○醫者人にあひし時大動脈のつき場や心臟の位置を透視する氣がする

○或女自殺する前に好きな蜜豆を三杯食ふ

All love-affairs are tedious for me, even an hour with a mistress.――況ヤ married life ヲヤ

[やぶちゃん注:「あらゆる恋愛(情事)は私にとって退屈だった、優れた女性(愛人・情婦)との一時間であってさえも。」。これは明らかに侏儒言葉」の、

   *

 

       わたし

 

 わたしはどんなに愛してゐた女とでも一時間以上話してゐるのは退窟だつた。

 

   *

に他ならない。妻文さんのためにも、後の「況や、結婚生活に於いてをや」をあちらでは外したのは、よかった。]

 

○父母ノ爲に married life bit by bit drained away サレル thema

[やぶちゃん注:「bit by bit drained away サレル」「少しずつ、流出されてしまう(はかされてしまう)」。]

《8-25》

O父ガ後妻ヲムカヘルニ對シ子ノ非難スル權限 moderns do not like 世話女房 Your ideal of wife is not may ideal of thatword of son

[やぶちゃん注:「moderns do not like」「現代人は好きでない」。

Your ideal of wife is not my ideal of that」「あなたの妻の理想は、私のその理想では、ない」。]

 

○文化住宅居住者の子供一人ハシカとなる 父母他の一人と一しよにし うつしてしまふ

Naruse 氏の姉 學習院女子部卒業の後 看護婦にならんとし(修業的ニ)赤十字社へ行き 規則書を貰ひ來る 父に叱らる

[やぶちゃん注:「Naruse 氏」芥川龍之介の友人で、第四次『新思潮』の創刊に加わった、フランス文学者成瀬正一(せいいち 明治二五(一八九二)年~昭和一一(一九三六)年)か。ロマン・ロランの翻訳・紹介で知られる。横浜市に生まれで、成瀬正恭(まさやす:「十五銀行」頭取)の長男。但し、彼に姉がいるかどうかは不詳。]

 

○××死す Oana の父母「博士になる人だつたに」と云ふ 小穴「死んでも噓をついてゐやがる」 Perhaps ××の細君もウソをつかれてゐるならん

[やぶちゃん注:Oana「小穴」芥川龍之介の盟友で画家の小穴隆一であろう。]

 

○十圓札をうけとる 札のうらにヤスケニシヨウカと書いてある

[やぶちゃん注:大正一三(一九二四)年九月『改造』発表の「十圓札」の素材メモ(同作は「青空文庫」ので読める)。「ヤスケニシヨウカ」は「寿司に(でも)しようか?」の意。竹田出雲作の「義経千本桜」出てくる寿司屋の名「彌助鮨」から。花柳界などでも「寿司」の隠語として用いられた。]

 

○電車中の電燈落つ 吊革に下がれる女周圍を見まはし 車中の注意をひかんとす 醜婦なる故に誰も顧ず

[やぶちゃん注:これは大正一五(一九二六)年一月発行の『新潮』に発表した年末一日」の一シークエンスの素材(リンク先は私の古い電子テクスト)。

   *

 すると富士前を通り越した頃、電車の中ほどの電球が一つ、偶然拔け落ちてこなごなになつた。そこには顏も身なりも惡い二十四五の女が一人、片手に大きい包を持ち、片手に吊り革につかまつてゐた。電球は床へ落ちる途端に彼女の前髮をかすめたらしかつた。彼女は妙な顏をしたなり、電車中の人々を眺めまわした。それは人々の同情を、――少くとも人々の注意だけは惹(ひ)かうとする顏に違ひなかつた。が、誰(たれ)も言ひ合せたやうに全然彼女には冷淡だつた。僕はK君と話しながら、何か拍子拔けのした彼女の顏に可笑(おか)しさよりも寧ろはかなさを感じた。

   *]

○妹の友だちモデルになると云ふ 

      家小 手狹トイフ

 jialousy

姉斷る<

      萬一ノ時ノ責任

      母の思惑等

一週間餘り後兄に話す

[やぶちゃん注:「<」は底本では「家小 手狹トイフ」から「母の思惑等」までの四行の上をカバーして指示するもの。]

 

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