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2018/03/14

栗本丹洲 魚譜 潛龍鯊テフザメ皮甲 (チョウザメの鱗)

 

Tyouzamekaw1

Tyouzamekawa2

 

[やぶちゃん注:図版は国立国会図書館デジタルコレクションの「魚譜」からトリミングした。二枚目の下部の発条(バネ)状の左からの突出物は、後にある『ウミヅル漢名不詳』とするものの端の一部で、本チョウザメ類の鱗とは関係がない。]

 

□翻刻

潛龍鯊テフザメ皮甲   長尾蔵

 

[やぶちゃん注:後の二枚の図はキャプションがない。同一物として扱った。これは、条鰭綱軟質亜綱チョウザメ目チョウザメ科チョウザメ亜科チョウザメ属チョウザメ(ミカドチョウザメ)Acipenser medirostris mikadoi ととっておく。ウィキの「チョウザメ科等によれば、アリューシャン列島及びアラスカ湾からメキシコのエンセナーダまで分布し、かつては日本にも分布していた。『国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは準絶滅危惧と評価されている』ものの、二〇一七年に『公表された環境省のレッドリストでは絶滅(環境省レッドリスト)と評価され』ている。大きな鱗の形が蝶の形に似、魚体がサメ(軟骨魚綱板鰓亜綱 Elasmobranchiiに属する魚類の中で鰓裂が体の側面に開く種群の総称)のように見えることから、この蝶鮫の和名を持つが、サメとは全く類縁関係はない。通常個体の体長は一・三メートルほどで、体はやや円筒形を成し、吻がやや延長して頭部の前に出る。口は下面にある。二対の口鬚(くちひげ)があり、それを用いて砂泥中を探りながら、ベントス(Benthos:底生生物)である甲殻類・蠕虫類・昆虫の幼虫等を摂餌する。体の背面は灰青色で、腹面は淡白色。群れを作って川を遡上し、夏に砂礫底や水草などに産卵後、海に下る。卵は一週間内外で孵化し、稚魚は秋に海へ下る。肉は美味で、卵は高級食品であるキャビアとして珍重される。百科事典類の諸記載では、本来は東北地方以北の北太平洋に分布しており、日本でもかつて北海道の天塩川・石狩川を遡上していたことが確認されている(但し、上記の通り現在は絶滅したと考えられている)。北海道沿岸では時に本種やダウリアチョウザメ(チョウザメ亜科ダウリアチョウザメ属ダウリアチョウザメ HusoHuso dauricus:アムール川の淡水 汽水域に多いが、オホーツク海・日本海・太平洋の北海道周辺海域にも稀れに来遊することがあり、定置網などに掛かることがある。この種は、吻(ふん)が尖ること、口が大きく、頭部の側面まで開いていること、左右の鰓膜(さいまく)は結合していて腹部の前端から離れていること、吻の下面にあるひげが扁平であることなどの特徴によってチョウザメ属Acipenserの種群とは区別が出来る)が捕獲されることがあるが、孰れもロシア由来と考えられている。私は寺島良安和漢三才圖會 卷第五十一 魚類 江海無鱗魚で、かなり本邦や中国でのチョウザメについて考証した。同ページで「チョウザメ」で検索を掛けて戴くと嬉しい。特に「釜石キャビア株式会社」というところでチョウザメに係わるお仕事に従事しておられたY氏から、同「和漢三才圖會」に載る「かじとうし」の絵が長江に生息するハシナガチョウザメ(チョウザメ目ヘラチョウザメ科ハシナガチョウザメ属の異形種であるハシナガチョウザメ(古くはシナヘラチョウザメと呼称)Psephurus gladius)であると考えらる、というメールを頂戴した時は、大変、嬉しく思ったものだった。氏からは中国切手の同種の画像や、この丹洲の絵に出るチョウザメ(ミカドチョウザメ)Acipenser medirostris mikadoiの鱗は、江戸時代、「菊登知(きくとじ)」と称し(菊の花弁にも似ていることから)、刀剣の鞘の意匠に利用されもしたのであるが、その画像も送って下さった。しかし、かの二〇一一年三月十一日の津波で、施設が破壊され、商業ベースに乗って大きく羽ばたこうとしていた、Y氏の養殖チョウザメの夢は無残にも消え去ってしまった。このことを私はどうしてもここに言い添えておきたいのである。なお、石橋孝夫論文北海道チョウザメの博物誌1遺跡,地名,絵図,民具からみた北海道のチョウザメの記録(PDF)の中で、本図の一枚目が紹介され、そこでは(ピリオド・コンマを句読点に代えさせて戴いた)、『この図はチョウザメ類の乾燥皮の図で、栗本丹州の『魚譜』(栗本、成立年不明)に収められているものである』。『「チョウザメ皮甲」とあることから』、『蝦夷地からもたらされたものと考えられる。添え書きに「潜龍鯊テフザメ皮甲  長尾蔵」とあることから、長尾氏所蔵の乾燥皮を描いたものであろう。』『部位ははっきりしないが、おそらく背中の硬鱗の部分と思われる。どのようにして長尾氏が入手したかは不明であるが、鮫屋などから買い求めたものだろう。』『チョウザメ皮に関する記録は北海道東部に多く』、文化六(一八〇九)年の『『東行漫筆』(荒井、』一八〇六』『)に白糠や厚岸でチョウザメ皮が生産されていることが記録されている.しかしこの他の地域での記録はほとんど見当たらず、今後調査すべき課題である』とある。是非、参照されたい。なお、実は、この論文には私の『「Blog鬼火~日々の迷走」(藪野,2008)に「チョウザメのこと」という記事』のことが記されてあり(現記事)、以上の「Y氏」のことも出るのである。恐らく、私の記事が学術論文に引用された最初のものと思われる。

「潛龍鯊」幸田露伴の釣の随筆にも登場するこの名は、実にチョウザメの生態や形状を捉えた、いい名だと私は思う。因みに、既に述べているが、「鯊」(音「サ」「シャ」)はサメ(鮫)を指す。現代中国語でも「ハゼ」ではなく(その意味もあるが)、圧倒的に鮫の意で用いられている。魚類学でも、例えば、メジロザメ目 Carcharhiniformes は「目白鮫」ではなく、「真鯊」である

「長尾」不詳。]

 

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