変生女子(へんじょうじょし)夢
昨夜見た、不思議な二つの夢――自分が女性で――しかも別々な二話でそうなのだ――。
*
第一話――唐代伝奇風
時は唐代。私は十代か二十代の女である。
邸宅の奥まった部屋で、若い夫と、ある遊びをしている。
大きな唐三彩の盆皿に、私が小さな革製の入れ物で白砂を一杯入れる。
夫は同じような入れ物から黒い粘性のある土の塊を入れる。
それを交互に繰り返す。
夫の入れたその塊りは、自然に龍の形象へと変容する。
龍は昇天しようと蠢くが、私の入れる白砂に邪魔されている。
龍が昇天すれば、夫の勝ち。
龍が白砂に阻まれて、最早、動けなくなれば、妻である私の勝ち、である。
遂に、龍は白砂に半ば埋もれて、首と胴の一部を白砂からちょっと覗かせた状態で、固まって動かなくなってしまう。
「私の勝ち!」――と笑って夫を見上げる。
夫も微笑している。
ところが――目を戻すと――龍は白砂を崩すことなく――そのまま穴の開いたままに――昇天して消えている。
吃驚して夫の方を見ると――夫の姿は消えている…………
*
第二話――B級SF映画風
時は遙か未来。
場所は太陽系外の惑星。
空気はないから、宇宙服に身を包んでいる。
私は二十代の白人の女性である。
小型の宇宙艇の操縦室に夫がいる。
私は昇降機で惑星の地表に降りる。
五十メートルほど先に無人の宇宙コンビニエンス・ストアが見える[やぶちゃん注:シチュエーション、ショボ過ぎ。]。
そこに人間の姿に化けたエイリアンが来るという情報を受けて、夫とともにそこに来たのである。
私は女狙撃兵である。
岩蔭から銃を指し出し、スコープを覗くと、ストアから不法に物品を略奪した、よれよれの茶のコート姿の中年男が出てくる[やぶちゃん注:宇宙服を着ていないから、間抜けなエイリアンである。]。
通常弾で、二度、撃つ。
二発とも命中するが、男はあろうことか、そのまま平然と歩いている。
そこで大きさが倍はある徹甲弾を銃に装塡し、撃つ。
コートがスローモーションで翻って、男は仆れる。
「任務完了。」
と夫に連絡し、宇宙艇の真下の昇降機に入る。
しかし、磨りガラスの外にモンスターの影が近づくのが見えた![やぶちゃん注:ここは二重太陽のある星系であった。ここではエイリアンは本来の姿に戻っているのだが、磨りガラスであるためにはっきりした様態は見えない。]
「あいつ! 死んでなかったんだわ!」
と叫ぶ。
夫が
「エレベーターが故障してる!」
と叫んでいる。
ドアの向うから影が近づいてくる…………
女性になる夢は恐らく生まれてから一度も見たことがない上に、時制の恐ろしく隔たったアンソロジー形式の二話連続というのも異様だ。
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