森立之立案・服部雪斎画「華鳥譜」より「さぎ」
さき
□翻刻1(読み仮名を省略、一行字数を一致させた。【 】は割注)
さぎ【一名しらさぎ】
鷺
味鹹平ニ毒なし脾胃を補ひ痩をいやし氣を
益す夏月は味最甘美
□翻刻2(読みを丸括弧で添え、句読点や記号を附して読み易く整序したもの)
「さぎ」【一名、「しらさぎ」。】
「鷺(う)」
味(あぢは)ひ、鹹(しほから)く平(たひら)に、毒(どく)なし。脾胃(ひゐ)を補(おぎな)ひ、痩(やせ)をいやし、氣(き)を益(ま)す。夏-月(なつ)は、味(あぢは)ひ、最(もつと)も甘-美(うまし)。
[やぶちゃん注:底本及び画像(上下左右をトリミング)は、「とき」に引き続き、国立国会図書館デジタルコレクションの「華鳥譜」を用いた。
「さぎ」「鷺」は鳥綱新顎上目ペリカン目サギ科 Ardeidae の多様なサギ類の総称であるが、『一名、「しらさぎ」』とも記しているから、その場合は、サギ科 Ardeidae の中で、ほぼ全身が白いサギ類の総称通称、ということになって限定される。事実、絵もそうであるから、後者で採るのがよいと思われる。但し、「シラサギ」という和名の種がいるわけではないので注意が必要ではある。限定される種群は「私の和漢三才圖會第四十一 水禽類 鷺(総称としての「白鷺」)」の私の注を見られたい。
「鹹(しほから)く平(たひら)に」「鹹」は漢方の「五味(ごみ)」(「酸」・「苦」・「甘」・「辛」・「鹹」)の一つで、通常は「カン」と音読みする。五味は単なる味覚だけに終わらず、例えば五臓では「腎」に対応し、また、物を和らげる属性を持つとされる。「平」は通常、音「ヘイ」で漢方の「五性」(温性・熱性・寒性・涼性・平性)の一つである。体を温めたり冷やしたりする属性を持たないものを指す。故にどんな状態や体質であっても、広く摂取可能な食物とも言えるものに当たる。
「脾胃(ひゐ)」漢方では広く胃腸、消化器系を指す語である。
「氣(き)」漢方で言う陽気。]
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