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2018/04/28

進化論講話 丘淺次郎 第十四章 生態學上の事實(6) 五 警戒色と擬態

 

     五 警戒色と擬態

 

 多くの動物はその住處と同じ色を有するものであるが、或る種類の動物は全く之と反對で、その住處と色とが甚だしく異なり、そのため著しく目に立つて、遠方からも明に識別が出來る。蜂の如きはその一例であるが、かやうな動物を集めて見ると、孰れも小形のもので、刺を有するか、毒液を分泌するか、惡臭を放つか、或は非常に味の惡いものであるか、何か必ず之を攻擊した敵は一度で甚だしく懲りるやうな性質の具はつて居る類ばかりである。之は保護色に比べると、遙に少數で、その明に知れてある例は、多くは昆蟲類であるが、蜂の如く刺を有するものの外に、蝶の中には味の極めて惡いものがあり、臭龜蟲(くさかめむし)の中には烈しい臭氣を放つものがあり、甲蟲の中には關節の間から毒液を分泌するものなどがあつて、孰れも著しい彩色を呈し、一見して之を識別することが出來る。これらの昆蟲類を捕へて、試に鳥類に與へて實驗して見るに、或る鳥は初から全く之を顧みず、また或る鳥は一度之を口に入れ、忽ち吐き出して、後に嘴を方々へ摩り附けたりして、不快の感じを消そうと種々に盡力するが、この事から考へて見ると、以上の如き動物が特に識別し易い著しい彩色を具へて居るのは、敵である鳥類等の記憶力に訴へ、初め若干の個體を犧牲に供して、その食ふべからざることを鳥類に覺えしめ、然る後に殘餘のものが、白晝安全に橫行し得るがための方便と見倣すより外に仕方がない。

[やぶちゃん注:「臭龜蟲(くさかめむし)」昆虫綱半翅(カメムシ)目異翅(カメムシ)亜目 Heteroptera のこと。臭いの強烈な種。代表格は室内に侵入することも多い、異翅亜目カメムシ科 Halyomorpha 属クサギカメムシ(臭木椿象)Halyomorpha halys であろう(その強烈さとしつこさは、ウィキの「クサギカメムシ」を参照されたい)が、多かれ少なかれ、多くのカメムシ類は、主に危険を感じた場合、自己防衛のために臭気を出すものが多い。ウィキの「カメムシ」によれば、『カメムシは、胸部第三節である後胸の、腹面にある臭腺から悪臭を伴う分泌液を飛散させる。この液にはアルデヒド・エステル・酢酸・炭化水素が含まれ、臭いの主成分はヘキサナール』(Hexanal:大豆や草本類などの持つ青臭さの主成分)『やトランス-2-ヘキセナール』(trans-2-Hexenal:同じく草や葉や野菜の臭いの主成分)『である。敵の攻撃など、外部からの刺激を受けると』、『分泌され、捕食者に対しての防御であると考えられている』。『群れでいるカメムシの場合』、一『匹が臭いを発すると、たちまちのうちに周辺一帯のカメムシが逃げ出す現象が見られる。高濃度のカメムシの臭いは、仲間に対しては警報の役割を果たしている。一方で、群れを作るカメムシの場合は、低濃度の臭いを集合フェロモンとして利用することが知られている』。『カメムシの分泌液は、彼ら自身にとっても化学的に有害である。このため、カメムシの体表は、飛散させた液が自分の体にしみこまないように厚いセメント層で保護されてい』。『また、瓶の中にカメムシを入れ、つついて臭いを出させたあと、蓋を閉めておくと、死んでしまうことがある』が、これは実験で『人為的に狭い空間に密閉したために死亡に至ったもので、自然状態で死亡することはない』。『カメムシの分泌液は求愛にも利用される』。『オオクモヘリカメムシ』(異翅(カメムシ)亜目ヘリカメムシ上科ヘリカメムシ科 Anacanthocoris 属オオクモヘリカメムシ Anacanthocoris striicornis)『は、青りんごのようなにおいを放つ』とある。但し、そんなら嗅いで見ようととは、多分、思わない方がいい。ウィキの「オオクモヘリカメムシ」によれば、『細身の大柄なカメムシ』で、本邦では『本州、四国、九州』で普通に見られるが、『刺激を受けると悪臭を発するのはカメムシ一般に同じであるが、この種の臭いは非常に強い。日本で普通に見ることのできるカメムシでは最も臭いカメムシである。たとえば』、研究者でさえも『「その臭気は特にはげしい」』『「臭気特に猛烈」と記述』するほど』である。『しかし、積極的に人家に入るなどはしないので、人間と接することは多くない』ともあるので、君子危きに、である。ヘリカメムシ科 Coreidae の種群は和名に違わず、概ね、かなり臭いようである。なお、こちらのカメムシの臭いの記述によれば、キュウリの青臭さを濃厚にしたものに近いとし、特に似ているものとしてコリアンダー(coriander(英名)・香菜・パクチー・シャンサイ/セリ目セリ科コエンドロ属コエンドロ Coriandrum sativum)の生葉の臭いを挙げている。されば、パクチー好きの日本人は或いはカメムシの臭いを「いい匂い」と感じるのかも知れない、てなことも書いてある。なお、そこの記載は自身の臭気で死ぬこともあるとか、コリアンダーの語源はカメムシを意味するとか、誤った記載も多いので注意が必要である。ウィキの「コリアンダー」によれば、『英名 coriander は属名にもなっているラテン語 coriandrum に由来し、さらに古代ギリシア語 κορίαννον (koriannon) へ遡る。後者の原語を指して「ギリシア語でカメムシを意味する』『」などと紹介されることが非常に多いが、これは誤りで、κορίαννον もまた「コリアンダー」を指す言葉である』とする。但し、『κορίαννον 自体の語源については、キャラウェイまたはクミン』『を意味する καρώ/κάρον (karō/karon) の関連語だとする』『考察がある一方、「匂いがカメムシに似ている』『」として、近縁で類似の臭気をもつトコジラミ(南京虫)を意味する κόρις (koris) に関連づけられることも多い』とはあるから、語源説を辿ると、遠回りで関係する一説があるとは言えるかも知れない。

「甲蟲の中には關節の間から毒液を分泌するものなどがあつて」甲虫類(昆虫綱鞘翅(コウチュウ)目 Coleoptera)の一部には、ヒトに有害な体液を噴射して皮膚疾患を生ぜしめるものがオサムシ類(鞘翅目食肉(オサムシ)亜目オサムシ上科オサムシ科オサムシ亜科 Carabinae)やゴミムシ類(オサムシ上科 Caraboidea)に見られるが、彼らは殆んどのそれは、「屁っぴり虫」の俗称で知られるオサムシ上科ホソクビゴミムシ科 Pheropsophus 属ミイデラゴミムシ(三井寺歩行虫)Pheropsophus jessoensis のように、腹部末端から噴出であって、丘先生の言う「關節の間から」という記述とは齟齬する体液が有毒な種も鞘翅(コウチュウ)目カミキリモドキ科ナガカミキリモドキ亜科アオカミキリモドキNacerdes waterhousei(本種は古くは媚薬などとして誤って使用された発泡性有毒物質であるエーテル・テルペノイドの有機化合物カンタリジン(cantharidin)を体液に含む)や、小学生の時、失明すると脅された鞘翅目カブトムシ亜目ハネカクシ下目ハネカクシ上科ハネカクシ科アリガタハネカクシ亜科 Paederus 属アオバアリガタハネカクシ(青翅蟻形翅隠)Paederus fuscipes(発泡性毒性を持つアミドの一つであるペデリン(pederin)を体液に持つ。なお、これは彼らPaederus属の昆虫の体内共生生物である細菌(真正細菌プロテオバクテリア門ガンマプロテオバクテリア綱シュードモナス目シュードモナス科シュードモナス属 Pseudomonas)が主に同属のの体内で生産したものである)など何種かいるが、これも虫体を潰すことで被害に遇うのであって、彼らが積極的に関節から滲ませたりするものではないので、これも違う。所持する伊藤哲朗編「学研の大図鑑 危険・有毒生物」(二〇〇三年刊)の記載では、関節から体液を出すことがはっきりと明記されている種は、

鞘翅(コウチュウ)目ゴミムシダマシ上科ツチハンミョウ(土斑猫)科ツチハンミョウ亜科マメハンミョウEpicauta gorhami

で、ヒトが『触れると体を丸め関節から黄色い液を出すが、この体液に』は先に挙げたアオカミキリモドキと同じ劇薬『カンタリジンが含まれていて、皮膚に付着すると水疱(すいほう)性皮膚炎を起こす』とある(但し、続けて『しかし個体数が少なく被害もわずかである』とはある)。そこでウィキの「ツチハンミョウ」を見ると、触ると死んだ振り(擬死)をして、この時に脚の関節から黄色い液体を分泌する。この体液には毒成分カンタリジンが含まれ、弱い皮膚につけば水膨れを生じる』(太字下線やぶちゃん)とあることから、このツチハンミョウ科 Meloidae の他の種、

ヒメツチハンミョウMeloe coarctatus

マルクビツチハンミョウ Meloe corvinus

も同じと考えられる(複数の昆虫サイトで上記二種も体節からカンタリジンを分泌することを確認済み)。また、

ツチハンミョウ科ゲンセイ亜科ゲンセイ族キイロゲンセイ属キイロゲンセイ Zonitis japonica

先の「学研の大図鑑 危険・有毒生物」の毒液を出す画像をよくみると、腹部下側の体節の間から滲み出していることが判るから、これも挙げておく。さすれば、同属の、

キイロゲンセイ属オキナワキゲンセイ Zonitis okinawensis

も同じく、体節からカンタリジンを分泌する可能性が大であるように思われる。これだけ挙げておけば、インセクタでない私としては上出来の部類と思うので、ここまでで終りとしたい。]

 

 小形の動物が大形の敵に對する場合には、自身に如何に敵を懲らしめるだけの仕掛があつても、之を表に現す看板が無ければ何の役にも立たぬ。例へば昆蟲が一度鳥に啄かれてしまへば、その後で敵である鳥が毒液・惡臭等のために如何に苦んでも、殺された方の蟲は、最早活き返る氣遣なく、結局防禦の裝置も何の功も無いことになるから、最初から敵が自分を捨てて顧みぬやうにさせる趣向が肝心である。こゝに述べた如き動物の著しい色は、卽ちこの意味のものであるが、敵を警戒するためのもの故、之を警戒色と名づける。

 こゝに尚一つ奇なことは、昆蟲類の中には剌をも有せず、毒をも分泌せず、全く防禦の器官を具へぬもので、往々警戒色を呈するものがある。尤も、その數は眞の警戒色を有する類に比べると遙に少數で、且各々必ず或る有力な防禦の武器を具へた昆蟲に極めて類似して居る。例へば蜂は剌を有するから、之を攻擊する動物は比較的に少いが、蛾の類に屬する「すかしば蝶」、甲蟲の中なる「虎かみきり」の如きは、分類上の位置の全く異なるに拘らず、形狀・彩色ともに頗る蜂に似て居るので、飛んで居る所を見ると、往々蜂とは區別が附かぬ。之は全く多くの鳥が蜂の形と色とを記億し、蜂を避けて攻擊せぬことを利用し、自分も鳥類に蜂と見誤られて身を全うするための手段と思はれるが、斯かる性質が如何にして生じたかと考へるに、生物が皆自然淘汰により、漸々進化して今日の姿になつたものとすれば、その生じた原因なども一通りは推察することが出來る。若し之に反して生物種屬を萬世不變のものと見倣さば、斯かる事實は單に不思議といふだけで、到底少しもその意味を知ることは出來ぬ。特に「すかしば蝶」の如きは、蛹より出た際には、翅は全面に粉狀の鱗片を披り、不透明なこと少しも他の蝶類に異ならぬが、出るや否や、粉は落ち去りて、そのために翅は蜂の翅の如き透明なものとなる。この事などは「すかしば蝶」を、終生、翅一面に粉の附いて居た蝶類から進化し降つたものと見倣さなければ、全く理窟の解らぬ現象である。假にここに一種の昆蟲があると想像し、その若干の個體が鳥類に蜂と見誤られて安全に生存し、生殖したとすれば、その鳥類をして蜂と見誤らしめた性質は遺傳によつて子に傳はり、次の代にはまた多數の子の中で、最もこの性質の發達したものが、最も多く鳥によつて蜂と見誤られさうなわけであるから、これらだけが生存して子を遺し、代々知らず識らず鳥によつて淘汰せられ、その結果終に今日見る如きものまでに進化する筈である。斯くの如く生物の進化するのは、主として自然淘汰によるものとすれば、「すかしば蝶」の如き、「虎かみきり」の如き、或はこゝに圖を掲げた蝶の如き、防禦の武器なくしてたゞ警戒色のみを有する昆蟲の生ずることも、最も有り得べきことと考へられるが、若し自然淘汰といふことを全く度外視したならばこの所謂擬態といふ現象は、如何にして生じたものか到底その理由を察することは出來ぬ。

[やぶちゃん注:ここで語られているのは、のキャプションに私が注した「ベイツ(Bates)(型)擬態」である。再掲しておくと、ベイツ擬態とは、自身は有毒でも不味くもないが、他の有毒であったり、不味いの種と形態・色彩・行動などを似せて捕食を免れる擬態を指し、発見者のイギリスの探検家ヘンリー・ウォルター・ベイツ(Henry Walter Bates 一八二五年~一八九二年)に因む。

「すかしば蝶」これはどう考えても、「すかしば蛾」の誤りとしか思えない。これものキャプションに私が注した、鱗翅目Glossata 亜目Heteroneura下目スカシバガ(透羽蛾)上科スカシバガ科 Sesiidae に属する蛾の一種群である。再掲すると、触角が棍棒状を呈し、体を覆っている鱗粉によって、体部に黒と黄の蜂に似た斑紋を有する種が多く,また、昼飛性でもあるため、人間でも蜂と誤認し易い(私も実は奥日光沢の誰もいない露天風呂で、これをスズメバチと見間違え、さんざんっぱら、怖がらさせられた苦い記憶がある)。世界中に分布しているが、熱帯には同一地域に棲息する大形で美麗なハチとよく似た種が分布している。日本産では二十五種おり、ハチ類とスカシバガ科のガ類とが擬態関係にあって、同一地域に、外見上、よく似たハチとスカシバガが棲息していれば、毒針を持つ、生物ピラミッドの相対的に上層に位置するハチがモデルとなり、スカシバガがこれに擬態することによって、生命の安全が、ある程度まで保証されることになる点では、「ベイツ(Bates)型擬態」であるとは言える。但し、現行、このベイツ擬態は生物学者の間では異論も多く、その割にフィールド検証が進んではいないことは言い添えておく。なお、万一、「スカシバチョウ」(透かし翅蝶)なる和名や異名を持つ別種が存在する場合は、御教授願えれば幸いである。

「虎かみきり」鞘翅目カミキリムシ科トラカミキリ属トラカミキリXylotrechus chinensis 或いは同属の総称であるが、ここはベイツ擬態に見える前者で示す。「トラフカミキリ」の異名もある。体長は十五~二十五ミリメートル。体は赤褐色を呈し、頭部・前胸背前縁・小楯板・上翅・腹部などには黄色の短毛が密生する。前胸背中央部の横帯と後部は黒色で、上翅には黒色横帯を有し、基半部のものは斜走する。頭部は前胸に深く陥入して一体となってほぼ円形となっており、触角は短い。上翅は肩部で前胸と、ほぼ同幅で、後方に向って細くなっている。成虫は七~八月に出現し、スズメバチ類に擬態する。北海道・本州・四国・九州・台湾・朝鮮・中国に分布する。なお、トラカミキリ類は全般にハチ類に似たものが多い(「ブリタニカ国際大百科事典」に拠った)。]

 

Tyoudousinobeitzgitai

 

[ (上)ヘリコニデー科の蝶

(味が極めて惡いから鳥に食はれぬ)

  (下)ピエリデー科の蝶

   (上の蝶に似た擬態)]

[やぶちゃん注:底本の国立国会図書館デジタルコレクションの画像をトリミング補正して用いた。

「ヘリコニデー科」は不詳。但し、サイト朝日新聞」進化論、今なお続く謎 「種の起源」発表から150年という記事に載る図(大崎美貴子氏描画。)が、本図の上下の種を逆転させたものと判断され、そのキャプションに『進化論を初めて実証したとされるベイツ型擬態のチョウ。下がモデル種でマダラチョウ亜科、上がその擬態種のシロチョウ科』とあるから、これはマダラチョウ亜科 Danainae のことと判る(かつては「マダラチョウ科」とされていたが、現行ではタテハチョウ科 Nymphalidae の亜科として扱われる)蝶図鑑サイト「ぷてろんワールドトラフトンボマダラ亜族(Subtribe Mechanitinaページのページに載る、

マダラチョウ亜科トンボマダラ族トラフトンボマダラ亜族フチグロトンボマダラ属トンボマダラ亜種Methona confusa confusa(そこに載る画像はボリビアでの採集個体)

と、同じく、

トンボマダラ亜種Methona confuse psamathe(そこに載る画像はペルーでの採集個体)

が本図のそれに酷似しているように私には思われる

「ピエリデー科」は鱗翅目アゲハチョウ上科シロチョウ科 Pieridae(コバネシロチョウ亜科 Dismorphiinae・マルバネシロチョウ亜科 Pseudopontiinae・シロチョウ亜科 Pierinae・モンキチョウ亜科 Coliadinae)を指す。これも同じく、「ぷてろんワールド」を見てみると、シロチョウ科コバネシロチョウ亜科(Dismorphiinae)のトラフトンボマダラ亜族(Subtribe Mechanitinaのページに載る、

コバネシロチョウ亜科トラフトンボマダラ亜族トンボシロチョウ属トンボシロチョウ Patia orise orise(そこに載る画像はペルー・ボリビアでの採集個体)

ではなかろうか?

このトンボシロチョウ! 上のトンボマダラと、私にはちょっと見、区別がつかぬほど、激似でだぞ!

 

 斯く論じ來れば、或は讀者の心中に次の如き疑が起るかも知れぬ。卽ち生存競爭に於て、適者の勝つことは素より當然であるが、保護色・警戒色・擬態の如きは、或る程度まで發達した上でなければ、全く功のないものである。例へば蜂と誤られて鳥の攻擊を免れるには、既に餘程蜂に似て居なければならず、木の葉に紛れて鳥の目を忍ぶには、既に餘程木の葉に似たものでなければならぬが、さてこの程度までは如何にして進んで來るか、この程度に達する前は孰れの個體も同樣に鳥類に攻められるから、この方向へ向うては、何の淘汰もない理窟であるとの考は、誰の胸にも浮ばざるを得ぬ。之は實際、自然淘汰の現狀を胸中に畫くに當つて最も困難を感ずる點で、今日生物進化論に對して異議を唱へる生物學者は、最早一人もないに拘らず、自然淘汰説に就いては尚種々の議論の絶えぬのは、一はこの點に基づくことである。倂しなら、善く考へて見るに、この點は決して自然淘汰説に反對する程のものではない。なぜといふに、攻める方の鳥も決して初めから今の通り目の鋭いものではなく、漸々進化して今日の有樣までに發達して來たもの故、その昔に溯れば、蜂と他の昆蟲とを識別し、枝にとまつて居る蝶と木の葉とを識別する力も隨分不完全で、餘程違つたものでなければ、判然區別の出來ぬ時代もあつたに相違ない。また生存競爭に如何なるものが勝つかと考へて見るに、各個體が皆勝たなければその種屬は勝たぬといふ理窟はない。例へば甲乙の二團體が競爭するに當つても、個體間の勝敗が區區である[やぶちゃん注:「くくである」。ばらばらで定則性が殆んど認められず、まちまちである。]ため、孰れが勝つか、孰れが負けるか、解らぬやうな場合にも、若し全體の統計を取つて見て、甲の方が僅ながらも常に多く勝つて居る形跡があつたならば、長い間には終に甲が勝を占めるに定まつて居る。人間社會の競爭に於ても、理窟は全くこの通りであるから、凡そ時の大勢に通ずるには、先づ統計によらなければならぬ。斯かる次第故、鳥類の目も今日程に發達せぬ頃に一種の蝶があつたと假定し、その蝶の個體總數を聊[やぶちゃん注:「いささか」。]でも木の葉に多く似た方と、少し似た方との二組に分ち、同一時間内に各組の鳥に攻められる數を統計に取つて見て、聊でも似たものの方が鳥に攻められることが少かつたならば、之が既に一種の淘汰である。而して如何に不完全な淘汰でも、代々同一の方向へ進めば、その結果は漸々積り重なつて、終には著しいものになるべき筈であるから、この方法で木の葉に似た蝶が出來るのも、素より有り得べきことといはなければならぬ。かやうに論じて見れば、保護色の始でも、警戒色の始でも、自然淘汰説によつては到底説明が出來ぬといふ性質のものでは決してない。今日生物學を修めながら、尚自然淘汰の働に就いて疑を挾む人等は、恰も戰爭を見に行つて一人一人の兵卒の勝敗のみに注意し、兩軍の全部の形勢を察せぬのと同樣な誤に陷つて居るのである。

 

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