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« 冷たい夜   中原中也 | トップページ | 老いたる者をして ―― 「空しき秋」第十二   中原中也 »

2018/05/22

冬の明け方   中原中也

 

    

 

殘んの雪が瓦に少なく固く

枯木の小枝が鹿のやうに睡い、

冬の朝の六時

私の頭も睡い。

 

烏が啼いて通る――

庭の地面も鹿のやうに睡い。

――林が逃げた農家が逃げた、

空は悲しい衰弱。

     私の心は悲しい……

 

やがて薄日が射し

靑空が開(あ)く。

上の上の空でジュピター神の砲(ひづつ)が鳴る。

――四方(よも)の山が沈み、

 

農家の庭が欠伸(あくび)をし、

道は空へと挨拶する。

     私の心は悲しい……

 

[やぶちゃん注:「殘んの雪」「のこんのゆき」。「殘んの」は古語の連体詞で「残りの」の転訛したもの。「残っている」の意。

「林が逃げた農家が逃げた」はサイト「中原中也・全詩アーカイブ」の本詩篇の解説がよい。『これは、中也がよく使うレトリックの一つ』で、『林が逃げた、というのは、林がどこかに行ってしまった、というのではなく』、『林もまだ目覚めておらず』、『そこにあるのだけれど、ないのも同然という、不在感を表現したもの』であり、最終連の『農家も、同様に解すことができ』、『林も農家も』、『まだ、冬の朝に、目覚めていないので』あるとされておられる。

「ジュピター神の砲(ひづつ)が鳴る」遠い寒雷の雷鳴と採ってもよい。それを天空神ジュピターJupiter:ローマ神話の最高神ユピテル(ラテン語:Jūpiterの英語名。気象現象(特に雷)を司る神)が「太陽」を打ち出した火砲の砲弾にをかく言ったもの(雷鳴とは敢えて採らない)だとどこかで思っていた。いや、今もそう思っている、と言い添えておく。]

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