フォト

カテゴリー

サイト増設コンテンツ及びブログ掲載の特異点テクスト等一覧(2008年1月以降)

The Picture of Dorian Gray

  • Sans Souci
    畢竟惨めなる自身の肖像

Alice's Adventures in Wonderland

  • ふぅむ♡
    僕の三女アリスのアルバム

忘れ得ぬ人々:写真版

  • 縄文の母子像 後影
    ブログ・カテゴリの「忘れ得ぬ人々」の写真版

Exlibris Puer Eternus

  • 吾輩ハ僕ノ頗ル氣ニ入ツタ教ヘ子ノ猫デアル
    僕が立ち止まって振り向いた君のArt

SCULPTING IN TIME

  • 熊野波速玉大社牛王符
    写真帖とコレクションから

Pierre Bonnard Histoires Naturelles

  • 樹々の一家   Une famille d'arbres
    Jules Renard “Histoires Naturelles”の全挿絵 岸田国士訳本文は以下 http://yab.o.oo7.jp/haku.html

僕の視線の中のCaspar David Friedrich

  • 海辺の月の出(部分)
    1996年ドイツにて撮影

シリエトク日記写真版

  • 地の涯の岬
    2010年8月1日~5日の知床旅情(2010年8月8日~16日のブログ「シリエトク日記」他全18篇を参照されたい)

氷國絶佳瀧篇

  • Gullfoss
    2008年8月9日~18日のアイスランド瀧紀行(2008年8月19日~21日のブログ「氷國絶佳」全11篇を参照されたい)

Air de Tasmania

  • タスマニアの幸せなコバヤシチヨジ
    2007年12月23~30日 タスマニアにて (2008年1月1日及び2日のブログ「タスマニア紀行」全8篇を参照されたい)

僕の見た三丁目の夕日

  • blog-2007-7-29
    遠き日の僕の絵日記から
無料ブログはココログ

« 冬の長門峽   中原中也 | トップページ | 正午    丸ビル風景   中原中也 »

2018/05/25

米子   中原中也

 

    米  子

 

二十八のその處女(むすめ)は、

肺病やみで、腓(ひ)は細かつた。

ポフラのやうに、人も通らぬ

步道に沿つて、立つてゐた。

 

處女(むすめ)の名前は、米子と云つた。

夏には、顏が、汚れてみえたが、

冬だの秋には、きれいであつた。

――かぼそい聲をしてをつた。

 

二十八のその處女(むすめ)は、

お嫁に行けば、その病氣は、

癒るかに思はれた。と、さう思ひながら

私はたびたび處女(むすめ)をみた……

 

しかし一度も、さうと口には出さなかつた。

別に、云ひ出しにくいからといふのでもない

云つて却つて、落膽させてはと思つたからでもない、

なぜかしら、云はずじまひであつたのだ。

 

二十八のその處女(むすめ)は、

步道に沿つて、立つてゐた、

雨あがりの午後、ポプラのやうに。

――かぼそい聲をもう一度、聞いてみたいと思ふのだ……

 

[やぶちゃん注:角川文庫「中原中也詩集」年譜によれば、昭和一一(一九三六)年十二月に三笠書房発行の雑誌『ペン』に発表したもの。これも創作から投稿・編集・発行に至る二ヶ月ほどのタイム・ラグから考えて、長男文也の急逝以前に創作されたものであろう。

「米子」「よねこ」。

「腓(ひ)」訓で「こむら」。脹脛(ふくらはぎ)、足の脛(すね)の後ろ側の膨らんだ部分のこと。]

« 冬の長門峽   中原中也 | トップページ | 正午    丸ビル風景   中原中也 »