朝鮮女 中原中也
朝 鮮 女
朝鮮女(をんな)の服の紐
秋の風にや縒(よ)れたらん
街道を往くをりをりは
子供の手をば無理に引き
額顰めし汝(な)が面(おも)ぞ
肌赤銅の乾物(ひもの)にて
なにを思へるその顏ぞ
――まことやわれもうらぶれし
こころに呆(ほう)け見ゐたりけむ
われを打見ていぶかりて
子供うながし去りゆけり……
輕く立ちたる埃(ほこり)かも
何をかわれに思へとや
輕く立ちたる埃かも
何をかわれに思へとや……
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[やぶちゃん注:最終行の中黒大十一点のリーダーはママ。「をんな」のルビは「女」のみに附される。
「額顰めし」「ひたひ(ひたい)/しかめし」と読む。
「肌赤銅」「はだ/しやくどう(しゃくどう)」。]