大和本草卷之八 草之四 海藻類 海苔(アヲノリ)
【外】
海苔 綠色如亂絲生海泥中閩書出タリ
○やぶちゃんの書き下し文
【外】
「海苔(アヲノリ)」 綠色。亂〔るる〕絲のごとし。海泥の中に生ず。「閩書〔(びんしよ)〕」に出でたり。
[やぶちゃん注:本電子化の最初の私の注で記しているが、そろそろ再掲しておくと、この「外」というのは、本書が主に拠るところの李時珍の「本草綱目」には載せないが、「外」(ほか)の中国の本草書には載る種(対象物)という謂いである。
さて、「海苔(アヲノリ)」という和名の種は存在しない(アオノリ属という属名としてはかつては存在し、現在でも使用されており、人によっては旧アオノリ属とも、アオサ属のシノニムとする場合もある。しかしどうも今もあるとした方がいいような気がする。後述する)。「あおのり」は「青海苔」で、日本に於いて食用として利用される数種類(科レベルで異なる)の海藻の総称である。但し、短いながら、ここに書かれた、藻体が全体に緑色を呈し、乱れた糸のような形状をなす、海の泥が混じったような浅瀬(河口附近とも読める。とすれば、汽水域でも植生出来る海藻と読める)に植生する海藻としての「青海苔」となると、これはもう、
緑藻植物門アオサ藻綱アオサ目アオサ科Ulvaceae のアオサ属スジアオノリUlva
prolifera(以上はBISMaL(Biological
Information System for Marine Life)に従ったが、前に述べた通り、アオノリ属スジアオノリ Enteromorpha prolifera はシノニムとされる。しかし問題がある。後述)
である。田中次郎著「日本の海藻 基本284」(二〇〇四年平凡社刊)によれば(なお、田中先生は、Enteromorpha proliferaで記載されておられ、先生は同じ仲間のウスバアオノリ(Enteromorpha linza)の記載で、『以前はアオサ属に所属していたが、藻体の基部が管状なのでアオノリ属とされる』という記述が出てくる。これは寧ろ、アオノリ属は旧なのではなく、新たにアオノリ属が提唱されたと読める。或いはアイソザイムやDNA解析で十四年間のうちに元に復してアオサ属に戻されたのか? ちょっと不思議である)日本各地に分布し、生育場所は『潮間帯の岩や海藻の上』で、藻体の長さは十~三十センチメートル、幅は〇・五~一センチメートル。『河口付近の淡水が混じる海域に生育することが多』く、『直径や長さ、枝分かれの数など』、『個体ごとの形態の変異が大きい。ボウアオノリ』(Ulva intestinalis)『に似るが、藻体全体、とくに下部からの小枝が多く出ていることが識別点である』。『本種はアオノリのなかでも最も美味とされ、食用として重要種である。徳島県吉野川や高知県四万十川での養殖が有名である』とある。
「閩書」明の何喬遠撰になる福建省の地誌「閩書南産志」。]
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