大和本草卷之八 草之四 雞冠菜(トサカノリ)
【和品】
雞冠菜 順和名抄ニ出タリ其形雞冠ノ如シ食スヘシ紅
色也附石而生
○やぶちゃんの書き下し文
【和品】
「雞冠菜(トサカノリ) 順が「和名抄」に出でたり。其の形、雞冠〔(とさか)〕のごとし。食すべし。紅色なり。石に附きて生ず。
[やぶちゃん注:刺身のツマでお馴染みの、紅藻植物門紅藻綱スギノリ目ミリン科トサカノリ属トサカノリMeristotheca
papulosa。平凡社刊の田中二郎解説の「基本284 日本の海藻」によれば、『Meristotheca は「分かれた+莢(さや)」』、『papulosa
は「乳頭状突起のある」』の意(本邦では同属は二種が知られる)で、『先端の枝分かれ形が、ニワトリの鶏冠』(とさか)『のようなのでこの名がある。平面的に広がる肉質のからだは、生長すると折れやす』くなり、同時に『瘤(こぶ)状の突起がたくさん出る』ようになることや、固体変異がかなりあり、時にかなり特異な形状を呈したりし(後の鈴木雅大氏の解説を参照)、『老成した個体と若い個体で』も『形態がいちじるしく異なることがあ』って、和名のように『鶏冠を連想させる形態は若い時期のものである』とある。『生体は紅色であるが、熱湯を通せば、赤い色素が変成して、葉緑素の色が緑色として残る。さらにそれを水にさらすと、すべての色が溶け出して白くなる。これらを乾燥させたものを組み合わせて、「赤トサカ」、「青トサカ」、「白トサカ」の海藻サラダ』三『点セットとして売られている』とある(後の鈴木氏の説明によれば、現在の三色サラダのそれは『海外から輸入したものが主となっているよう』だとある)。また、『煮出して冷やしかためたものは、「トサカコンニャク」と呼ばれて食用になっている』とある。また、サイト「生きもの好きの語る自然誌」の鈴木雅大氏記載の「トサカノリ」も参照されたい。そうか、もう、これも、日本ではレッド・リストか。
『順が「和名抄」に出でたり』ここ(国立国会図書館デジタルコレクションの「和名類聚抄」(寛文七(一六六七)板)の当該頁画像)。訓読翻刻しておく。
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雞冠菜(トリサカノリ) 楊氏漢語抄に云はく、「雞冠菜」【土里佐加乃里。式文に「坂苔」を用ふ。】。
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