大和本草卷之八 草之四 鳥ノ足 (イロロ)
【和品】
鳥ノ足 一根ニ枝多シ葉形如海松只甚薄褐色
鋒兩又アリ煮テ可食
○やぶちゃんの書き下し文
【和品】
「鳥ノ足」 一根に枝多し。葉の形、海松〔(ミル)〕のごとし。只〔(ただ)〕、甚だ薄くして褐色なり。鋒〔(さき)〕に兩〔つの〕又〔(また)〕あり。煮て食ふべし。
[やぶちゃん注:益軒の形状解説及び料理法と、ぼうずコンニャク氏の「市場魚貝類図鑑」の「イロロ」のページに、『高知県宿毛市では春にとり』、『乾かして年間を通して食べる。とれる量が少なく食用にする習慣のない愛媛県まで取りに行くこともあるという』。『大分県国東市国東町では採取し、乾燥させて市販されている。これを「とりのあし」という』。『また室町時代の「毛吹草」にもこの言葉があり、この点でもイロロ=「とりのあし」というのは面白い』とあって、「毛吹草」の作者江戸初期の俳人松江重頼(しげより 慶長七(一六〇二)年~延宝八(一六八〇)年)は京都の商人であり、本種の食文化が主に西日本であるように思われること、さらに大分県国東市国東町で本種を食べる習慣が現在もあることが、生涯の殆どを福岡で過ごした益軒と強い親和性を示していると感じられることなどから、これは、
褐藻植物門褐藻綱イシゲ目イシゲ科イシゲ属イロロ Ishige foliacea
と同定してよい。田中二郎解説の「基本284 日本の海藻」によれば、イロロは『春に生育』し、『日当たりのよい潮間帯中部の岩上にイシゲ』(イシゲ属イシゲ Ishige okamurae)『やイワヒゲ』(褐藻綱シオミドロ目カヤモノリ科イワヒゲ属イワヒゲ Myelophycus simplex)『とともに群生する。基部は円柱状で大変に細』く、『葉状部は帯状』を成し、『二叉分岐する。潮が引いて乾燥している状態では真っ黒であるが、水に浸かっているときは濃い褐色をしている。時にイシゲの上に着生することがあり、以前はイシゲと同種ではないかといわれたことがあった。乾燥させて刻んで食する。乾燥させても数日生きている。和名は志摩地方の方言に由来する』とある。なお、ぼうずコンニャク氏は先のページの解説で、『関東では「とりのあし」はユイキリのこと』を指すとも述べられている。紅藻綱テングサ目テングサ科ユイキリ属ユイキリ Acanthopeltis japonica の形状はしかし、益軒の解説とは全く一致しないし、そこに書かれたように食することは考えにくい代物である(田中二郎氏の「基本284 日本の海藻」によれば、ユイキリは寒天原藻の材料となるが、他のテングサ類に比すと質が劣るとある)。
「海松〔(ミル)〕」既出の緑藻植物門アオサ藻綱イワズタ目ミル科ミル属ミル Codium
fragile。]

