大和本草卷之八 草之四 奥津海苔(〔オクツ〕ノリ) (興津海苔(オキツノリ)の誤り)
【和品】
奥津海苔 廣六七分或七八分長五六七寸許頗
厚可食紫色水ニ洗ヒ曝日則變爲黄白色駿州奥
津ニアリ
○やぶちゃんの書き下し文
【和品】
「奥津海苔(〔オクツ〕ノリ)」 廣さ、六、七分、或いは、七、八分。長さ、五、六、七寸許〔(ばか)〕り。頗〔(すこぶ)〕る厚し。食ふべし。紫色なり。水に洗ひ、日に曝〔(さら)さば〕、則ち、變じて、黄白色と爲る。駿州奥津にあり。
[やぶちゃん注:二箇所の「奥津」はママであるが、「興津」(現在の静岡県静岡市清水区興津(おきつ)。ここ(グーグル・マップ・データ)。清水港の北直近)の誤りである。古くから海産物で知られる。
紅藻綱カギノリ目オキツノリ科オキツノリ属オキツノリ Ahnfeltiopsis flabelliformis
である。。鈴木雅大氏のサイト「生きもの好きの語る自然誌(Natural
History of Algae and Protists)」のオイキツノリのページで藻体を見られたい。田中次郎著「日本の海藻 基本284」によれば、興津だけでなく、日本各地潮間帯下部やタイド・プールにしばしば優先種として繁茂する。高さは三~八センチメートル、茎幅は一・五~二ミリメートルで、一枚一枚は『平面状に広がるが、それらが重なり合って半円球状になって生育して』おり、『暗紅色で』、『規則的に二叉分枝する』とある。因みに、形の良さから、刺身のツマとして使われることはあるが、現行では、主に質が固いために食用としては認知されていない。]
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