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2018/07/16

進化論講話 丘淺次郎 第十七章 變異性の研究(四) 四 周圍の色による變異

 

      四 周圍の色による變異

 

Firesaramandora

[斑紋性山椒魚]

[やぶちゃん注:底本の国立国会図書館デジタルコレクションの画像をトリミングし、補正して用いた。以下も同じ。]

 

Hanmonseisansyouuoheni

[山椒魚の變異

(右から)

黑い土の上で養つたものとその子

黃色の土の上で養つたものとその子]

 

 ヨーロッパに普通な山椒魚の一種に、黃と黑との鮮明な斑を有するものがある。大きさは我が國の「いもり」よりは稍大きく、常に陸上に棲んで胎生する。昔から火事を消す不思議な力があると云い傳へられたために、俗語では「火の山椒魚」といひ、また學名は漢語に譯すれば、斑紋性山椒魚となる。先年或る大學の教授が洋行の歸りに持つて來たとて、二三の新聞紙上に煩悶性山椒魚[やぶちゃん注:ママ。]と書かれたのは之であつた。さて、この動物に就いてカンメレルの行ふた頗る面白い實驗がある。普通には體の表面の黑い所と黃色い所とが約半分づゝ位であるが、幼い時から之を眞黑の土の上で養つて置くと、生長するに隨つて、黑い部分が段々增し、黃色い所が次第に減じて、終には普通のものに比して著しく黑色の勝つたものに成る。また之に反して、幼い時から黃色い土の上に飼つて置くと、黑い所が段々減じて著しく黃色の勝つたものに成つてしまふ。もと同一のものを、一方は黑い土の上に、一方は黃色い土の上に飼ふたために、かやうな相違が生じたのであるから、これは外界からの影響を受けて後天的に現れた變異であるが、更に之を繁殖せしめて、第二代目には如何なるものが出來るかと實驗して見た所が、黃色くなつた親から生れた子を、黃色い土の所で育てたら、生長するに隨つて益[やぶちゃん注:「ますます」。踊り字はない。]黃色が增し、終には黑い所は殆どなくなつて、略全身黃色いものが出來た。若し人爲的に黃色に仕立てた親の性質が全く子に傳はらぬものとすれば、子の代に成つても、やはり親と同一の出發點から、變化し始めねばならぬ故、一代の間に外界から同一の影響を受けて、親と同じ程度までに黃色くなることは當然であるが、親よりも一層黃色の進んだものと成るべき理窟はない。かやうに子の方が親よりも一層黃色になつたのは、如何に考へても親の黃色い性質が幾分か子に傳はり、その上に子が更に親と同樣の變化をしたから、兩方が積み重なつて生じた結果と見倣すの外はないであらう。

[やぶちゃん注:底本は改行となっているが、次の一字下げがない。下げておいた。

「斑紋性山椒魚」田原真人サイト「エピジェネティクス進化論の「ポール・カンメラー(Paul Kanmererによれば、この実験で用いられたのは『サラマンドラ・マキュロサ・フォルマ・ティピカ』とある。Salamandra maculosa forma tipica と思われるが、Salamandra maculos は両生綱有尾目イモリ亜目イモリ科サラマンドラ属ファイアサラマンダー Salamandra salamandra のシノニムであり、海外サイトでは、Salamandra tipica と記載するものもある。田原氏の解説には、『変種サラマンドラ・マキュロサ・フォルマ・ティピカは、黒地に不規則な黄色の斑点がある』。『カンメラーが、この種の一群は黒土の上で育て、一群は黄土の上で育てたところ』、六『年目に完全な成熟期に達したときに、体色が適応的に変化した』。『カンメラーは、さらに、黒土に体色を適応させた親から生まれた子を黒土の上で育てた。その結果、子供は、背中の正午線に沿って一列に並ぶ黄色の斑点を持って生まれ、この斑点は次第に小さくなって消失した』。『また、一方で、黄色に体色を適応させた親から生まれた子を黄土の上で育てた。その結果、子供は、対称的に』二『列に並ぶ黄色の斑点を持って生まれ、その斑点が二本の幅の広い黄色の縞になった。そして』、三『代目になると「一様にカナリア色」になった』とある。広義の「ファイアサラマンダー(火蜥蜴)」については、ウィキの「ァイアサラマンダー」を参照されたい。

「昔から火事を消す不思議な力があると云い傳へられた」株式会社タンタカの作成になる不思議のチカラの「火の精霊サラマンダー。古代ギリシャから伝わる精霊によれば、

   《引用開始》[やぶちゃん注:見出しの画像記号を「*」に代えた。]

16世紀のヨーロッパで、火、水、空気(風)、土の「四大元素」を司る「四大精霊」がいると提唱したのは、錬金術師で医師、化学者で神秘思想家のパラケルススという人でした。

この四大精霊のうち、火の精霊は「サラマンダー」という名前で呼ばれています。

サラマンダーとは何なのでしょうか。じつは現実のサラマンダーとは、実際に地球上に生息する両生類のうち有尾類の生物のことなのです。

*サラマンダーはサンショウウオ?

日本では、この生き物のサラマンダーを「サンショウウオ」とすることが多いようですが、実際にはイモリの仲間も区別しないでサラマンダーと呼ばれるのだそうで、“火蜥蜴”と称される「ファイアーサラマンダー」は体長15cmから25cmくらいのイモリ科の生物です。

それではこの生き物のサラマンダーが、どうして火の精霊になったのでしょうか。

*火のドラゴン・サラマンダー

古代ギリシャでは、サラマンダーは小型のドラゴンに近い爬虫類であると考えられていました。ドラゴン(龍)は洋の東西を問わず、火や風、水など四大元素を操る存在なのですが、口から火を吐くドラゴンといったように、火とは特に関係性が近かったのかも知れません。

特にサラマンダーは火の中でも生きることができるとされ、古代ギリシャ人やその哲学と魔術的思想を受け継いだヨーロッパの錬金術師たちは、サラマンダーを火の元素とイコールに考えるようになりました。

一方で北の古代ヨーロッパ、ケルト人やチュートン人、デーン人の伝承に登場する火を吐くドラゴン「ファイアー・ドレイク」も、溶岩やマグマの中を泳ぐことができ、火の精霊と同一視されていたそうですから、古代世界では火の元素の象徴であるドラゴンが、やがて実在するサラマンダーという生き物を象徴的に捉えていったのかも知れません。

*サラマンダーは火を操る存在??

先ほどご紹介した実際にヨーロッパに生息するファイアーサラマンダーは、決して火の中でも平然と活動できるというわけではなく、また黒と黄色の皮膚の身体が火のように真っ赤になるというわけでもありません。

なぜこういう名前がついたのかというと、ファイアーサラマンダーは中が空洞になった樹木の丸太の中で冬眠するという習性があり、人間がその丸太を焚き火などで火にくべるとファイアーサラマンダーが慌てて這い出し、その様子がまるで火の中から出て来たように見えたからだということです。

後にパラケルススは、サラマンダーを含めた四大精霊はそれぞれ人間の姿に似ていて、話し方や振る舞いも人間に近いとしています。しかしそれよりも遥か古代のギリシャでは、例えば哲学者のアリストテレスがサラマンダーとは「火の中でも燃えない動物」であり「火の中を歩いて、火を消す」とも言っていて、火を怖れる古代世界の人びとにとってサラマンダーは火を操る存在と認識していたのでした。

   《引用終了》

とあることで、この「火を消す」という奇怪な伝承の意味が判る。なお、ファイアサラマンダーは有毒な液体を噴射することでも知られるウィキの「ァイアサラマンダー」によれば、『後頭部の両側と、背中の正中線にそって』二『列に並んで』、『顆粒状の毒腺がある。ファイアサラマンダーの毒腺の大きさは有尾類中最大であ』り、『オスはメスよりやや体が小さく、特に繁殖期では総排泄孔がより膨れている』。『有尾類の多くが外敵からの防御のため』に『皮膚から有毒あるいは刺激性の分泌物を出す。これの毒は表皮につく雑菌や寄生虫を防ぐ役にも立っているらしい。ファイアサラマンダーの場合は サマンダリン』(SamandarinC19H31NO2)・SamandaridinC21H31NO)・SamanderonC22H31NO2)と複数種存在する)『というアルカロイド系の神経毒を持つ。これは全ての脊椎動物に対して有効な、過呼吸を伴う筋肉の痙攣と高血圧をもたらす毒物である』。『毒腺は後頭部の両側にある耳腺と背部の正中線に沿った部分に集中している。ファイアサラマンダーの毒腺は骨格筋に囲まれており、その力で乳白色の毒液を高速』(秒速三メートル)『で正確に相手を狙って噴射することができる。ここから発射する毒液が炎のように見えた為、ファイアーサラマンダーと呼ばれるようになったとも考えられている。このような技のため、ファイアサラマンダーは他種と比べて』、『ごく少量の毒で身を守ることができるようだ。有尾類の毒はコレステロール派生物であり、生産に大量のエネルギーを要し、エネルギー貯蔵の役割も果たしているという説もある』とある。

「カンメレル」ウィーン生まれの世界的に知られた遺伝学者で、獲得形質の遺伝を主張したラマルク説の支持者であったパウル・カンメラー(Paul Kammerer 一八八〇年~一九二六年)。冒頭既出既注。]

 

 以上の如き實驗は、今日の所まだ數多くはないが、たとひ少數なりともかやうな確な實驗がある以上は、親が一生涯の間に外界からの影響を蒙つて新に獲た性質は、少くも、或る場合には子に傳はるものと斷定しなければならぬ。

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