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2018/07/14

和漢三才圖會第四十一 水禽類 剖葦鳥(よしはらすずめ) (ヨシキリ)

Yosiwarazuzume

よしはらすゝめ 蘆虎【兼名苑】

剖葦鳥

        蘆原雀葭剖

        蘆鶯【以上俗称】

 

本綱【鷦鷯之下】剖葦似雀而青灰斑色長尾好食葦蠧亦鷦

鷯之類也倭名抄【兼名苑注】云巧婦鳥好割葦皮食中虫亦名

蘆虎

△按剖葦鳥【俗云蘆原雀】狀似倭𪄙大如雀青灰斑色長尾

 在田澤蘆葦中好食葦中虫其鳴喧聲高亮也天晴

 風静則愈群鳴蓋鷦鷯【-名巧婦鳥】與剖葦不一種【本草及和名抄

 爲一種非也】

 

 

よしはらすゞめ 蘆虎〔(ろこ)〕【「兼名苑」。】

剖葦鳥

        蘆原雀(よしはらすゞめ)

        葭剖(よしきり)

        蘆鶯(〔よし〕うぐひす)

        【以上、俗称。】

 

「本綱」【「鷦鷯〔(しやうれう)〕」の下。】、剖葦は雀に似て、青灰、斑色。長き尾。好んで葦の蠧〔(きくひむし)〕を食ふ。亦、鷦鷯の類ひなり。「倭名抄」【「兼名苑」の注に。】云はく、『巧婦鳥、好んで葦の皮を割〔(き)り〕て中の虫を食ふ。亦、「蘆虎」と名づく。』〔と〕。

△按ずるに、剖葦鳥は【俗に「蘆原雀」と云ふ。】狀、倭の𪄙〔(うぐひす)〕に似て、大ないさ、雀のごとし。青灰、斑色、長き尾。田澤の蘆-葦〔(あし)〕の中に在りて、好んで葦の中の虫を食ふ。其の鳴くこと、喧(かまびす)しき聲、高亮〔(かうりやう)〕なり。天、晴〔れて〕、風、静かなるときは、則〔ち〕、愈々、群鳴す。蓋し、鷦鷯【-名「巧婦鳥」。】剖-葦(あしはらすゞめ)と一種ならず【「本草」及び「和名抄」、一種と爲〔すは〕非なり。】。

[やぶちゃん注:鳴き声が特徴的な(私は姿も鳴き声も好き)、鳥綱スズメ目スズメ亜目スズメ小目ウグイス上科ヨシキリ科 Acrocephalidae のヨシキリ類(鳴き声と動画は例えばYou Tube ここ(オオヨシキリ)やここ(コヨシキリ))。本邦では、

ヨシキリ科ヨシキリ属オオヨシキリ Acrocephalus arundinaceus

ヨシキリ属コヨシキリ Acrocephalus bistrigiceps

の二種が夏鳥として渡って来る。両種とも背面は淡褐色で腹面は黄白色、オオヨシキリはおもに水辺のヨシ原など、コヨシキリは低地から山地の草原に棲息し、御椀形の巣を作る。いずれも東アジアで繁殖し、冬は南方へ渡る。本州中部以南に多いのはオオヨシキリで、繁殖期にはヨシ(単子葉植物綱イネ目イネ科ダンチク(暖竹)亜科ヨシ属ヨシ Phragmites australis:「アシ」は同一種の異名で、「葦」「芦」「蘆」「葭」も狭義には総て同一種を指す)などに止まって「ギョッ、ギョッ」と囀ることから、「行々子(ギョウギョウシ)」の異名を持つ。個人サイト「お気楽バーダー」の「ヨシキリ」の写真が二種ともにあり、よい。カッコウ(カッコウ目カッコウ科カッコウ属カッコウ Cuculus canorus)によく托卵される。ウィキの「カッコウ」に、自分より大きいカッコウの雛に餌を与えるオオヨシキリの写真が載る。荒俣宏「世界博物大図鑑」の第四巻「鳥類」(一九八七年平凡社刊)の「ヨシキリ」の項によれば、『属名アクロケファルスはギリシア語で』『〈とがった akron kephalē〉のこと』でヨシキリ類の『頭頂の羽が突きでているためである』とある。

「兼名苑」唐の釋遠年撰の字書体の語彙集であるが、佚して伝わらない。但し、本邦の「本草和名」「和名抄」「類聚名義抄」に多く引用されてある。

「蠧〔(きくひむし)〕」これは狭義の鞘翅(コウチュウ)目多食(カブトムシ)亜目 Cucujiformia 下目ゾウムシ上科キクイムシ科 Scolytidae のキクイムシ類ではなく、ヨシなどの茎に寄生して食害する虫類(或いはその幼虫)を指している。

「鷦鷯」先行する記載では良安は本邦種としてはこれに「みそさざい」を当てている。「さざい」は、「小さい鳥」を指す古語「さざき」が転じたものであるが、狭義には現在、これはスズメ目ミソサザイ科ミソサザイ属ミソサザイ Troglodytes troglodytes を指す。先行する鶖(とつしう)〔ウ〕」の「鷦鷯」の私の注を参照されたい。

𪄙」「鶯」の異体字。スズメ目ウグイス科ウグイス属ウグイス Horornis diphone

「高亮」原義は「志高く行いの正しいこと」であるが、ここは「声が高く澄んでいること」の意。

『蓋し、鷦鷯【-名「巧婦鳥」。】剖-葦(あしはらすゞめ)と一種ならず【「本草」及び「和名抄」、一種と爲〔すは〕非なり。】』先に掲げた荒俣宏「世界博物大図鑑」の「ヨシキリ」の項に(ピリオド・コンマを句読点に代えた)、『ヨシキリの』古い『中国名は相当に困難である』(現代中国語では「苇莺」で「葦鶯」である)。『《本草綱目》にある鷦鷯(しょうりょう)(ミソサザイ)』(先に挙げたミソサザイ Troglodytes troglodytes)『の項では、その』一『種としている〈剖葦〉を《爾雅》』(じが:中国最古の辞書。著者には諸説あり未詳。全三巻。紀元前 二〇〇年頃の成立)より引用紹介している(ただし『《爾雅》原文では〈』「」『の一種〉となっている)』(「鷯」は「たうりやう(とうりょう)」と読んでおく)。『しかし一般に、ヨシキリは中国の鷦鷯(一名、巧婦鳥)それ自身であるとの見解が江戸時代から普及していた。そのため』、それに意を唱えて良安はここで『両者を別種としている』のであるとある。さらに、『日本でつくられた』小野蘭山による「本草綱目」の『注釈書《重修本草綱目啓蒙》は、李時珍による剖葦の引用を誤りとし、《爾雅》の原文に〈鷯〉とあり、明らかに〈鷦鷯〉とは別種だ、としている』とある。また荒俣氏は続けて『《甲子夜話》の著者松浦』(まつら)『静山は、巧婦鳥の巣を実見した結果、それが蘆花でできており、精細巧緻なところから、俗名〈女匠〉〈巧婦〉(巣づくりの巧みな鳥)が出たと解釈している』(「甲子夜話」の当該条情報は、暇な折りに探して追記する【2018年8月9日追記:これは「甲子夜話卷之五十七」の「巧婦鳥」であることが判明した。】)。『また、南都では高い木に巣をつくるところから〈高見(たかみ)鳥〉という』とある。但し、「保草綱目」では『鷦鷯を巧婦鳥とよぶのは、鳩は性(セックス)が稚拙であり、鷦は性が巧みだからであるとして』おり、『また、《爾雅》では〈桃蟲(巧婦鳥の別称)は鷦(しょう)なり、その雌を鷯という〉と述べ、鷦鷯を雌雄』一『対の名としている』とある。以上の「本草綱目」(後の「爾雅」もそこに引用されているが、そこでは「鷯」は「」と表記されてある。因みに、この「」は「鷯」の異体字ではないものの、中文の字書サイトには「鷦鷯の雌」或いは「鷦鷯の別称」と書かれてある)の原文は「本草綱目」巻四十八の「禽之二」の「巧婦鳥」である。

   *

巧婦鳥【「拾遺」。】

釋名鷦鷯【「詩疏」。】桃蟲【「詩經」。】蒙鳩【「荀子」。】女匠【「方言」。】黃脰草【時珍曰、按、「爾雅」云、桃蟲、鷦。其雌曰。揚雄「方言」云、桑飛自關而東謂之巧雀、或謂之女匠。自關而西謂之襪雀、或謂之巧女。燕人謂之巧婦。江東謂之桃雀、亦曰有母。鳩性拙、鷦性巧、故得諸名。】

   *

ともかくも、良安は自分が既に同定比定している「鷦鷯」=スズメ目ミソサザイ科ミソサザイ属ミソサザイ Troglodytes troglodytes と、この「剖葦鳥」=スズメ目スズメ亜目スズメ小目ウグイス上科ヨシキリ科 Acrocephalidae のヨシキリ類は全くの別種であると主張していることになり、これはすこぶる正当な謂いであることが判るのである。]

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