諸國里人談卷之四 有馬毒水
○有馬毒水(ありまのどくすい)
湯本の南五町ばかりに池あり。此水、毒あり。印(しるし)の卒都婆あり。誤(あやまつ)てこれを飮めば、卽死す。鳥・虫、此水に觸(ふれ)れば、又、死す。よつて「鳥の地獄」・「虫の地獄」と云。すべて、此谷を「地獄谷」といふ也。
[やぶちゃん注:「有馬温泉観光協会」前条で掲げた公式サイト内の「有馬温泉マップ&周辺案内」の「地獄谷」によれば、『瑞宝寺公園から鼓ヶ滝に向かう道路の左側の見過ごしそうなところにあります。愛宕山のふもとではかつて』三『つの穴から温泉が湧き』、『炭酸ガスが発生していました。これに近づいた鳥や虫が死んだため、いつしか土地の人々は鳥地獄、虫地獄、炭酸地獄と呼んでいました』。『今は石の標識だけが残っています』とあり(地図と石の標識の写真有り)、「湯本の南五町」(約五百四十五メートル強)ほどにあった「池」は消失したことが判る。また、鳥や虫が死ぬのは、お定まりの火山性ガスで硫化水素ではなく、多量の二酸化炭素による窒息死であるらしいことが判る。]