甲子夜話卷之四 36 寶曆に林氏自火のときの落首
4-36 寶曆に林氏自火のときの落首
寶曆の頃、林大學頭【諱、信充】宅より失火し、折節西北風強かりしかば大火となり、築地邊まで延燒せしことあり。其時の落書に、
大學が孟子わけなき火を出して
論語同斷珍事中庸
[やぶちゃん注:前条よりもちょっと前の話であるが、その頃は下賤の庶民でさえも、これだけの洒落を言える知識があったという、対称的な話柄として面白い。静山もそれを狙って敢えてここに配しているのである。
「寶曆」一七五一年から一七六四年。
「林大學頭【諱、信充】」林家第四代林榴岡(りゅうこう 天和元(一六八一)年~宝暦八(一七五八)年)。
「孟子わけなき」「申し譯なき」の語呂合わせ。以下同じ。
「論語同斷」「言語道斷」のそれ。
「珍事中庸」「珍事中夭」(「中夭」は災難のことで「思い掛けない災難」の意)のそれ。]
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