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2018/07/08

諸國里人談卷之三 分部火

 

    ○分部火(わけべのひ)

伊勢國安濃津(あのつ)塔世(とうせい)の川上、分部山より、小〔ちさ〕き挑燈ほどなる火、五十も百もー面に出〔いで〕て、縱橫に飛(とび)めぐりて後(のち)、五、六尺ほど、一かたまりになりて、塔世川をくだる事、水より、はやし。又、塔世が浦に「鬼の鹽屋の火」といふあり。此火中(くわちう)には、老嫗(おいたうば)の顏のかたち、ありける。かの川上の火と行合(ゆきあひ)、入〔いれ〕ちがひ、飛(とび)かえりなどして、相鬪(あひたゝか)ふ風情なり。少時(しばらく)して、又、ひとつにかたまり、そのゝち、また、わかれて、ひとつは沖のかたへ飛(とび)、一つは川上へ奔(はしる)なり。

[やぶちゃん注:この話、ネットで検索しても、本書の記載ぐらいしか見当たらない。則ち、怪異の由来譚などが一切失われてしまった古い怪火伝承だと思われる。――分部山(わけべやま)から提灯ぐらいの大きさの小さな火の玉が五十も百も出現し、自由自在に飛び回り、その後、それらが集合して一メートル五十二センチから一メートル八十二センチほどの大きな火の塊りとなって、安濃川の水上を川水よりも速く下って行く。一方、安濃川河口左岸の塔世村の東の海浜「塔世が浦」には、別に「鬼の塩屋の火」と呼ばれる怪火があって、この火の玉(有意に大きいのであろう)の中心には、はっきりと老婆の顔があるのだという(これだけでもキョウワい!)。その「鬼の塩屋の火」が、下って来た川上の「分部の火」と行き合って、互いに無視してかわして素通りしたかと思うと、後戻りして飛び返りなど、複雑に飛び交い、見るからに火球同士が盛んに戦うといった様子を見せる。暫くすると、何と、戦っていた二つの火球が一つに固まって大火球となり、その後、再び、分離し、一つは「塔世が浦」の沖合を目指して飛び去り、一つは安濃川の川上を指し走り去ってしまう――理由が全く語られないだけに真正の怪談として成功している。現地のこの伝承が残っているのなら、是非、採取したいものだ。

「伊勢國安濃津(あのつ)塔世(とうせい)」三重県の旧安濃(あの)郡塔世村(とうせむら)附近。現在の津市中心部の北東、概ね、安濃川の河口左岸に相当する。附近(グーグル・マップ・データ)。

「分部山」不詳。但し、安濃川川上に三重県津市分部の地名が見出せ((グーグル・マップ・データ))その北西域外直近に三重県津市美里町家所に山頂が属する長谷山がある。ここか。標高三百二十一メートル。

「塔世川」安濃川の津市内での旧称。]

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