甲子夜話卷之五 10 人魂を打落して蟾蜍となる事
5-10 人魂を打落して蟾蜍となる事
夏夜に光り物の飛行することあり。世皆人魂と云。これは蟾蜍の飛行するなりとぞ。府の本鄕丸山の福山侯別莊にて、所謂人魂を竹竿にて打落すに、蟾蜍なること幾度も同じ。これより人々疑晴しと云。
■やぶちゃんの呟き
「蟾蜍」「ひきがへる」。本邦固有種である両生綱無尾目アマガエル上科ヒキガエル科ヒキガエル属ニホンヒキガエル Bufo japonicus の亜種アズマヒキガエル Bufo japonicus ormosus。詳しくは「和漢三才圖會卷第五十四 濕生類 蟾蜍(ひきがへる)」の私の注を参照されたい。蟇蛙の怪異は複数の怪奇談集で厭になるほど、注してきた。取り敢えず、最初にそれを纏めた(注では本条にも言及している)「耳囊 卷之五 怪蟲淡と變じて身を遁るゝ事」を見られたい。
「飛行」「ひぎやう(ひぎょう)」。
「本鄕丸山」現在の東京都文京区東京都文京区西片附近。「白山通り」の白山二町目交差点の東側に「丸山福山児童遊園」の名が残る。この南北附近(グーグル・マップ・データ)。因みに、この旧丸山福山町には、かの樋口一葉が住んでいた。
「福山侯」ここには古くは備後福山藩主阿部氏の中屋敷があった。後に一部は旗本の武家屋敷町となるが、私の所持する切絵図でも同書には「阿部伊豫守 中屋鋪」とある。
「人々疑晴し」待って!? 蟇蛙が飛び跳ねるんじゃあなくて、空を飛行するんじゃ、疑いが晴れるどころか、キョワいでしょうが!!!
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