大和本草卷之十三 魚之上 ヲモト (カワムツ或いはヌマムツ)
ヲモト 嵯峨ニアリハヱニ似テ背ニ有斑點爲群水面ニ
ウカブ河ノヨトミニアリ
○やぶちゃんの書き下し文
ヲモト 嵯峨にあり。「ハヱ」に似て、背に、斑點、有り。群を爲して水面にうかぶ。河のよどみにあり。
[やぶちゃん注:桂川水系に棲息し、「ハヤ」類に含まれるか或いは近縁種で、背部に斑点があり、河川の淀みに群れを成している種――「ヲモト」――聴いたことがない。搦め手から攻める。現在まで出現した「ハヤ」類の内で登場したものの、今一つ、バイ・プレイヤーの種の異名を探った。すると、ぼうずコンニャク氏の「市場魚貝類図鑑」の「カワムツ」と「ヌマムツ」の各ページの「地方名・市場名」の欄に、孰れも『アカモト』と『モト』とあるのを発見した。しかも前にも書いたが、
Oxygastrinae
亜科カワムツ属カワムツ Nipponocypris temminckii
Oxygastrinae
亜科カワムツ属ヌマムツ Nipponocypris sieboldii
であるが、後者「ヌマムツ」は実は二〇〇〇年頃までは「カワムツ」と同種とされていたのである。ウィキの「ヌマムツ」によれば、しかし、『カワムツとの交雑がないこと、鱗が細かいこと(側線鱗数』がカワムツは四十六~五十五片であるのに対し、ヌマムツは五十三~六十三片と有意に多い)、『体側の縦帯がやや薄いこと、胸鰭と腹鰭の前縁が黄色ではなく赤いこと』。『カワムツが河川上中流などに住む流水適応型に対し』、『ヌマムツは用水路などの緩やかな流れを好む止水適応型である』こと『などから』、『別種とされ』、二〇〇三年に『新和名「ヌマムツ」が決まった』とあり、学名も新たに作られている。されば、孰れかに限定比定する必要はあるまいが、敢えてこの記載の「背に、斑點、有り」というのを優位に濃い背鰭前縁の赤色斑だったとするならば、これはカワムツである。サイト「日本淡水魚愛護会」の「ヌマムツ
or カワムツ」を見られたい。]