栗本丹洲自筆巻子本「魚譜」 コマイシダイ (イシガキダイ)
コマイシダイ
石ダイノ類
[やぶちゃん注:国立国会図書館デジタルコレクションのこちら(「魚譜」第一軸)の画像の上下左右をトリミングして用いた。標題和名は実は「ゴマイシダイ」の意ではないかと踏んだ。而してイシダイ(スズキ目スズキ亜目イシダイ科イシダイ属イシダイ Oplegnathus fasciatus)に似ていて、黒い丸い「胡麻」状斑点があるとなれば、これはもうあれだと思った。「ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑」の「イシガキダイ」を見よう。側扁し、体高が高く、横から見ると、楕円形に近い点、黒い不定形の斑文があるが、それがやや不明瞭になりつつあるらしい個体であることから見て、スズキ目スズキ亜目イシダイ科イシダイ属イシガキダイ Oplegnathus punctatus の青年魚と同定してよいのではあるまいか。なお、ウィキの「イシダイ」によれば(この部分はウィキの「イシガキダイ」の同様の記載よりもより良い。かなり以前から自然交雑が行われていたことが判るからである)、『自然環境下でのイシガキダイ O. punctatus との交雑も確認されている』。明治から昭和初期にかけて長崎で活動した実業家で水産学者の倉場富三郎(くらばとみさぶろう 明治三(一八七一)年~昭和二〇(一九四五)年八月二十六日(長崎にて自死。混血であった故の晩年の不遇はウィキの「倉場富三郎」を是非見られたい):「グラバー邸」で知られるイギリス人貿易商トーマス・ブレーク・グラバー(Thomas Blake Glover 一八三八年~一九一一年)と淡路屋ツルの長男。正式な英名はTomisaburo Awajiya Glover(トミサブロー・アワジヤ・グラバー))が編纂した『「グラバー図譜」にはこの交雑個体が載っており、「ナガサキイシダイ」という名前で呼ばれたことがある。交雑個体(Oplegnathus fasciatus × Oplegnathus punctatus)はイシダイの横縞とイシガキダイの黒斑の両方が現れるが、鰭条数等は母親の影響が強いとされている』。二〇一〇年十一月十一日には『北海道寿都町の沖合で漁師に捕獲されて』おり、『人工交雑は近畿大学水産研究所で』一九七〇年に『成功した。この雑種は「イシガキイシダイ」、または交雑に成功した近大に因み「キンダイ」とも名付けられている』(個人的には後者の和名はなんだかなぁと思う)。『雑種は生殖機能を持たないため』、『子孫を残せず、学名もつけられていない』とある。]
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