けもの
森川義信は鮎川信夫に、加藤健という詩人の次の詩を示し、
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公園の熊の子は寂しい
二匹で相撲をとるのだ
そして
二匹ともころぶのだ
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この詩をはじめて読んだ時、涙が出そうになった。わかるわからないは問題ではない、「どれだけ感じているかだ」と言い、「それは人の眼には見えない」と。(鮎川信夫「失われた街」(一九八二年美成社刊)より要約)
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東京へ着いてからは、すぐ同じ下宿に入りました。其時分は一つ室によく二人も三人も机を並べて寐起したものです。Kと私も二人で同じ間(ま)にゐました。山で生捕られた動物が、檻の中で抱き合ひながら、外を睨(にら)めるやうなものでしたらう。二人は東京と東京の人を畏れました。それでゐて六疊の間の中(なか)では、天下を睥睨(へいげい)するやうな事を云つてゐたのです。(夏目漱石「心」より)
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私は何の分別もなくまた私の室に歸りました。さうして八疊の中をぐるぐる廻り始めました。私の頭は無意味でも當分さうして動いてゐろと私に命令するのです。私は何うかしなければならないと思ひました。同時にもう何うする事も出來ないのだと思ひました。座敷の中をぐるぐる廻らなければゐられなくなつたのです。檻の中へ入れられた熊の樣の態度で。私は時々奧へ行つて奥さんを起さうといふ氣になります。けれども女に此恐ろしい有樣を見せては惡いといふ心持がすぐ私を遮ります。奥さんは兎に角、御孃さんを驚ろかす事は、とても出來ないといふ強い意志が私を抑えつけます。私はまたぐるぐる廻り始めるのです。(夏目漱石「心」より)

