和漢三才圖會第四十二 原禽類 英雞 (ウンナンコジュケイ)
ゑいけい
英雞
インキイ
本綱英雞出澤州有石英處常食碎石英狀如雞而雉尾
體熱無毛腹下毛赤飛翔不遠腹中有石英肉甘温人食
之取石英之功也今人以石英不飼之取卵食終不及此
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ゑいけい
英雞
インキイ
「本綱」、英雞、澤州に出づ。石英、有る處〔にありて〕常に碎〔ける〕石英を食ふ。狀、雞〔(にはとり)〕のごとくして、雉の尾。體、熱〔く〕して、毛、無し。腹の下の毛、赤くして、飛〔び〕翔(かけ)ること、遠からず。腹の中に、石英、有り。肉、甘・温なり。人、之れを食ひて、石英の功を取るなり。今の人、石英を以つて之れを飼はず、卵を取りて食ふ。終〔(つひ)〕に此れに及ばず。
[やぶちゃん注:いろいろ調べてみるに、これは、
キジ目キジ科キジ亜科コジュケイ属ウンナンコジュケイ Bambusicola fytchii
に同定比定してよいように思われる。雲南省からミャンマー・タイ・ラオス周辺の標高の高い地域に棲息する。参照した個人ブログ「鳥好きFPのつれづれ日記2」の「【北Thai#29】ウンナンコジュケイ(Mountain
Bamboo Partridge)①」の写真がよい。この写真を見ると、「腹の下の毛、赤くして」というのを「頸部から胸の上部の毛」と読み変えると腑に落ち、全体に亙る非常にセンスのいい斑紋は、遠くから見ると、非常に滑らかに感じられ、しかもその色が灰色のグラデーションも持つため、或いは「毛、無し」という錯覚も生じておかしくないようにも思われる。「熱〔く〕して」という意味がよく判らぬが、或いはこの全体の色模様を以って「火」を連想したものかも知れない。しかも鉱石である石英の粉砕片粒を摂餌する(と信じられた)という点からは、私は陰陽五行説の相剋の「火剋金(かこくごん)」(「火」は「金」属を熔かす)のセオリーをも連想されたのである。
「澤州」現在の山西省晋城(しんじょう)市一帯。
「人、之れを食ひて、石英の功を取るなり」人はこの英雞を食用にすることで、その英雞が食した石英の持つ漢方としての効能をも採り入れることが出来るというわけである、の意。
「此れに及ばず」主食である石英を食べていたかつての英雞の本体を食べる効果には、到底及ばない。]
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